中村格・警察庁長官が25日、安倍晋三氏銃撃・死亡事件の責任をとり辞任すると発表しました。長官職は辞任しても華麗な天下り人生が待っていて、今後は一流企業で専任の運転手が付いた生活に入るわけです。
中村氏は警視庁刑事部長だったときに、安倍氏を賞賛するジャーナリスト・山口敬之氏が伊藤詩織さんに対する性暴力容疑で逮捕されようとしたとき、その寸前に中止させたことで一躍有名になりました。裁判所が許可した逮捕を警察の意向で止めるのは勿論違法です。これは官邸の意向を受けてのことと推測されました。
もう一つ15年3月27日に、やはり官邸の圧力でテレビ朝日「報道ステーション」のコメンテーターを降板することになった古賀茂明氏が最終回で、安倍首相がイスラエル訪問時にイスラム国への敵意を示したために、その後日本人がイスラム国から敵視されるようになったことへの対応として、″I am not ABE”と表明するしかないと述べました。
その際に当時菅官房長官の秘書官であった田中氏が、何とまだ放映中から番組の編集長に電話をかけまくり、編集長が出ないと今度はメールで「古賀は万死に値する」との恫喝をかけました。
そうした派手で異常な対応に走ったのは、放送中にアクションを起こしたことを菅官房長官に誇示するためだったと見られています。
田中氏はこんな風に官邸の意を受けた恣意的な現場介入を繰り返し、その論功行賞で警察庁長官に上り詰めました。まさに安倍・菅政権による腐敗政治を象徴する人物でした。
LITERAが伝えました。
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中村格警察庁長官辞任でもくすぶる安倍元首相警護をめぐる疑惑!
警察を“政権の謀略機関”にした男の責任を徹底追及せよ
日刊ゲンダイ 2022年 8月26日
安倍晋三・元首相が銃撃され死亡した事件の責任をとり、きのう25日、中村格・警察庁長官が辞任を発表。あわせて当日、警護・警備に当たっていた奈良県警のトップ・鬼塚友章本部長も辞職する意向だと表明した。
中村長官は「警護の在り方を抜本的に見直し、二度とこのような事態が起こることのないよう新たな体制で新たな警護を行うために人心一新を図る」などと語ったが、安倍元首相の警護をめぐっては、根本的な疑問が残っている。
警察庁がきのう25日公表した報告書では、6月25日に自民党の茂木敏充幹事長が同じ場所で街頭演説をおこなった際にトラブルがなかったことから安倍元首相の警護でも警官をわずかに増員しただけの警護計画を作成した点などを「明らかな不備」と指摘。このことが「後方警戒の空白を生じさせた」とした。
だが、今回の警察の警護問題はほんとうにただの「不備」なのか。じつは、安倍元首相の銃撃事件については、警察の安倍元首相や自民党への特別扱いが生んだものではないかという疑惑が根強くくすぶっている。
というのも、複数の報道によると、立憲民主党の泉健太代表が今年4月に同じ場所で演説を計画した際、奈良県警は「警備が難しい」と指摘し却下。立憲はこの場所での演説を断念しているからだ。泉代表は少し離れた場所で演説をおこなったというが、それに対しても奈良県警は車の上で演説することや車を防弾パネルで覆うこと、真後ろに警護員を待機させることなどを要望したという。
しかも、自民党以外の政党はこの場所での演説は危険があると判断していた。実際、日本維新の会は「ガードレールに囲まれ襲撃されても逃げにくい上、緊急時に使う車も近くに置けない」と判断し、少し離れた場所で演説を実施。日本共産党は6月11日に安倍元首相と同じ場所で演説をおこなったが、奈良市の許可を得た上でガードレールを一部動かし、エリア内で選挙カーを入れて演説をおこなったという(読売新聞7月21日付)。
野党には「警備が難しい」と指摘し、少し離れた場所でも車上での演説や後方警備を要望した奈良県警が、自民党の茂木幹事長、安倍元首相には、甘い後方警備のまま演説することを許可したという矛盾。普通なら、元首相の警護には野党幹部よりももっと慎重になるはずなのに、これはどういうことなのか。
