2022年8月30日火曜日

民主主義を破壊する国葬強行/「国葬」中止署名広がる/「国葬」反対デモ

 植草一秀氏が、「民主主義を破壊する国葬強行」とする記事を出し、「岸田内閣が国葬を実施しようとするなら法的根拠を定める必要がある。百万歩譲っても、最低限、国会の議決を得る必要がある」と述べました

 併せてしんぶん赤旗の3つの記事
 ・国葬 「立憲主義を揺るがす」 5弁護士会が反対声明
 ・「国葬」中止署名広がる 憲法違反の企て 全国で行動
 ・法ねじ曲げる「国葬」 市民反対デモ
を紹介します。
     お知らせ
   都合により9月1日は記事の更新が出来ません。ご了承ください。
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民主主義を破壊する国葬強行
               植草一秀の「知られざる真実」 2022年8月28日
国権の最高機関は国会。その背景は国民主権にある。
日本国憲法は、「日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し、(中略)ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する。」の一文で始まる。
そして、「そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであつて、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する。」に続く。
国民主権が日本国憲法の根幹をなす最重要の原理である。

日本国憲法第65条は行政権が内閣に属することを定めるが、内閣の職務権限は、第73条が定めるように「法律を誠実に執行し、国務を総理すること」に集約される。
国会が国権の最高機関であり、国会が決めたことを内閣が執行する。このような建付けになっている。
内閣府設置法第4条3項33号に「国の儀式」が所掌事務とされていることを岸田内閣は国葬実施の根拠であると強弁するが、同条項は国葬の権限義務についての根拠規定となしうるものではない。

「内閣府設置法」4条3項33号にある「国の儀式」は、憲法第7条10号が定める「儀式を行ふこと」を前提にして法定化されている皇室典範(法律)24条、25条が定める「即位の礼」、「大喪の礼」など、すでに国会によって国家の意思が決められ内閣に授権されている儀式についての規定である。
大日本帝国憲法下においては天皇の勅令として定められた「国葬令」が存在した。
しかし、1947年に日本国憲法の施行と共に、「日本国憲法施行の際、現に効力を有する命令の規定の効力等に関する法律」(法律第72号)が制定され、平和主義・民主主義・国民主権の理念等、憲法の根本規範に適合しないと評価された勅令等は、その第1条により廃止された。「国葬令」もそのひとつ。

その後も国葬の根拠を定める立法措置はとられておらず、現在に至っている。そこには、かつて存在した国葬令に対する一定の否定的評価が存しているといえる。
敗戦後日本における唯一の例外が1967年10月に実施された吉田茂元首相の国葬。
しかし、批判が強かった。1968年5月の衆院決算委員会で社会党議員が、「政府の思い付きで(国葬を)やることは承服できない。国会、国民が納得する(対象者の)基準を発表する必要がある」と質問した。
これに対して政府の水田三喜男蔵相(当時)が、「何らかの基準をつくっておく必要がある」と答弁している。

国葬令が失効したままであり、その後に国葬を定める法令は制定されていない。
岸田内閣が国葬を実施しようとするなら法的根拠を定める必要がある。百万歩譲っても、最低限、国会の議決を得る必要がある
ところが、岸田内閣は法的根拠がないなかで国葬実施を閣議決定し、さらに国葬にかかる国費の支出を閣議決定した。国会軽視、国会無視の岸田首相の姿勢は、とりもなおさず、主権者である国民軽視、国民無視のものである。
日本国憲法は財政上の措置について、
第83条 国の財政を処理する権限は、国会の議決に基いて、これを行使しなければならない。
第85条 国費を支出し、又は国が債務を負担するには、国会の議決に基くことを必要とする。
と定めている。
財政措置の執行は国会の議決に基く必要がある。これを財政民主主義と呼ぶ。
第87条 予見し難い予算の不足に充てるため、国会の議決に基いて予備費を設け、内閣の責任でこれを支出することができる。
2 すべて予備費の支出については、内閣は、事後に国会の承諾を得なければならない。
の定めがあるが、これは巨大な天災地変などが生じた場合などの災害復旧等の措置を取るためのもので、あくまでも例外的な措置。法的根拠もない国葬にかかる国費支出の執行に国会での事前の議決が必要であることは明白だ。
日本国憲法の根幹を踏みにじる岸田首相の姿勢は民主主義の根幹を破壊するものと言うほかない。日本国民は国葬実施を断固として阻止しなければならない。

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国葬 「立憲主義を揺るがす」 5弁護士会が反対声明
                        しんぶん赤旗 2022年8月29日
 安倍晋三元首相の国葬に反対、撤回を求めて東京、神奈川県、群馬、京都、兵庫県の5弁護士会が27日までに、会長声明を発表しています。
 声明はいずれも「現在は『国葬』を行ううえで、法的根拠となる規定は存しない」(兵庫県弁護士会)などとして、反対を表明しています。
 群馬弁護士会は、戦前の「国葬令」が1947年に失効した点に言及しています。神奈川県弁護士会は「憲法制定・施行時の国会は、国葬令が新憲法に抵触することを前提に、国葬令を新たに立法化しないことを選択しており、国会の意志決定として国葬令の廃止を判断した歴史的経緯がある」としています。
 また、国葬を強行すれば「財政民主主義の原則」(憲法83条)、「沈黙の自由」も含む「思想信条の自由」(同19条)に反すると警告しています。
 京都弁護士会は「国全体として弔意を示すべきとして国葬を実施することは、それ自体が、思想・信条の自由を侵害することになりかねない」と言及。
 東京弁護士会は、安倍元首相が在任中に強行した数々の政策に、全国の弁護士会が反対の声明を出してきたことにふれています。そのうえで「それにもかかわらず、これらの安倍内閣の各政策を国に対する功績と評価して安倍元首相の『国葬』を行うことは、立憲主義及び憲法の基本理念を揺るがすものであり是認できない」と撤回を求めています。


