2022年8月12日金曜日

12- 統一教会会長が会見 「何も悪いことはしていない」の弁明に終始

 統一協会の田中富広会長が10日、記者会見を行い献金強制や信者二世への人権侵害などの被害を取り上げた報道について、「異常な宗教迫害ともいうべき偏向報道」と強弁。同協会による被害がなかったかのような居直り発言に終始しました。
 会見では冒頭に謝罪しましたが、その後は延々と「何も悪いことはしていない」と一方的に話し、司会者の「そろそろ終了してください」という制止も振り切り、会見の大半を協会は被害者だとする声明文の読み上げに費やしました。
 公共ラジオ局「ラジオ・フランス」と新聞「リベラシオン」の特派員、西村カリンさんは最初に質問に立って「冒頭で謝罪して、その後40分かけて何も悪いことをしていないという意味のことを言っていた。謝罪の意味をもう一回説明してもらえますか」と要求しました。彼女は、「フランスの記者会見では、謝罪する時は何が悪かったかをちゃんと話します」と言いましたが、田中氏の答えは一向に要領を得ないものでした。
 しんぶん赤旗とAERA dot. の記事を紹介します。

   ⇒ https://youtu.be/E235-xgORmw (会見動画 1時間34分)
        (カリンさんの質問は1:08:11頃から始まります)
           ~~~~~~~~~~~~~~~~~~
徹底追及 統一協会
会長会見 被害認めず 強弁・居直り 終始 自民議員への支援は認める
                       しんぶん赤旗 2022年8月11日
 統一協会(世界平和統一家庭連合)の田中富広会長が10日、日本外国特派員協会で会見しました。献金強制や信者二世への人権侵害などの被害を取り上げた報道について、田中氏は「異常な宗教迫害ともいうべき偏向報道」と強弁。同協会による被害がなかったかのような居直りに終始しました。(統一協会取材班)
 会見で田中会長は50分近く一方的に話し、司会者の「そろそろ終了してください」という制止も振り切りました。会見の大半を協会は被害者だとする声明文の読み上げに費やしました。
 田中氏は2009年に刑事事件として社会問題となった同協会の霊感商法について「一部信徒の経済活動」と矮小(わいしょう)化しました。さらに「信者が経営する会社での物販活動にたいする基本的な指導、財力に比しての高額な献金が行われないよう徹底した努力をしてきた」と強調。09年以降も続く献金被害がないかのような主張を繰り返しました
 15年の名称変更について田中氏は「正体隠しのため」ではないと主張。文化庁宗務課が名称変更に難色を示してきたことを認めたうえで、15年に法律家の意見書をつけて申請して認められたと説明。名称変更は「政治的な関与や不正はない」としました。
 記者から自民党議員への支援について問われると、田中氏は「政治に協会の友好団体が強く関与したのは事実」と認めました。そのうえで「協会は共産主義と明確に対峙(たいじ)してきた。その姿勢を持つ政治家とはともに手を携えて国づくりをしてきた」「その視点からいうと自民党の方と多く接点をもつことがあるのではないか」と述べました。
 日本の統一協会が世界的な資金源になっているとされる問題については、田中氏は日本が何割くらい負担しているか分からないとしつつ、「宣教師派遣のため世界に献金を送っているのは事実」としました。