その背景には、自民党や安倍元首相サイドの警察への働きかけ、あるいは警察の自主的な忖度があったのではないか、という疑惑が浮上している。
報道されているとおり、安倍元首相が街頭演説をおこなった場所は聴衆が集まりやすいとされるが、一方で安倍元首相の奈良入りが決定したのは前日の午後。突貫で警護計画が作成され、鬼塚本部長が警護計画を承認したのは銃撃当日の午前9時ごろだった。つまり、聴衆が集まる場所で街頭演説をおこないたいという自民党サイドの要望が優先され、危険性が無視されたのではないか。
さらに気になるのは、この誰の目にも杜撰な警護計画を承認した奈良県警の鬼塚本部長と安倍人脈の関係だ。
鬼塚本部長は、きのう25日の会見でも「個人的に敬愛する安倍元総理がお亡くなりになったとの知らせを受けて、はかりしれれない衝撃」と安倍氏への特別な感情を強調、警察官僚としての公平性を疑いたくなる発言をしていたが、「安倍官邸のアイヒマン」と呼ばれ、安倍元首相が国家安全保障局長に就けた北村滋氏の子飼いとして有名な人物だった。実際、鬼塚氏は「内閣情報調査室に勤務していたころに北村滋内閣情報官に見いだされた」と言われており、2020年8月には北村氏がトップを務める国家安全保障局の内閣参事官に就いていた。
そして、警察庁のトップ・中村格長官も周知のように、安倍応援団ジャーナリスト・山口敬之氏の逮捕を潰すなど、官邸の意を受けた恣意的な現場介入をおこない、その論功行賞でトップに上り詰めたといわれる人物だ。安倍元首相の演説が強行された背景に、この2人はかかわっていないのか。
■山口敬之の逮捕取り消し、報ステへの圧力…“安倍官邸の秘密警察”として暗躍した中村格
だが、中村長官は、こうした疑義を無視したまま辞意を表明してしまった。つまり、要人警護という観点から必要な検証がおこなわれないまま、真相が闇に葬られようとしているのである。
いや、闇に葬られようとしているのは、安倍元首相銃撃の問題だけではない。中村長官が説明しなければならない問題は、ほかにもある。それは、前述したように、中村氏が伊藤詩織氏に対する性暴力事件で山口敬之氏の逮捕を潰した最重要キーマンだからだ。
あらためて振り返ると、元TBS記者で「安倍首相にもっとも近いジャーナリスト」と呼ばれていた山口敬之氏から性暴力を振るわれたという伊藤氏の相談を受け捜査を担当していた高輪署の捜査員が、2015年6月8日、逮捕状を持って成田空港で山口氏の帰国を待ち構えていた。ところが、この逮捕直前に上層部からストップがかかった。この逮捕取りやめを指示したのが、当時、警視庁刑事部長だった中村氏だった。実際、山口氏の逮捕を取りやめるよう指示したことについて、本人が「週刊新潮」(新潮社)の直撃に対し、「(逮捕は必要ないと)私が決裁した」と認めているのである。
伊藤氏の著書『Black Box』(文藝春秋)には、伊藤氏が直接、中村氏への取材を二度試みたくだりが出てくるのだが、それによれば、中村氏は一切の説明をせずに逃げたのだという。
〈出勤途中の中村氏に対し、「お話をさせて下さい」と声をかけようとしたところ、彼はすごい勢いで逃げた。人生で警察を追いかけることがあるとは思わなかった。 私はただ、答えが欲しいのだ。中村氏にはぜひ、「私のした判断は間違いではなかった。なぜなら……」ときちんと説明して頂きたい。なぜ元警視庁刑事部長の立場で、当時の自分の判断について説明ができず、質問から逃げるばかりなのだろうか?〉(『Black Box』より)
結果的に事件は2015年8月に書類送検され、山口氏は翌年7月22日付けで嫌疑不十分で不起訴処分に。逮捕寸前まで行った事件が、このように中村氏の逮捕取りやめ指示によって“ブラックボックス”のなかに押し込められてしまったのである。
このような人物を、安倍首相は2020年1月に警察庁ナンバー2の次長に昇格させ、さらにはつづく菅義偉首相も2021年9月に警察庁長官に就けたのだ。つまり、中村長官は安倍・菅政権による腐敗政治を象徴する人物であり、そもそも警察庁長官になどさせてはならない人物だったのである。
