2022年8月7日日曜日

被爆77年「広島原爆の日」・ 広島平和宣言

 広島に原爆が投下されて、8月6日で77年となりました。

 広島市の平和公園で行われた平和記念式典には、被爆者や遺族の代表のほか、99の国の代表が参列しました。ことしは、3年ぶりに一般の参列者席が設けられ、新型コロナウイルスの影響で規模を大幅に縮小した去年とおととしの3倍以上となる2854人が参列しました。
 NHKの記事と広島市ホームページ掲載の広島平和宣言を紹介します。
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被爆77年「広島原爆の日」核兵器のない世界の実現へ祈り続く
                     NHK NEWS WEB 2022年8月6日
広島に原爆が投下されて、8月6日で77年となりました。
ロシアの軍事侵攻により、核の脅威に対する危機感が広がるなか、被爆地・広島では、犠牲者を追悼し、核兵器のない世界の実現を国内外に訴える1日が続いています。
広島市の平和公園で行われた平和記念式典には、被爆者や遺族の代表をはじめ、岸田総理大臣のほか、99の国の代表が参列しました。
ことしは、3年ぶりに一般の参列者席が設けられ、新型コロナウイルスの影響で規模を大幅に縮小した去年とおととしの3倍以上となる2854人が参列しました。
式典では、この1年に亡くなった人や死亡が確認された人、合わせて4978人の名前が書き加えられた33万3907人の原爆死没者名簿が原爆慰霊碑に納められました。
そして、原爆が投下された午前8時15分に参列者全員で黙とうをささげました。
ロシアのウクライナへの軍事侵攻と核による威嚇を受けて、世界各地では軍備を増強する動きが広がっています。

広島 松井市長 “為政者は核兵器使用の結末を直視すべき” 
広島市の松井市長は、平和宣言で「世界中で、核兵器による抑止力なくして平和は維持できないという考えが勢いを増している」と指摘しました。
そして、核保有国の為政者に対し、被爆地を訪れ、核兵器を使用した際の結末を直視すべきだとして、「国民の生命と財産を守るためには、核兵器を無くすこと以外に根本的な解決策は見いだせないことを確信していただきたい」と述べました。

岸田首相「核兵器のない世界への道のり歩んでいく」 
また、岸田総理大臣は、「いかに細く、険しく、難しかろうとも『核兵器のない世界』への道のりを歩んでいく。非核三原則を堅持しつつ、『厳しい安全保障環境』という『現実』を『核兵器のない世界』という『理想』に結び付ける努力を行っていく」と述べました。

国連 グテーレス事務総長「世界は決して忘れてはならない」 
そして、国連のグテーレス事務総長が「世界は広島で起きたことを決して忘れてはならない。被爆者が残した遺産は決して消滅しない」と述べ、国際社会に対して核廃絶に向けた取り組みを改めて呼びかけました。

被爆者の女性「最期まであの日のことを伝えないといけない」
式典に参列した被爆者の女性は「当時のことを伝え続けないと、いつ平和がなくなるか分かりません。私は95歳で死との闘いですが、最期まであの日のことを伝えないといけない」と話していました。

娘と孫と3世代で祈り 76歳女性「平和の大切さを孫に伝えたい」 
両親が被爆したという広島市安佐南区の76歳の女性は、娘と孫とともに、午前8時15分、原爆ドームに向かって手を合わせ祈りをささげていました。
女性は「毎日、午前8時15分に祈りをささげています。ことしは式典に参加できませんでしたが亡くなった人をしのぶため、会場の近くまで来ました。当たり前に平和な生活ができることの大切さを孫に伝えていきたいです」と話していました。
娘の48歳の女性は「8月6日に広島で亡くなった人は、やりたいことができなくて亡くなったと思います。その人たちの思いを伝えていきたいです」と話していました。
また、15歳の中学生の孫は「戦争で悲しむ人がいるのに、世界では、まだ戦争が起きていて、悲しいです。同じことを繰り返さないためにも、伝えつづけていきたいです」と話していました。

南アフリカ出身の留学生「戦争に決して勝者はいない」
南アフリカ出身で徳島県に留学している24歳の大学院生は、
「被爆者が経験した実際の話を聞いて非常に心に響きました。戦争に決して勝者はいないし、戦争は解決手段にはなりません。それぞれの違いを受け入れて理解し合うことが大切だと感じました」と話していました。

ウクライナ出身女性「子どもたちの未来を心配」 
ウクライナ出身で、広島市南区に住む平石エレナさんは、原爆が投下された午前8時15分、家族とともに原爆ドームに向かって手を合わせ祈りをささげていました。
平石さんは、ウクライナへの支援金を募るチャリティーコンサートを企画するなどの活動をしています。
平石さんは、「世界が平和であるように、また、原爆で亡くなった人に静かに眠ってほしいと祈りました。広島の人たちは、ウクライナへの支援活動にも積極的に協力してくれました。広島で起こったようなことがウクライナで起こってほしくない。子どもたちの未来を心配しています」と話していました。

被爆者の平均年齢は、ことし84歳を超え、みずからの体験を語ることのできる被爆者が少なくなるなか、平和公園では若い世代が紙芝居の読み聞かせをしたり、外国人に英語で平和のメッセージを伝えたりしていました。
被爆地・広島は、犠牲者を追悼し、「核兵器によってもたらされる悲劇」や「核なき世界の実現を願う被爆者の声」を国内外に発信する1日が続いています。

