2022年8月27日土曜日

27- 岸田首相の「聞く力」は国民に向いているか 世論調査では「説明不足」89.5%

 外交評論家の孫崎享氏が日刊ゲンダイの「日本外交と政治の正体」のコーナーに、「岸田首相の『聞く力』は国民に向いているか 世論調査では『説明不足』89.5%」とする記事を出しました。

 岸田氏は「聞く力がある」ことを標榜して登場しましたが、それも含めていまや何もかも評判はガタ落ちです。岸田政権でも、かつての安倍首相・菅官房長官コンビのように嘘や詭弁が出始めたとまで言われています。
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日本外交と政治の正体 孫崎享
岸田首相の「聞く力」は国民に向いているか 世論調査では「説明不足」89.5%
                          日刊ゲンダイ 2022/08/26
 昨年10月4日に岸田内閣が発足した際、多くの国民はこれを好意的に迎えた。
 岸田首相は自民党総裁選で、「私は人の話を聞くことが信頼の原点だと思っている。『聞く力』は誰よりも優れている」と強調。国民はこの言葉を信頼して支持した。
 しかし、今、「聞く力」が国民の側に向かっているのかが問われている。特に安倍元首相の国葬問題と、旧統一教会(現・世界平和統一家庭連合)と自民党の関係である。
 共同通信が実施した世論調査によると、安倍元首相の国葬について、「納得できる」は42.5%、「納得できない」が56.0%だった。旧統一教会と自民党の国会議員との関係については、「十分に説明している」が6.9%だったのに対し、「説明が不足している」は89.5%であった
 安倍元首相の国葬については各国の首脳クラスが出席する、などと報じられているが、名前が出ている米国のトランプ、英国のジョンソン、ドイツのメルケルの3氏はそれぞれすでに現役を引退している。小渕元首相の合同葬儀の時には米国のクリントン大統領、韓国の金大中大統領をはじめ、フィリピンやインドネシアの両大統領、タイ、カンボジア、マレーシア、ラオス、豪州などの首相が出席した。この時は国葬ではない。今回は米国からは副大統領が出席するというが、前回と比較すれば明確に格落ちだろう。
 旧統一教会との関係でも、自民党の茂木幹事長は「旧統一教会と党は組織的な関係はない」と述べているが、この発言に納得する国民はほとんどいない。同党の伊達元参院議長は過去の国政選挙で、安倍首相(当時)に旧統一教会の支援を依頼したことを明かしたことをこう振り返っていた。
「安倍さんに『統一教会に頼んでちょっと(票が)足りないんだとうちが』と。そしたら(安倍氏が)『わかりました、ちょっと頼んでアレ(支援)しましょう』と述べた」
 自民党総裁が票の割り振りに関与をしていながら、「党として関係ない」はない。
 それなのに政府は驚きの動きに出た。15日に閣議決定した政府答弁書で、旧統一教会と閣僚ら政務三役の関係について「個人の政治活動に関するもので、調査を行う必要はない」としたのだ。
 岸田政権でも、かつての安倍首相・菅官房長官コンビのように、嘘や詭弁が出始めた。
 岸田首相殿。あなたの「聞く力」は国民の声に向いているのでしょうか。

孫崎享 外交評論家
1943年、旧満州生まれ。東大法学部在学中に外務公務員上級職甲種試験(外交官採用試験)に合格。66年外務省入省。英国や米国、ソ連、イラク勤務などを経て、国際情報局長、駐イラン大使、防衛大教授を歴任。93年、「日本外交 現場からの証言――握手と微笑とイエスでいいか」で山本七平賞を受賞。「日米同盟の正体」「戦後史の正体」「小説外務省―尖閣問題の正体」など著書多数。