しかも、中村氏の「安倍・菅官邸の秘密警察」ぶりが問題となったのは、伊藤氏の事件だけではない。
たとえば、中村氏が刑事部長だった2015年、中村氏の指示により、当時の安倍首相の秘書の息子が被害者となったゲームセンターでの喧嘩になんと凶悪犯罪を扱う捜査一課が投入され、強引に容疑者逮捕に及んだと2019年11月に「週刊新潮」が報道。記事によると、事情聴取で被害者の父親が「安倍総理の秘書をしていた」と話し、その報告書が本部に上げられたため中村部長が大騒ぎ。〈被害者は安倍(晋三)総理の秘書の息子さんなんだ。すぐに逮捕して欲しい〉と捜査一課長に精鋭を招集させた。そして、当時は東京・三鷹の小学校教諭の男性が児童に対する強制わいせつなどの疑いで逮捕されメディアでも大きく報じられたのだが、その捜査が大詰めを迎えていたときに釣宏志・捜査一課長が捜査員を呼び出し、こう命じたのだという。
〈三鷹をちょっと止めて別の件をやって欲しいんだ。世田谷署管内のゲームセンターで子供が殴られた。すぐやってくれ。(加害者を)3日で逮捕しろ。これは中村刑事部長のご下命だ〉
また、中村氏をめぐっては、2019年2月に刑事告訴され議員辞職した自民党の田畑毅・前衆院議員(のちに書類送検、不起訴)の問題でも、捜査の指揮を執った愛知県警本部長を警察庁に呼んで慎重捜査を厳命したと噂され、「田畑氏が刑事告訴された2月上旬以降、警察庁の中村格官房長が頻繁に官邸を訪ねている」とも報じられた。
しかも、中村氏の暗躍はこれだけにとどまらない。それは報道への介入・圧力だ。
その問題を象徴するのが、『報道ステーション』(テレビ朝日)の古賀茂明降板事件だ。2015年、IS人質事件に関してレギュラーコメンテーターだった古賀氏は、当時、安倍首相が「『イスラム国』と戦う周辺国に2億ドル出します」と宣戦布告とも取られかねない発言をおこなったことを批判。さらに「まぁ私だったら“I am not ABE”(私は安倍じゃない)というプラカードを掲げて、『日本人は違いますよ』ということを、しっかり言っていく必要があるんじゃないかと思いましたね」と発言した。
この発言に官邸は大激怒。本サイトでも当時伝えているが、「菅官房長官の秘書官」が番組編集長に電話をかけまくり、編集長が出ないと今度はショートメールで「古賀は万死に値する」という、恫喝をかけた。その「菅官房長官の秘書官」が中村氏だったのである。
古賀氏は著書『日本中枢の狂謀』(講談社)のなかで、この『報ステ』に恫喝メールを送った「菅官房長官の秘書官」が中村氏であることを明かし、こう綴っている。
〈一月二三日の最初の「I am not ABE」発言の直後、なんと番組放送中に、まず中村格官房長官秘書官(当時)から、報道局ニュースセンター編集長の中村直樹氏に電話があったという。たまたま中村編集長が電話を取り損ねると、今度はショートメールが入った。テレ朝関係者に聞いた話では、その内容は「古賀は万死に値する」といったような、強烈な内容だったそうだ。〉
〈報道によると、この日、菅官房長官は、秘書官と一緒に官邸で番組を見ていたそうだ。その真偽はさておき、仮に直接聞いていなくても、私の発言を知れば、菅官房長官が激怒することは容易に推測できる。
秘書官としては、アリバイ作りのためにも、すぐに抗議しておかなければならない。それが秘書官の務めだ。そこで、とにかく放送中にアクションを起こしたことを菅官房長官に示すため、ショートメールを送ったのではないか、といわれている。〉
つまり、中村氏はこのように、菅氏によるメディア圧力の実行部隊として動いてきた人物だったのである。
安倍首相にベッタリの記者の逮捕取りやめを指示しただけではなく、政権に打撃を与える議員の事件への介入、報道圧力まで……。“安倍・菅政権の爪牙”と呼ばれ、論功行賞によって警察庁長官にまで引き立てられた中村氏が、安倍氏銃撃事件によって引責辞任することになるとは因縁めいたものを感じるが、これで幕引きさせていいはずがない。安倍元首相の警護をめぐる真相、そして山口敬之氏の逮捕状握り潰しについて、中村氏には説明する責任があると言っておきたい。(編集部)