2022年8月19日金曜日

19- 国際勝共連合が「安倍三代」を応援した歴史的経緯(梶栗会長インタビュー)

 世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の関連団体である「国際勝共連合」、「世界平和連合」、「UPFジャパン」(天宙平和連合の日本支部)などの会長を歴任した梶栗正義氏に、ノンフィクションライターの窪田順生氏がインタビューしました。
 梶栗正義氏は、日本統一教会第12代会長梶栗玄太郎の子息です。
 このインタビュー記事は、12日付の前編
フロント団体と誤解されるのはしょうがないが…旧統一教会と同一視される国際勝共連合会長の言い分」 に続く後編です。

 記事中の「緑文字」部分はそこをクリックすると原記事にジャンプします。
           ~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「安倍元首相の功績を心から尊敬している」国際勝共連合が"安倍三代"を応援した歴史的経緯 (インタビュー後編)
               窪田 順生 プレジデントオンライン 2022/08/18
(インタビュー相手)
梶栗正義 1970年東京生まれ。韓国・鮮文大学卒業後、主に次世代の指導者育成に従事。
     W-CARP Japan(原理研究会-日本会長、世界平和青年連合日本会長、
     UPF-Japan(天宙平和連合-日本事務総長などを歴任

安倍晋三元首相と旧統一教会の蜜月――。日本中に衝撃を与えた殺害事件から1カ月を経た今も、このような言説がメディアをにぎわせている。報道によれば、教団とのただならない関係は、祖父・岸信介元首相から始まり、父・安倍晋太郎氏を経て、孫・安倍元首相に引き継がれたという。事実なら、戦後政治を牽引してきた名門一族の背後には常に、旧統一教会が暗躍していたということになる。この「安倍3代と旧統一教会ズブズブ疑惑」の鍵を握るのが、国際勝共連合、世界平和連合、UPF(UNIVERSAL PEACE FEDERATION=天宙平和連合)だ。これらの団体はすべて創設者が、旧統一教会の教祖・文鮮明氏ということから、「フロント組織」として政治家と教団をつなぐ役割を果たしてきた、と多くの有識者やメディアが指摘している。そこで、3団体の会長を務める梶栗正義氏に今回の騒動後、初となるロングインタビューに応じてもらった。
前編「フロント団体と誤解されるのはしょうがないが…」旧統一教会と同一視される国際勝共連合会長の言い分>では、主に自民党や教団との関係についての「言い分」を紹介したが、本稿では、いまださまざまな情報が飛び交っている「安倍3代との本当の関係」について迫った――。(後編)

「安倍元首相の政治姿勢を支持していたのは事実」
——さまざまなメディアや有識者が、安倍晋三元首相と旧統一教会が「ズブズブの関係」だったと指摘しています。そして、その蜜月関係を構築していたのが、国際勝共連合やUPFだった言われています。実際、安倍元首相への選挙支援を通じて、教団との友好関係を構築していた部分もあったのではないですか
【梶栗】まず、前回もご説明しましたが、国際勝共連合やUPFは現実社会の問題を解決するために創設された独立した団体であって、教団の布教活動とはまったく関係ありません。
国際勝共連合として、安倍元首相の政治姿勢や考え方を支持させていただいていたのは事実ですが、それはマスコミで言われているような「ズブズブの関係」などではありません。

「政治的な信念が近い政治家が安倍3代だった」
——そうおっしゃいますが世間では、やはり安倍元首相のような有力な政治家を応援することで、その見返りとして、教団側に何かしらの便宜を図ってもらうということもあったのではないかと考えます。
【梶栗】そのように誤解をされてしまうのは、私たちの団体の活動がまだ正しく理解されていないということですので、大変残念です。
ただ、ここで私がはっきりと申し上げたいのは、安倍晋三元首相というのは、戦後の日本において傑出した政治指導者であり、私個人としても、その功績は高く評価しており、心から尊敬しているということです。
実際、私もよく海外でいろんな国の人々とお話をしますが、日本の首相の顔と名前を認識してもらうことはなかなか難しいという現実があります。しかし、安倍元首相はその顔と名前が知れ渡っていました。また外交面においても、国際社会における日本の役割を国内外に明確に示した、という点でも大変な功績のある方です。
こういった日本のために尽力をされた政治家を尊敬して、その政治活動を応援するというのは、私たちのような政治団体でなくとも、国民にとって自然に湧き上がってくる感情ではないでしょうか。