「国葬」中止署名広がる 憲法違反の企て 全国で行動
                       しんぶん赤旗 2022年8月29日
 学者や作家など、著名な17氏が呼びかけ人となって取り組んでいる、「国葬」中止を求めるオンラインの賛同署名には、続々と賛同の声が増えています。スタートから3日間で、5万を超える人が署名に賛同。現在、7万4000人をこえています(28日午後8時)

戦前回帰のメッセージ
 賛同署名の呼びかけ人が、「国葬」に反対するメッセージを寄せています。
 東京大学名誉教授の上野千鶴子さんは、安倍元首相が憲法を無視しながら政治を私物化してきたことは、「国葬」によってなかったことにはできないと強調。「私たちの税金を国葬に使うことに反対します」と語ります。
 法政大学名誉教授・前総長の田中優子さんは、「国葬」とは天皇が家来の功績をたたえ、国民にも哀悼の意を共有させるために行われてきた大日本帝国の遺物だと指摘。多くの反対を押し切って「国葬」を行うことは、「戦前の日本に戻ろうというメッセージです」と述べています。

45団体共同実行委発足
 各紙の世論調査でも「国葬」反対の声が高まるもとで、6日には総がかり行動実行委員会をはじめ全国45の団体が共同して「安倍元首相の『国葬』に反対する実行委員会」が発足しました。
 同実行委員会が発表したアピールでは、岸田政権が閣議決定した「国葬」は「法的根拠が存在せず、かつ憲法が保障する信教の自由、良心の自由、および法の下の平等の原則に反する憲法違反の企てです」と指摘し、緊急に反対の声を全国であげていこうと訴えています。
 いま、全国各地で、「国葬」に反対する市民によるデモやスタンディング、集会が広がっています。和歌山県海南市では26日午前7時からスタンディング。北海道釧路市では31日午後から行動を呼びかけています。

27日へ毎週デモを予定
 国会正門前では31日の午後6時から、総がかり行動実行委などが大行動を計画し、多くの参加を呼びかけています。
 9月に入ると、政府が「国葬」を開催しようとしている27日へ向けて、東京都内では毎週のようにデモが予定されています


法ねじ曲げる「国葬」 市民反対デモ
                       しんぶん赤旗 2022年8月29日
 
 滋賀県長浜市で28日、「安倍元首相の国葬反対」湖北市民集会(実行委員会主催)が開かれ、130人が参加しました。「国が特定の個人への弔意を強要することは民主主義と日本国憲法を毀損(きそん)する行為」だとする集会アピールを採択。「弔意を強制するな!」などのプラスターを掲げて市内をデモ行進しました。
 對月慈照(たいげつ・じしょう)実行委員長があいさつ。立命館大学教授の松宮孝明氏が「安倍元首相国葬と学術会議問題から今の政治を考える」と題して講演しました。
 松宮氏は、自身が当事者となっている日本学術会議の「任命拒否」事件と「国葬」事件には「共通する問題がある。それは法を軽視するということだ」と指摘。「民主主義の根幹をなす法治主義に反することを、岸田内閣が現在強行している。法がないように振る舞うという意味で『無法内閣』だ」と述べました。
 3人の市民が発言。日本共産党の石黒良治県委員長、社民党の小坂淑子県連代表、平尾道雄米原(まいばら)市長らがメッセージを寄せました。

 
 「安倍元首相の国葬に反対する市民デモ」が27日、神戸市三宮で行われ、400人が参加しました。憲法改悪ストップ兵庫県共同センターと「こわすな憲法!いのちとくらし!市民デモHYOGO」の共催です。
 東遊園地で集会が開かれ、元兵庫県弁護士会副会長の松山秀樹弁護士が発言。「私たちは何に反対しているか。法をねじ曲げて法律上の根拠もなく財政民主主義に反して予算を投入することと、市民の内心の自由が脅かされることです」と強調。国葬が憲法の理念にいかに反するかを、国葬に強く反対し撤回を求める県弁護士会会長の声明(26日)を引用して説明し、「国葬反対の声が大きくなることは一人一人の市民に自分の良心に従って行動していいと伝えることであり、非常に大きな意味がある国葬は憲法に違反するもので、国民に弔意を強制させないという一点で共同を」と訴えました。
 参加者は「安倍元首相の『国葬』中止を求めるアピール」を採択し、「アベ政治をたたえる国葬反対」「全国民に弔意を強制するな」とコールして繁華街をデモ行進。手を振る人の姿が多く見られました。