2022年8月30日火曜日

30- 森雅子首相補佐官(元法相)「統一教会」説明にも“重大な疑問”

 森雅子議員は第2次安倍政権時代に法相を務め様々な失態を演じました。特に安倍氏が黒川東京高検検事長時代に検事総長に就けるべく任期の延長を画策したときに、それに協力すべく法相として荒唐無稽な答弁を重ねました(黒川氏は賭けマージャンが発覚し自ら検事長を退任したため安倍氏の意図は潰えました)。
 森氏は現在首相補佐官に就いていますが、19年7月の参院選挙の頃に、いわき市の旧統一教会施設の建物内に氏のポスターが貼られていたことが確認されSNS上で騒動になっていまし8月24日発売の週刊新潮で18年11月に郡山市で開催された「世界平和統一家庭連合」(旧統一教会)主催のイベント「東日本大震災 福島復興三千名祈願祭」に登壇して講演をしていたことが報じられ「統一教会」と深い関係を持っていた疑惑が一層深まりました。
 郷原信郎弁護士が「郷原信郎が斬る」に、「森雅子首相補佐官(元法相)、『統一教会』説明にも“重大な疑問”、自民党調査にどう回答するのか?」とする記事を出しました。 
 この際汚名を挽回できるのかですが、その可能性は殆どないように思われます。
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森雅子首相補佐官(元法相)、「統一教会」説明にも“重大な疑問”、自民党調査にどう回答するのか? 
                      弁護士 郷原信郎 2022年8月29日
法相在任時「答弁迷走」の森雅子氏、「統一教会」説明にも“重大な疑問”
河井夫妻事件、ゴーン氏国外逃亡当時の法相で、現在も首相補佐官の職にある森雅子氏、「統一教会」との関わりについての説明はあまりに不合理。自民党の調査にどのような回答をするのか。
森雅子首相補佐官(元法務大臣)について、グーグルストリートビューで、2019年7月の参院選挙の頃に、いわき市の旧統一教会施設の建物内に同氏のポスターが貼られていたことが確認されSNS上で騒動になっていたが、8月24日発売の週刊新潮では、2018年11月11日に郡山市で開催された「世界平和統一家庭連合」(旧統一教会)主催のイベント「東日本大震災 福島復興三千名祈願祭」に登壇して講演をしていたことが報じられ、「統一教会」と深い関係を持っていた疑惑が一層深まっている。

森氏は、河井克行氏が妻案里氏の公選法違反疑惑の責任を取って辞任したことに伴い、後任として法務大臣に就任し、黒川弘務東京高検検事長の定年延長問題で、安倍政権への批判が高まった際にも法務大臣として国会答弁を行った。森氏は定年延長の決定と解釈変更のための法務省内の決裁は口頭で行ったと説明し、
「口頭決裁もあれば文書決裁もある。どちらも正式だ」
と強弁した。定年延長の理由について、政府が「社会情勢の変化」などと説明したことについて国会で質問され、
「東日本大震災のとき、検察官は、福島県いわき市から、市民が避難していない中で、最初に逃げた」
などと答弁し、その件で、当時の安倍晋三首相から厳重注意を受けた。
また、森氏は、弁護士でもあるが、カルロス・ゴーン氏が保釈中にレバノンに逃亡した際、記者会見で、
「潔白というのならば、司法の場で正々堂々と無罪を証明すべき」
などと「検察官の立証責任」という刑事裁判の大原則を無視するかのような発言をし、その会見直後のツイートで
「ゴーン被告人は自身が潔白だというのであれば司法の場で正々堂々と無罪を証明すべきです」
などと書いていたのを、ゴーン氏側から発言の不当性を指摘されると、こっそりと「証明」を「主張」に訂正したツイートを出し直した。

国外逃亡したゴーン氏への「腹いせ」に、「潔白だというなら無罪を証明しろ」と言ったことは明らかだったが、さすがに、それは弁護士でもある法務大臣の発言として、国際的な笑いものになると思ったようで、ツイートを訂正して出し直し、次の会見の際は、「言い間違い」だと強弁した。

このように、法務大臣在任中、その説明や答弁について度重なる批判を受けた森氏だったが、「統一教会」との関係についても、その説明の不合理性は際立っている。
森氏は、旧統一教会施設の建物内に同氏のポスターが貼られていた件について、
「統一教会の関係者と認識せずにポスターをお渡ししてしまった」
とSNSで弁明し、旧統一教会との関係についての朝日新聞の質問には、
「知らない。(誰かが)事務所に置いてあるポスターを持って行ったか、旧統一教会と知らずにポスターを渡したのだと思う」
などと回答していた。
この時点では、ポスターが「家庭連合」の施設に貼られていたことの認識自体を否定し、「持っていかれた。」「素性がわからない相手に渡した」などと、あたかも「盗まれた」か「騙し取られた」かのように説明していました。
ところが、今回、2018年11月11日、その「家庭連合」のイベントで森氏が講演をしていたことが写真付きで報じられると、森氏の事務所は、イベントに参加して演説を行ったことを認めたうえで、
「(家庭連合が)旧統一教会と同じ団体だと気がつかなかった。認識が甘かったと反省している」
とコメントし、2018年11月の時点で、講演の主催者の「家庭連合」は「統一教会」とは関係のない、全く問題のない団体だと認識していた、だからイベントに参加して講演をしたと弁明している。