——しかし、会長ご自身が「安倍3代にわたる関係」をお認めになっているという報道があります。文春オンラインの<統一教会は安倍晋三元首相の「雨天の友」だったでは、会長が教団の日曜礼拝で、岸信介元首相と文鮮明、安倍晋太郎と梶栗玄太郎(正義会長の父)、そして会長と安倍元首相の写真を見せて、「これは3代のお付き合い」だと説明したと報じています。教団内では、「安倍3代との蜜月」は常識になっているのではないですか?
【梶栗】日曜礼拝というのは信徒の皆さんに向けたものなので、どうしても信徒の方たちを鼓舞するようなお話の内容になっていますし、私の主観にかなり偏ったものです。その一部分だけを切り取って、すべてを論じられてしまうというのは正直、いかがなものかと思います。
私たちがいわゆる「安倍3代」の政治リーダーの政治活動を応援させていただいたのは事実です。しかし、それは岸家だからとか安倍家だからという理由ではまったくありません。前にお話をさせていいただように、国際勝共連合は創設時から党は関係なく、「反共」の意識の強い政治家を応援してきたという事実があります。岸信介先生、安倍晋太郎先生、安倍晋三元首相というのはいずれも反共の意識の強い政治リーダーで、私たちの活動にも理解を示してくださいました。
つまり、政治的な信念が近い政治家を応援し続けてきた私たちの活動を振り返ってみると、結果として「安倍3代」になっているというだけの話なのです。

「中曽根元首相やレーガン米大統領も応援」
——それはさすがに苦しい言い訳のような気がします。岸信介、安倍晋太郎・晋三という3代と関係が続いているのは「たまたま」だとおっしゃるわけですか?
【梶栗】ええ、しかもそこには「連続性」もありません。まず、岸信介先生に関しては前にお話をしたように、「国際勝共運動」とそれを実践する国際勝共連合のよき理解者でした。
しかし、安倍晋太郎先生と私たちの関係は「岸先生の娘婿だから」ではありません。安倍晋太郎先生が率いていた清和会の前任の会長である福田赳夫先生は非常にしっかりとした「反共」の考えを持っていて、やはり国際勝共連合のよき理解者でした。ですから、われわれも福田先生の政治活動を応援していて、その延長線上に安倍晋太郎先生がいらっしゃったわけです。
そしてわれわれが安倍晋三元首相をお慕いしていたのは、「安倍晋太郎先生の御子息だから」ではなく、先ほども申しげたように、傑出した政治指導者であり、国際社会での日本の役割を示してくれていたからです。
また、さらに言わせていただくと私たちが応援をしていたのは「安倍3代」だけではありません。例えば、中曽根康弘先生も反共の考えが強かった。また、首相になられて最初の外遊先が韓国ということもあって朝鮮半島の平和実現にも強い関心があり、アメリカ、日本、韓国が連携することで共産主義の拡張を防ぐという意識をお持ちで、私たちの考えと非常に近いものがありましたので政治活動を応援させていただきました。
また、中曽根先生と信頼関係を築いたロナルド・レーガン米大統領も反共の意識が強いということで、アメリカで文総裁が政治活動を応援していたという経緯があります。
このように、私たちとしては一貫して、「反共の意識の強い政治リーダー」を応援するという姿勢を長く貫いてきて、考えの近い政治家の方の活動を応援してきました。それがなぜか今は「安倍3代」にだけフォーカスが当てられている。どういう政治的意図があるのかわかりませんが、私たちとしては不思議な気がしています。