平和記念式典 警備態勢を強化 
    (後 略)


平和宣言【令和4年(2022年)】
                              広島市ホームぺージ
広島市は毎年8月6日に、原爆死没者への追悼とともに核兵器廃絶と世界恒久平和の実現を願って平和記念式典を行い、広島市長が「平和宣言」を世界に向けて発表しています。広島・長崎の悲惨な体験を再び世界の人々が経験することのないよう、核兵器をこの地球上からなくし、いつまでも続く平和な世界を確立しようと、これからも平和宣言は訴え続けていきます。

平和宣言
母は私の憧れで、優しく大切に育ててくれました。そう語る、当時、16歳の女性は、母の心尽くしのお弁当を持って家を出たあの日の朝が、最後の別れになるとは、思いもしませんでした。77年前の夏、何の前触れもなく、人類に向けて初めての核兵器が投下され、炸裂したのがあの日の朝です。広島駅付近にいた女性は、凄まじい光と共にドーンという爆風に背中から吹き飛ばされ意識を失いました。意識が戻り、まだ火がくすぶる市内を母を捜してさまよい歩く中で目にしたのは、真っ黒に焦げたおびただしい数の遺体。その中には、立ったままで牛の首にしがみついて黒焦げになった遺体や、潮の満ち引きでぷかぷか移動しながら浮いている遺体もあり、あの日の朝に日常が一変した光景を地獄絵図だったと振り返ります。

ロシアによるウクライナ侵攻では、国民の生命と財産を守る為政者が国民を戦争の道具として使い、他国の罪のない市民の命や日常を奪っています。そして、世界中で、核兵器による抑止力なくして平和は維持できないという考えが勢いを増しています。これらは、これまでの戦争体験から、核兵器のない平和な世界の実現を目指すこととした人類の決意に背くことではないでしょうか。武力によらずに平和を維持する理想を追求することを放棄し、現状やむなしとすることは、人類の存続を危うくすることにほかなりません。過ちをこれ以上繰り返してはなりません。とりわけ、為政者に核のボタンを預けるということは、1945年8月6日の地獄絵図の再現を許すことであり、人類を核の脅威にさらし続けるものです。一刻も早く全ての核のボタンを無用のものにしなくてはなりません。

また、他者を威嚇し、その存在をも否定するという行動をしてまで自分中心の考えを貫くことが許されてよいのでしょうか。私たちは、今改めて、『戦争と平和』で知られるロシアの文豪トルストイが残した「他人の不幸の上に自分の幸福を築いてはならない。他人の幸福の中にこそ、自分の幸福もあるのだ」という言葉をかみ締めるべきです。

今年初めに、核兵器保有5か国は「核戦争に勝者はなく、決して戦ってはならない」「NPT(核兵器不拡散条約)の義務を果たしていく」という声明を発表しました。それにもかかわらず、それを着実に履行しようとしないばかりか、核兵器を使う可能性を示唆した国があります。なぜなのでしょうか。今、核保有国がとるべき行動は、核兵器のない世界を夢物語にすることなく、その実現に向け、国家間に信頼の橋を架け、一歩を踏み出すことであるはずです。核保有国の為政者は、こうした行動を決意するためにも、是非とも被爆地を訪れ、核兵器を使用した際の結末を直視すべきです。そして、国民の生命と財産を守るためには、核兵器を無くすこと以外に根本的な解決策は見いだせないことを確信していただきたい。とりわけ、来年、ここ広島で開催されるG7サミットに出席する為政者には、このことを強く期待します。

広島は、被爆者の平和への願いを原点に、また、核兵器廃絶に生涯を捧げられた坪井直氏の「ネバーギブアップ」の精神を受け継ぎ、核兵器廃絶の道のりがどんなに険しいとしても、その実現を目指し続けます。

世界で8,200の平和都市のネットワークへと発展した平和首長会議は、今年、第10回総会を広島で開催します。総会では、市民一人一人が「幸せに暮らすためには、戦争や武力紛争がなく、また、生命を危険にさらす社会的な差別がないことが大切である」という思いを共有する市民社会の実現を目指します。その上で、平和を願う加盟都市との連携を強化し、あらゆる暴力を否定する「平和文化」を振興します。平和首長会議は、為政者が核抑止力に依存することなく、対話を通じた外交政策を目指すことを後押しします。

今年6月に開催された核兵器禁止条約の第1回締約国会議では、ロシアの侵攻がある中、核兵器の脅威を断固として拒否する宣言が行われました。また、核兵器に依存している国がオブザーバー参加する中で、核兵器禁止条約がNPTに貢献し、補完するものであることも強調されました。日本政府には、こうしたことを踏まえ、まずはNPT再検討会議での橋渡し役を果たすとともに、次回の締約国会議に是非とも参加し、一刻も早く締約国となり、核兵器廃絶に向けた動きを後押しすることを強く求めます。

また、平均年齢が84歳を超え、心身に悪影響を及ぼす放射線により、生活面で様々な苦しみを抱える多くの被爆者の苦悩に寄り添い、被爆者支援策を充実することを強く求めます。

本日、被爆77周年の平和記念式典に当たり、原爆犠牲者の御霊に心から哀悼の誠を捧げるとともに、核兵器廃絶とその先にある世界恒久平和の実現に向け、被爆地長崎、そして思いを同じくする世界の人々と共に力を尽くすことを誓います。
                          令和4年(2022年)8月6日
                              広島市長 松井 一實