制止を振り切った旧統一教会の会見 「形だけの謝罪」外国人特派員からは不満の声
                          AERA dot. 2022/08/11
 安倍晋三元首相の襲撃事件から1カ月が経ち、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)が8月10日、日本外国特派員協会(東京都千代田区)で記者会見を開いた。会見時間の約1時間10分のうち、40分間は田中富広会長が原稿を読みながら主張する場面が続いた。会見後、出席した外国人記者からは不満の声が上がった。
 午後3時から始まった会見には、田中富広会長と法務担当者の2人が出席した。
 会場で最前列に座っていたフランスの公共ラジオ局「ラジオ・フランス」と新聞「リベラシオン」の特派員、西村カリンさんは、質問時間に入ると手を上げ、最初にこう質問した。
冒頭で謝罪して、その後40分かけて何も悪いことをしていないという意味のことを言っていた。田中さんの謝罪の意味をもう一回、説明してもらえますか
 この質問に対し、田中会長は、
「主にこんにちの報道は、2009年以前の私たちのいわゆる負の部分がクローズアップされております。そのことがメディアを騒がせ、多くの混乱を招いているということに対する謝罪です」
 と答えた。
 西村さんはその場面の率直な感想をこう語る。
「(田中会長らの)謝罪の場面があり、頭を下げていましたね。それなのに、自分たちは悪いことをしていないということを言い続けたのはとても矛盾すると思います。形だけの謝罪で、写真を撮らせただけ。謝罪ではなく、あなたがたマスコミが悪いとかいう話をしていた。何の謝罪だったのか。フランスの記者会見では、謝罪する時は、何が悪かったかをちゃんと話します
 さらに、おかしいと違和感を感じたことがあった。
 田中会長が、こう語ったところだった。
私たちの法人並びに友好団体は創設以来、共産主義とは明確に対峙(たいじ)してきた。共産主義問題に明確な姿勢を持っている政治家に対しては国造りに向かって手を合わせて来たと思っています」
 この説明について西村さんはこう批判する。
「田中さんの考え方は、1960年代の古い考えで、時代遅れです。彼らにしてみれば、共産主義者はファシストで、排除すべき対象だというミッションがあるみたい。それに協力してくれる政治家は仲間ですと言っている。フランスにもコミュニズム政党はありますが、普通の政治政党として扱われていますよ。今のコミュニズムはそういう扱われ方はされていない
 さらに、こう続ける。
「日本でも、共産党の人たちはまともなことを言う人が多いじゃないですか。共産党の(「桜を見る会」の疑惑を告発した)田村智子さんらには共感もある。共産主義が大嫌いだからそれを排除しようというのは、宗教団体の役割ではない。実質的に政治活動をしていて、それなのに名称変更の時に宗教団体として登録できたことがおかしい」
 田中会長は会見の意味をこう語った。
「異常な宗教迫害とも言えるヘイト感情が誘発され、当法人、信者に対して身体的危害が加えられたり、暴力行為による新たな被害が発生することを真剣に危惧するものです」「私たちの取り組みが、より変化を求められるならば、多くの方々の意見を受け止めて、よりよい法人のあり方を求めて、変化はなお続けたいと思っております」
 これに対し、西村さんは、もし二つ目の質問ができたならば、聞きたいことがあったという。
旧統一教会は被害者であるという意味ですかと聞きたかった。彼らは今、被害者を強調していたから
 同じく、会見に出席していたパキスタン人の宗教評論家H.A.ムガールさん。テレビ朝日の討論番組「朝まで生テレビ」でもおなじみだ。会見後、ムガールさんはこう感想を話した。
きょうの会見は、旧統一教会のプレゼンテーションの場でしたね。教会のピーアールになってしまった。田中会長は40分を超えて一人でスピーチして、いつ終わるのか、いつ終わるのかと思っていました。台本通りなんでしょうね。質問したいと思っていたんですけど、質問の時間が少なかった
 ムガールさんは旧統一教会系の団体「UPF」のイベントに参加したことがあるという。
「政治家とか、安倍晋三元首相のこともよく知っている。宗教団体がバックアップしてやっているから、切り離してやるべきです。宗教と政治が合体しているのが問題。政教分離が大切です」
 司会進行役を務めた、ビデオニュース・ドットコムの神保哲生さんは、田中会長が会見開始から40分以上も、ずっと話し続けている間、「そろそろスピーチのほうはやめていただいて」などと、何度か制止をする場面もあったが、田中会長は「全部話させてください」と言い、制止を振り切って話し続けた。
 会見直後の会場で、神保さんはこう話した。
(事前に)30分くらいスピーチをしたいと言っていた。また、午後4時には帰るとも言っていた。長い原稿があって、この原稿は何がなんでも読むというのが先にあった。スピーチの途中で、隣に座っていた(法務担当の)人の原稿を見たら、まだ原稿が5~6ページ残っていて、これはダメだなと思って、『そろそろ』と切り出したんです」
 それでも、スピーチを止めようとしなかった田中会長。
「マイクを取り上げるわけにもいかなかった。その代わり、午後4時が終わりの会見を4時10分くらいまで延ばしてくれた」(神保さん)
 どうして、田中会長は制止を振り切ったのだろうか。
「原稿を読んでいるだけ。組織決定されているものを読んでいたみたいで、自分で勝手に短くしたりもできないんでしょうね。僕はそう思いました。だって、同じ原稿を広報の人もみんな持っていたんですから」
 前出の西村さんはこう話した。

これからは、こんなことにならないように、冒頭のスピーチは5分とかなしということも対策として考えないといけないと思います  (AERA dot.編集部・上田耕司)