しかし、その弁明自体が、全く信用できないものだ。
2018年11月のイベントでは、上記新潮記事に掲載されたポスターによれば、旧統一教会の当時の会長の徳野英治氏が「特別講演」を行い、「祈願書・献花奉納」と称する儀式まで行われている。主催者は、「世界平和統一家庭連合福島教区支部」とされている。「教区支部」という言い方からも、単なる「家庭」に関連する団体ではなく、「統一」という言葉を含む名称の「宗教団体」であることは一見して明らかだ。
また、もし、「家庭連合」は「統一教会」とは関係のない、全く問題のない団体だと認識していたというのであれば、いわき市内の「家庭連合」の施設にポスターが貼ってあったことがストリートビューで確認された2019年7月の時点では、「家庭連合」について、どのように認識していたのだろうか。
その時点でも、「家庭連合」は旧統一教会と同じ団体だと知らず、何も問題のない組織だと認識していたということであれば、2018年11月のイベントで講演まで行っているのだから、そのような団体が参議院選挙で応援してくれるのを断る理由はない。いわき市内の施設に森氏のポスターを貼ってくれるというのであれば、喜んで貼ってもらっていたはずだ。朝日の質問に対しても、
「『家庭連合』には参院選で応援してもらったが、それが統一教会と同じ団体だとは知らなかった」
という回答になるはずだ。
一方で、「家庭連合」の側では、「家庭連合」の全国団体の徳野英治会長とともに講演までしてくれた国会議員が参議院選挙に臨んでいるのだから、積極的に選挙応援をしたはずだ。施設内に森氏のポスターを貼っていたのも、その選挙応援の一環として当然の対応ということになる。そのような「家庭連合」の関係者が、森氏の事務所から、森氏の選挙用のポスターを、森氏側に了解を得ることなく勝手に持ち出して、教団の施設内に貼るなどということは考えられない

森氏が、2018年11月のイベントの際は知らなかったが、2019年7月の時点では、「家庭連合」が、反社会的活動を繰り返してきた旧統一教会と同じ団体だと知っていたとすると、前年の11月にそういう団体のイベントで講演していた事実があるわけだから、そのような団体から参院選で応援してもらうなどということは、あってはならないことのはずだ。何らかの対応をしなければならないのは当然だ。いわき市は、森氏の出生地で、同市内には地元事務所があるわけだから、その市内の「家庭連合」の施設内にストリートビューでもわかるような形で森氏のポスターが貼ってあるのを放置するなどということは考えられない。
参院選挙期間中に「家庭連合」のいわき市内の施設にポスターが貼ってあった事実があっても、前年秋にイベントで講演した事実があっても、「統一教会との関わり」を全面的に否定する森氏の説明は、完全に破綻していると言わざるを得ない。
それに加えて、上記新潮記事では、当時の森氏の秘書が
「19年の参院選が公示される少し前、いわき市の中心部にある統一教会の施設に、森さんと共に足を運んだことがあります」
と証言していることが書かれている。
これが事実だとすると、「統一教会」の施設にポスターが貼ってあったことについての森氏の説明は、意図的な虚言そのものだということになる。

森氏は、法務大臣在任中の国会答弁や記者会見に関して厳しい批判を受けた。
伝統と形式を重んじる法務省において、大臣の決裁を口頭で行ったなどという、あり得ない弁明を繰り返し、答弁に窮すると、「震災の際に検察官が逃げた」などという無関係の話を持ち出して開き直る。そして、記者会見で、弁護士でもある法務大臣としてあり得ない「被告人は司法の場で無罪を証明せよ」などという発言をした時も、ツイートをこっそり出し直すなどという姑息な手段を用いる。
森氏の態度は、「統一教会」との関係に関する説明でも、基本的に変わるところはなく、自分の非を一切認めず、姑息な手段まで弄して強弁を続けるという不誠実極まりない姿勢をとり続けている。
「統一教会問題」で批判に晒されている自民党議員に共通しているのは、マスコミ等で取り上げられる度に、「その場凌ぎ」の最低限の説明に終始する姿勢だ。「統一教会」との関係が深ければ深いほど、説明内容は不自然なものとなり、その後、新たな事実が判明すると、前の説明を覆して、新たな「その場凌ぎ」の不合理な説明を繰り返す

現在も首相補佐官の職にある森氏は、河井克行氏の辞職を受けて法務大臣に就任し、河井氏が多額現金買収事件で検察の強制捜査を受け、逮捕・起訴された間も、法務大臣として、検察に対する指揮権をも行使し得る重責を担ってきた元重要閣僚だ。その森氏の、「統一教会」と認識して関わったことは全くないかのような説明はあまりに不合理であり、逆に言えば、参議院選挙で応援を受けるような親密な関係があるからこそ、関わりを全否定しようと虚偽説明を繰り返しているのではないか、と考えざるをえない。
8月26日、自民党は、議員本人に事実確認と説明を委ねてきたそれまでの対応を一転させ、全ての所属国会議員を対象に、旧統一教会とその関連団体との接点の有無を確認する調査を開始した。
茂木敏充幹事長名で、各議員事務所に調査書を配布し、(1)教団側の会合への出席(2)祝電の送付(3)会費などの支出(4)寄付やパーティー収入(5)選挙支援――の有無などについて回答を求めるとのことだ。

森雅子首相補佐官が、この調査に対してどのような回答をするのか、それまでの説明に事実に反する点があったとすると、それについてどう弁明するのか。党の調査に対する自民党議員の姿勢を象徴するものとして注目したい。