2022年8月16日火曜日

統一協会 批判受けながら存続できたのは政治的な保護があったから

 しんぶん赤旗が、統一協会の問題点はどこにあるのか、宗教学者で日本宗教学会元会長の島進さんに聞きました

 統一協会への批判を「信教の自由を侵す」「宗教弾圧だ」と逆に批判することに対しては、宗教か否かにかかわりなく、市民の安全な生活を脅かす場合には取り締まりを受けることになるとして、本人の自由な意思で信仰に入ったとは言えないような欺きや脅し、策略を凝らして、いつの間にか誘う側に従わせていく、自由を奪う、そういう要素が強いのが統一協会でいわゆる「カルド」に当てはまると述べています
 統一協会がこれまで摘発を免れて存続できたのは政治的な力が働いたことが考えられるとして、日本での献金によって財政的基盤を作り、それを韓国とアメリカでの地位を高めるのに使いアメリカの福音派、宗教右派や共和党支持勢力の一翼となることで アメリカでの基盤を築いたとしています。
 そして今後被害を生まないためには、まず権力を持つ政治家が癒着を断つことで、これが一番重要メディア等がさまざまな形で情報提供して注意喚起したり、被害に遭ったときに相談できる窓口を行政や大学に設置し支援できる体制をつくることも必要だと述べています
 統一協会が宗教を隠れ蓑にしている実態を明快に把握することが出来ます。
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2022焦点・論点 統一協
その問題点は 社会の批判受けながら存続 政治的|な保護があったから
        宗教学者・日本宗教学会元会長 進さん
                       しんぶん赤旗 2022年8月14日
 安倍晋三元首相の銃撃事件を機に、統一協会(世界平和統一家庭連合)と政治家との癒着の深さや被害の大きさが改めて浮き彫りになっています。統一協会の問題点はどこにあるのか、宗教学者で日本宗教学会元会長の島進さんに聞きました。(西沢亨子)
  しまぞの・すすむ 1948年生まれ。東京大学教授、上智大学教授などを経て、
   現在、NPO法人東京自由大学学長。『新宗教を問う 近代日本人と救いの信仰』
   『ポストモダンの新宗教-現代日本の精神状況の底流』『国家神道と日本人』ほか。

 ― 統一協会への批判に対し、「信教の自由を侵す」「宗教弾圧だ」という声があります。統一協会は宗教団体といえるのでしょうか。
 科学や世間的常識では説明できないことを信じる、それが今生きていくうえで大事な何かにつながっていく、そういう究極の真理があると信じるのが宗教です。その意味では統一協会も新興宗教の一つといえるでしょう。
 しかし、宗教団体であっても、人々にを及ぼす団体が法に問われて取り締まりを受けるのは当然です。営利企業でも、マルチ商法や言葉巧みに高額商品を売りつけるやり方がある。宗教か否かにかかわりなく、市民の安全な生活を脅かす場合には取り締まりを受けます。取り締まりの結果つぶれた団体は、オウム真理教だけでなくいくつもあります。
 統一協会はそういう団体であるにもかかわらず、摘発を免れ、勢力を伸ばし、きわめて多くの被害者を出してきた。その点で特異なのです。
 本人の自由な意思で信仰に入ったとは言えないような欺きや脅し、策略を凝らして、いつの間にか誘う側に従わせていく、自由を奪う、そういう要素が強いのが統一協会です。
 早い段階から、フロント組織、つまり宗教団体が宗教団でない組織を作って独立し別の団体であるかのように装い、勢力拡大に利用してきました正体隠しを徹底的にやって、人を欺くことをためわないのです
 攻撃的な布教をし、一般社会から切り離された信徒集団をつくり、そこに無理やり信徒を投げ込んで、過酷な修行というより超過重労働というべき営業活動をさせる。また、過度の献金で自己破産する人が大量に出る、そのような集団がメディアでは「カルト」と呼ばれています。「カルト」の厳密な定義は困難ですが、そう呼ぶとわかりやすいので使われていて、統一協命は、そうしたいわゆる「カルド」に当てはまるといえるでしょう。

  統一協会は、今の名称になる前、世界基醤教統一神霊協会と、キリスト教の団体であるかのように名乗っていました。でも祖先の因縁などといって印鑑や多宝塔を売りつけるのはキリスト教と無関係ではないでしようか。
 戦前の朝鮮では、キリスト教が土着化し地域性を持った異端的な団体が出てきました。それらは日本に抵抗する宗教と見なされ、民衆に支持されることもありました。
 統一協会の創始者である文鮮明が初期にどんな団体とかかわって自分の教団を立ち上げたかをみると、それらの団体とのかかわりがあり、その影響が残っいます。しかしそこから次第にキリスト教の枠を超えたものになっていった。
 キリスト教では、イエスこそが人類の罪を背負ってくれた、贖罪のイエスという教義が根本にあります。ところが統一協会は、イエスは人を救えなかったというが前提で、文鮮明の指示に従った正しい結婚=祝福によって罪が清められ救われるというのが教義なので、キリスト教とはいえないでしょう。ただ彼らは世界基督教統一神霊協会と名乗って、キリスト教と称していたわけです。

 ー 統一協会が摘発を免れて存続できたのはなぜですか。
 政治的な力が働いたことが考えられます。政治的な保護を受けたために、人を欺き、法外な献金を求めて従わせることを続けられた可能性が高い。他の団体なら、法に問われて社会的批判を受け、そういうことはできなくなる。統一協会が社会的批判を受けながらも継続できたのは政治的な力を期待できたからでしょう
 早い時期から、元首相の岸信介、右翼の有力者である笹良一といった政治的な支持者がいて、その後も与党である自民党の有力者と結びついてきた。韓国では朴正煕政権という軍事独裁政権、KCIA(韓国の諜報機関)とつながっていたとされます。反共で一致したわけです。それが形になったのが国際勝共連合です。
 統一協会は韓国が本家ですがメンバーの数は日本が多い。日本で財政的基盤を作り、それを韓国とアメリカでの地位を高めるのに使いました。アメリカのキリスト教右派の福音派、進化論に異を唱えるような宗教右派や共和党支持勢力の一翼となることで アメリカでの基盤を築きました。だからトランプ元大統領らと親しいのです。

 - いわゆる「カルト」にはまる背景に、個人の社会での孤立が指摘されています。
 孤立しがちな人に働きかけて社会と切り離された集団に囲い込み、内側だけで通用することをたたき込むタイプの宗教団体が1970年代以降発展するようになりました。
 本来、社会から孤立すれば発展できないわけですが、むしろ孤立した集団をつくることで外と違う強い信念を共有して連帯し、外に向かって攻撃的に働きかけて信徒を増やすわけです。
 背景には地縁血縁が薄れて人間関係のきずなが限定的になり、孤立感に苦しむ人が多い、資本主義的競争を社会全面に及ぼす新自由主義が広がる中で、いざという時に頼れる人がいないということがありますね。

 ー 被害を生まないために今後、何が必要でしょうか。
 まず、権力を持つ政治家が癒着を断つこと。これが一番重要です。また、メディア等がさまざまな形で情報提供して注意喚起したり、被害に遭ったときに相談できる窓口を行政や大学に設置し支援できる体制をつくることも必要でしょう。