UPFは「政治と宗教の指導者が力を合わせる組織」
——ただ、安倍元首相は、他の政治家が「旧統一教会のプロパガンダになる」と参加を断った、UPFのイベントにビデオメッセージを送ったという事実があります。これを知った山上容疑者が犯行を決意したといわれているように、多くの人はこれこそが「安倍3代と教団の蜜月関係の証拠」だと感じています。これについてはどう考えますか?
【梶栗】実はそこが、私たちが安倍元首相の名誉のためにも声を大にして反論したいところです。マスコミの報道では、「安倍元首相が旧統一教会系団体のイベントにビデオメッセージを送って、教団トップの韓鶴子氏を持ち上げた」という話になっていますが、事実は全く違います。
安倍元首相は政治家としてUPFの活動を評価して敬意を示してくれただけであって、旧統一教会という教団の活動を応援する意図はまったくありません。
それをわかっていただくためには、そもそもUPFという団体と、安倍元首相がビデオメッセージを送ってくださったイベントについて正しく理解をしていただきたいと思います。
そもそも文鮮明総裁がなぜUPFを立ち上げたのかというと、教団の布教などは全く関係なく「国連の刷新」のためでした。
今のウクライナの現状を見てもわかるように、国連には国家間の紛争解決をすることがなかなか難しいところがあります。これはやはり大きいのが、ロシアや中国という共産主義・専制主義の国が、国連の安全保障理事会で拒否権を持っていることです。文総裁はこれを「国連の生まれながらの限界」とかなり以前から問題視していました。
そこで訴えられたのが、それぞれの国の利益を超越したもっと高い見地から、人類全体の利益、つまりは「人類益」を考える組織の必要性です。
各国の政治指導者が国連に集っても結局、自国の利益を代弁するだけで世界平和は実現できません。そこで文総裁は、国家にとらわれることなく人類社会全体の平和を目指すためにどうすべきかを論じるために、世界の精神世界の指導者たちが集うべきだと考えました。それが国連における上院のような役割を担って、現実世界の問題を解決する政治指導者と、精神世界の問題を解決する宗教指導者が力を合わせれば、世界平和を実現できるというわけです。
そのような理念の下で、1999年に「世界平和超宗教超国家連合(IIFWP)」が創設され、2004年に国連経済社会理事会の特殊協議資格のステータスを持つNGOとして認定されました。それが2005年に「UPF」となりました。現在、UPFは国連NGOの中で最もステータスの高い、総合協議資格を与えられています。

「国際社会では教団と同一視されることはない」
——いくら国連に認められているとはいえ、教団との活動と関係がないという根拠にはなりません。宗教指導者の影響力を強めるために設立した団体ならば、やはり「旧統一教会のフロント組織」だと指摘されてもしょうがない部分があるのではないでしょうか?
【梶栗】確かに、日本国内ではそのような見方をされる人もいらっしゃるでしょうが、国際社会では教団の活動と同一視されることはありません。各国の政治リーダーも、UPFの活動を純粋に評価したうえで、参加・賛同をいただいております。
例えば、安倍元首相がビデオメッセージを送ってくださったイベントについて、一部のマスコミでは教団を称賛するようなイベントだと誤解を与えるような報道をしていますが、あれは「シンクタンク2022」というUPF主催のオンライン国際会議です。朝鮮半島の平和がどうすれば実現できるのかというテーマで1年間にわたって世界で議論を続けて、各国の政治リーダーや有識者を招いた国際会議の一環として行われたのです。
例えば今年2月に行われた会合では、カンボジアのフン・セン首相と第8代国連事務総長の潘基文氏が共同で組織委員長を務めてくださって、お二人の連名で、世界中のVIPにこのイベントへの参加が呼びかけられました。
このイベントはオンラインとオフラインを合わせて行われましたが、カナダの28代首相だったスティーブン・ジョセフ・ハーパー氏、アメリカの副大統領だったマイク・ペンス氏、国務長官だったマイク・ポンペオ氏、国防長官だったマーク・エスパー氏、さらにはポルトガル首相、欧州委員会委員長を歴任した、ジョゼ・マヌエル・ドゥラン・バローゾ氏らが実際に韓国を訪問して行事に参加してくれました。
これらの世界的な政治リーダーたちがUPFのイベントに参加しても、「旧統一教会とズブズブの関係」などと批判されることはありません。みなご自身の政治信条に基づいて、UPFの取り組みを評価、賛同をして参加をしてくれただけなのです。

安倍氏の出演理由は「国際貢献への評価」
——これら海外の政治家というのは、UPFの活動を純粋に評価して参加しただけであって、「世界平和統一家庭連合」という宗教団体と親密な関係はないのですか
【梶栗】そうです。「シンクタンク2022」でこれまで2年間にわたっておこなわれた、朝鮮半島の平和統一をめぐる議論には今、ご紹介したようにトランプ政権の閣僚を経験した政治家が複数人参加していただいております。
その流れで、歴史的な米朝会談を実現させたトランプ元大統領もビデオメッセージで基調講演をいただくことになりました。そこで、トランプ元大統領と盟友関係にあり、同じく朝鮮半島の平和実現に長く寄与してきた安倍元首相にもご参加いただけないかということで、ニューヨークに本部がある「UPFインターナショナル」と「ワシントンタイムズ」が連名で、安倍元首相側に打診をしたところ、「トランプ大統領が参加するのなら参加しよう」とお答えになって参加を快諾してくださったのです。
つまり、安倍元首相がUPFの「シンクタンク2022」にビデオメッセージを送ったのは、トランプ元大統領をはじめ、世界の多くの政治リーダーたちが評価をしてくださった、UPFの朝鮮半島の平和実現への取り組みを評価したからなのです。
そのメッセージの中で、韓鶴子総裁に敬意を示しているのも、教団トップだからではなく、UPFの総裁として、朝鮮半島の平和実現をはじめとした国際貢献に長年尽力をしてきたことについての敬意ですので、これをもってして「安倍元首相と教団はズブズブの関係だ」などというのはまったく事実に基づかない、言いがかり的なものではないかと私としては感じています。

