2022年8月3日水曜日

03- ペロシ米下院議長は東アジアに不安定化という置き土産を残して引退へ

 米民主党きっての対中強硬派として知られるペロシ下院議長が3日深夜、台湾に入りました。下院議長としては25年ぶりで、下院議長は大統領権限を継承する順位が副大統領に次ぐ2位の要職です。
 突然の訪台について中国外務省は声明を発表し、「ペロシ議長は中国の強烈な反対と厳正な申し入れにもかかわらず台湾を訪問し『1つの中国』の原則に著しく違反し、両国関係の政治的な基礎に深刻なダメージを与えた。中国は断固反対するとともに厳重に非難する」と激しく反発しました。
 ペロシが訪台を強行した理由は不明ですが、その行為が米国の対中関係に大きな障害になるのは承知の上で、客観的に米国が目指している台湾有事に向けた一石であるのも明らかです。現実にペロシの訪台に伴って米中の多数の戦闘機が台湾に飛来しました。
 今回のことで米中の戦端が開かれることはありませんが、台湾有事には日本を前面に立てて中国に対応させるというのが米国の真意なので、決して米中間の問題に留まるものではありません。
 櫻井ジャーナルが「ペロシ米下院議長は東アジアに不安定化という置き土産を残して引退へ」という短い記事を出しました。 
 併せてTBSの記事を紹介します。
           ~~~~~~~~~~~~~~~~~~
ペロシ米下院議長は東アジアに不安定化という置き土産を残して引退へ  
                         櫻井ジャーナル 2022.08.03
 ナンシー・ペロシ米下院議長を乗せた航空機が8月2日の深夜、台湾へ着陸した。3日には蔡英文総督と会談すると見られるが、この訪問は「ひとつの中国」政策に挑戦する行為で、リチャード・ニクソン大統領が1972年2月に中国を訪問して以来続いてきたルールを破ったことを意味する。つまり、ニクソン訪中から続いた米中関係は終わった。
 台湾に降りたペロシは台湾の民主主義に対するアメリカの揺るぎない約束を守るための訪問だと口にしたようだが、今年4月30日にはウクライナでネオ・ナチへの支援継続を誓っている。アメリカは手先としてナチス、マフィア、麻薬組織、カルトなどを使ってきた。自分たちにとって目障りな国、体制を破壊するためなら誰とでも手を組むのがアメリカの好戦的な支配層だ。
 ペロシを乗せた航空機が台湾へ接近すると、沖縄の軍事基地から米軍のF15戦闘機が離陸したと報道されたほか、日本の基地から数十機の米軍機が飛び立ったとも伝えられている。
 また、中国からはSu25戦闘機、またはSu35戦闘機が飛び立ち、台湾海峡を横切って台湾へ向かったともいう。未確認情報ながら、台湾の戦闘機と中国の戦闘機の間で空中戦があった、あるいは台湾機が警告の銃撃をしたという話もある。中国軍は8月4日から7日まで台湾の周辺で軍事演習を実施、限定的軍事作戦も実行するという。東アジアの不安定化は避けられないだろう。
 その後、中国はアメリカに対して「経済制裁」を課す可能性が高く、すでに不況になっているアメリカにとって厳しい事態になりそうだ。そうした事態を隠蔽するため、新たな行動に出ることもありえる。


【速報】米・ペロシ下院議長が台湾に到着 中国の反発必至
                           TBS 2022年8月2日
さきほどアメリカのペロシ下院議長が台湾に到着しました。ペロシ議長は明日蔡英文総統と会談する予定です。
中国政府はペロシ下院議長が台湾を訪問した場合「断固で力強い措置を講じる」と反発を強めていて緊張が高まっています。
複数の台湾メディアはペロシ議長が、あす蔡英文総統と会談すると報道。ペロシ氏は、きのう、きょうにかけ、シンガポールとマレーシアを訪問し日本と韓国も訪れる予定ですが、台湾には日韓に先立ち、マレーシアから入りました。
一方、中国では台湾の対岸、福建省南部での訓練映像がきょう公開されたほか、SNS上にはその福建省などを移動する軍用車両とされる映像も投稿されています。
30年近く前、当時の台湾・李登輝総統の訪米後には台湾近海でミサイル発射実験を行った中国。
今回、どう動くのか。
アメリカ政府高官は、中国が台湾周辺でのミサイル発射や台湾の防空識別圏への大規模な進入などの措置をとることが考えられると指摘。
またロイター通信は関係筋の話として、複数の中国軍機がきょう午前、台湾海峡の中間線に接近したと伝えています。こうした中、外交の動きは。
米・ブリンケン国務長官「ペロシ下院議長が台湾訪問を決めた場合に、中国が何らかの危機を起こしたり、緊張を高めようとすれば、それは完全に中国の責任だ」
これに対し、中国からは。
中国外務省・華春瑩報道官「アメリカが独断専行すれば必ず断固で力強い措置を講じ中国の主権と安全の利益を守る」
中国外務省は、あらためてアメリカを強くけん制しています。
現職のアメリカ議会下院議長の訪問は25年ぶり。当時の議長ギングリッチ氏は、これまでのバイデン政権の対応について。
ギングリッチ「中国共産党をなだめられると思っているのなら完全に歴史を読み違えている」

一方、アメリカメディアからはロシアのウクライナ侵攻が続く中、「アメリカは台湾をめぐって中国と衝突するリスクを負う」とし、ペロシ議長の訪問を「これ以上、悪いタイミングはない」とする批判や「訪問が、どれだけ利益をもたらすか不透明だ」といった指摘が出ています。