2022年8月10日水曜日

10- ウクライナを通る「友情パイプライン」によるロシアからの石油輸送が停止 

 ロシアからウクライナを経由してハンガリー、チェコ、スロバキアにつながるドルジバ(友情)パイプラインでの送油が4日で停止したということですノードストリーム1による天然ガスの供給も今は止まっているようです。ノードストリーム2は昨年完成したものの米国の反対で使われないままになっています。

 ロシアが供給を停止したのは、買い手側が代価の支払い方法を米国の指示に従って変えようとしたからで、石油や天然ガスの販路がそこに限定されているのであれば話し合いの余地はあったかも知れませんが、中国やインドなどの大口購入者がいて売り捌きに苦労しないようなので、供給停止になったのは当然の成り行きと言えます。
 米国もガソリンの高騰には苦慮しているようですが、ガスも石油も自給できるのでEUとは事情が異なります。それに対してEUなどは数か月後に厳寒期を控えて、この先どうなるのでしょうか。そもそも西側だけが一方的に困るこうした「作戦」に何か意味があるのか、ただ米国の言いなりになっている彼らの姿勢には疑問を抱かざるを得ません。
 いずれは融通がつくにしても、安くて量も豊富なロシア産に対して価格はどうなるのか、仮に2倍になればそれぞれの国の経済状態はどうなるのか、日本にも大いに影響することは言うまでもありません。

 櫻井ジャーナルが伝えました。後半ではウクライナ政権の腐敗について触れています。
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ウクライナを通過するドルジバ・パイプラインによるロシアからの石油輸送が停止 
                         櫻井ジャーナル 2022.08.10
 ウクライナを通過しているドルジバ(友情)・パイプラインの南ルートによる石油の輸送が8月4日から停止したと伝えられている。ロシアからウクライナを経由し、ハンガリー、チェコ、スロバキアにつながっているもので、アメリカ主導で行われているロシアへの「制裁」に伴う支払いの問題が原因だという。
 この「制裁」によってEUは大きな打撃を受け、特にエネルギー資源の不足は深刻。その影響は経済活動全体に及んでいる。夏場もEU社会に大きな影響を及ぼしているが、冬場はさらに深刻なことになる可能性が高い。西側が「制裁」を実施する前、それは「自爆攻撃」、あるいは自分の足を撃つ行為だと言われていたが、その警告通りの展開になってきた。
 2011年11月に完成したロシアからEUへバルト海を経由して天然ガスを輸送するノードストリーム1も「制裁」の影響で輸送が停止、その前には2021年9月に完成したノードストリーム2もアメリカの圧力で始動できないでいる。
 2013年11月から14年2月にかけてバラク・オバマ政権がウクライナで実行したクーデターが原因で内乱が始まり、アメリカ/NATOはクーデター体制を支援してきた。そのひとつの結果が今年2月24日にロシア軍が始めたウクライナに対する攻撃だ。
 クーデター後にオバマ政権やジョー・バイデン政権が行った政策の中にはNATOをウクライナへ拡大するということも含まれているが、これは新たなバルバロッサ作戦にほかならない。

 かつて、ソ連はバルバロッサ作戦をドイツに始めさせてしまい、甚大な被害を被っている。そこでウラジミル・プーチン政権は新たなバルバロッサ作戦を許さないという姿勢を見せ、それをレッドラインと表現していた。
 バイデンが大統領に就任して以来プーチン大統領はレッドラインを越えるなと繰り返し警告、バイデン政権はその警告を無視してレッドラインを越え、プーチン政権は軍を動かしたわけである。
 2月24日に始まった戦闘でウクライナの軍や親衛隊は住民を人質にとりながら戦う。そこで時間はかかったが、住民は解放され、軍や親衛隊の兵士は降伏しつつある。解放された住民や降伏した兵士はキエフ政権側が残虐な行為をしている事実を証言、西側の有力メディアが宣伝してきた話の嘘を知る人が増えてきた。
 8月4日に人権擁護団体のアムネスティが発表した報告でも、​ウクライナ軍が市民を危険に晒す戦術を採用していると指摘​している。学校や病院を含む住宅地にキエフ政権側の武装勢力が軍事基地を建設、そうした場所から攻撃することで住民を危険な状態になったとしているのだ。
 アメリカはHIMARS(高機動ロケット砲システム)、またイギリスはM270 MLRS(M270多連装ロケットシステム)といった高性能兵器を供給、ドンバス(ドネツクとルガンスク)の住民を殺害しているが、戦況を変えることはできない。供給された兵器の大半はブラックマーケットへ流れていると言われている。中東や中央アジアで活動しているアメリカの傭兵の手に渡っている可能性も高い。
 アメリカのネットワーク局CBSは「​ウクライナ武装​」の中でウクライナへ供給された兵器のうち前線の兵士に届くのは全体の30%にすぎないと伝えた。これを受け、法案に反対した共和党のマジョリー・グリーン下院議員とローレン・ボーバート下院議員が改めて新たな兵器供給を批判している。
 こうした動きが出た後、​CBSはその報道を「訂正」​し、4月に撮影した後に状況は改善され、問題はなくなったと主張しているが、アメリカ/NATOが供給した兵器が「ブラックホール」の中へ吸い込まれているという話は今でも指摘されている。
 ドイツのシュピーゲル誌によると、​ウクライナ側の抵抗は7月いっぱいで終わり、ロシア軍は8月にドンバス全域を制圧できると同国の情報機関BND(連邦情報局)は分析​していた。
 この分析は正しかったようで、ウォロディミル・ゼレンスキー政権は追い詰められている。そこでゼレンスキー大統領はサウス・チャイナ・モーニング・ポストのインタビューで、​中国の習近平国家主席と直接会いたいと語った​という。その政治経済力を使い、ロシアに「侵略戦争」をやめさせて欲しいというのだ。
 しかし、ゼレンスキー政権はロシア政府との話し合いを拒否、あるいは時間稼ぎに使うだけで、すでにプーチン政権は話し合いに見切りをつけ、軍事的な解決に集中したのだ。
 ロシア軍がウクライナを攻撃しはじめると、キエフ政権の治安機関であるSBU(ウクライナ保安庁)はロシアと話し合いで問題を解決しようと考える市長を処分、ルガンスクのボロディミル・ストルク市長は3月1日に誘拐され、拷問された上で胸を撃たれて死亡している。
 3月5日にはロシアと交渉しているチームのひとり、デニス・キリーエフがキエフの路上でSBUの隊員に射殺され、3月7日にはゴストメル市長だったのユーリ・プライリプコの死体が発見された。ウクライナでは11名の市長が行方不明だとも言われている。
 SBUのチームによる「国賊狩り」も宣伝されていたが、これはウクライナ国民を恐怖させ、命令に従わせることが目的だろう。4月21日にはウクライナの南部にあるミコライフ州のビタリー・キム知事が「ウクライナ24テレビ」の番組に登場、​「全ての裏切り者を処刑する」と語った​。そうした処刑を実行するための秘密部隊を編成、すでに作戦を遂行しているともいう。
 ゼレンスキー大統領は西側諸国に対し、ロシア人の入国を全面的に禁止するように求めたが、こんなことしか言えなくなったということだろう。