——しかし、会長がいくらそのように主張をしても世間はなかなか納得しません。マスコミも旧統一教会はビジネス目的で多くの別団体を立ち上げていると指摘して、UPFや国際勝共連合についても、政治家を陰で操るための団体だと紹介しています。海外では多くの政治家が評価をするUPFなどが、なぜ日本ではそのような悪いイメージが定着してしまったのでしょうか。会長のお考えをお聞かせください。
【梶栗】まず、私たち国際勝共連合の運動、目指していることが実現してしまったら困る人たちというのは確実に存在していて、彼らからすれば、私たちの運動が広まらないよう、事実ではないことを触れ回って、「教団のフロント組織」とレッテル貼りをする「動機」はあると思います。
例えば、私たちは半世紀も前から、日本は「スパイ天国」になっているということを指摘して、他国の工作活動を罰するスパイ防止法の制定を訴えてきました。当然、「そんな法律はとんでもない」という立場の人や、他国のスパイ行為を助長しているような勢力は過去にも、私たちと反共的な信条をもつ政治家を離間させるため、いろいろな批判をしてきたということがあります。
私たちの団体や活動について、事実ではないことを触れ回っている人たちの中には、私たちの「勝共」という、共産主義を脅威として認識して、それを克服しようという運動ができないような環境をつくりたいという勢力もいるのではないか、と考えています。

「国民にご納得していただけるまで説明していく」
——8月10日に世界平和統一家庭連合が二度目の記者会見を催して、一部のメディア報道をヘイトスピーチだと批判して、信徒が脅迫などを受けていると訴えました。改造内閣でも、教団と関係のある人は閣僚から外されました。マスコミの中にも、「政治と旧統一教会との関係を完全に断ち切れ」という主張が多く聞かれています。このような“逆風”の中で、国際勝共連合の活動は今後どのようなものになっていきますか
【梶栗】基本的には、この国を良くしたいという思いで運動をしていますので、国民の皆さんたちにも理解をしていただきたいという気持ちはあります。ですから、反社会的であるかのようなレッテルを貼られて、バッシングに晒されている今の状況は非常に残念です。
私たちの考えにご賛同をしていただいた政治家の皆さんが胸を張って政治活動ができるように、この国を守るためには必要な運動だと引き続きご説明してまいります。もし国民の皆さんが十分に納得できないというのなら、ご納得いただけるまで応対をしていかなければいけない、とも思っています。
繰り返しになりますが、政治団体である国際勝共連合、世界平和連合、UPFという国連NGOは、創設者が教団と同じなだけで、教団の布教活動とはまったく関係のない独立した組織です。「教団の関連団体」として括られるのには違和感があります。
政治活動に関しても民主主義に基づいて、民意を政界に届けるということをしているのであって、何もやましいことはしていません。それをぜひご理解いただけたらと思っています。
教団も今、一部マスコミから反社会的な団体のように報じられており、それに関しては教団側も真摯(しんし)に対応していくことでしょう。私たちも布教活動と同一視され、政治家との関係で教団の活動を後押ししているかのような誤解を受けていますので、そこは違うということはしっかりと説明させていただきたい。
私たちの団体が何をやっているのか、そしてその価値が少しでもご理解いただけるように、引き続き努力をしていきたいと思います。

 窪田 順生(くぼた・まさき) ノンフィクションライター 1974年生。テレビ情報番組制作、週刊誌記者、新聞記者等を経て現職。報道対策アドバイザーとしても活動。数多くの広報コンサルティングや取材対応トレーニングを行っている。著書に『スピンドクター“モミ消しのプロ”が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)、『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)など