2022年8月4日木曜日

NPT再検討会議が開幕/岸田首相演説に憤る被爆者 保有国に条約履行迫れ

 10回核不拡散条約(NPT)再検討会議が1日、ニューヨークの国連本部で始まりました。初日の一般討論で発言した34の国・地域のうち10以上が禁止条約に言及し、核軍縮への交渉を義務付けたNPT第6条を実践するものとして歓迎しました
 バングラデシュのモメン外相は、「禁止条約はNPTを強化するうえで決定的な構成要素として役立つ」と強調し、アイルランドのノートン運輸相は「締約国会議の成果は禁止条約がNPT第6条を実践する道筋として価値を持つことを示した」と訴えました
 そんな中で岸田首相が行った演説について、被団協の佐久間邦彦理事長は記者会見で「締約国に核軍縮にむけた交渉義務を課したNPT第6条や核兵器禁止条約に一切ふれなかったと批判し広島の被爆者でカナダ在住のサーロー節子氏は「いつまでも米国に追従していては、首相が求める社会(核なき世界)は来ない」「被爆者の願いをどこまで真剣に考えているのか実感できない」と語りました。
 しんぶん赤旗の2つの記事を紹介します。
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核保有国に厳しい目 NPT再検討会議が開幕
                        しんぶん赤旗 2022年8月3日
【ニューヨーク=島田峰隆】第10回核不拡散条約(NPT)再検討会議が1日、ニューヨークの国連本部で始まりました。核兵器禁止条約が昨年1月に発効してから初めての再検討会議です。初日の一般討論で発言した34の国・地域のうち10以上が禁止条約に言及し、核軍縮への交渉を義務付けたNPT第6条を実践するものとして歓迎しました
 今回の再検討会議はウクライナ侵略を続けるロシアが核兵器で世界を威嚇し、米国や中国などその他の核保有国も核兵器の近代化や増強を図る緊迫した情勢のもとで開かれています。これらはNPT第6条や過去の再検討会議での全会一致での合意に反する動きです。核兵器禁止条約が始動し、6月の第1回締約国会議が廃絶への具体的な行動を提起した直後でもあり、これまでになく保有国に厳しい目が向けられる再検討会議になっています。
 グテレス国連事務総長は核保有国の動向を挙げながら「人類は今日、たった一つの誤解、判断ミスで絶滅する手前にある」と指摘。▽核兵器の使用に反対する過去77年間の規範を強化、再確認する ▽核戦争の危険の削減では不十分であり核兵器の廃絶こそが使われない唯一の保証である―ことなどを訴えました。
 再検討会議のグスタボ・スラウビネン議長(アルゼンチン)は「条約の義務を確実に実施することが不可欠だ」「このことは特に核軍縮の義務に関して重要だということを指摘せざるをえない」とくぎを刺しました。
 一般討論では各国が相次いで、ロシアのウクライナ侵略や核兵器による威嚇を批判しました。
 バングラデシュのモメン外相は、核兵器禁止条約第1回締約国会議が採択した宣言と行動計画に触れ、「禁止条約はNPTを強化するうえで決定的な構成要素として役立つ」と強調。アイルランドのノートン運輸相は「締約国会議の成果は禁止条約がNPT第6条を実践する道筋として価値を持つことを示した」と訴えました。
 各国がNPTの義務や禁止条約に触れて核保有国の責任を追及するなか、岸田首相は演説で第6条にも禁止条約にも触れませんでした。ブリンケン米国務長官は岸田氏の演説を「力強いメッセージ」だったと評価しました。


首相演説 憤る被爆者 NPT再検討会議 保有国に条約履行迫れ
                        しんぶん赤旗 2022年8月3日
広島県被団協理事長 佐久間邦彦さん
【ニューヨーク=石黒みずほ】核不拡散条約(NPT)再検討会議が開幕した1日、広島県原爆被害者団体協議会の佐久間邦彦理事長は、ニューヨークの国連内で記者会見しました。同会議で岸田文雄首相が行った演説で、締約国に核軍縮にむけた交渉義務を課したNPT第6条や核兵器禁止条約に一切ふれなかったと批判しました。
 佐久間氏は「岸田首相は被爆者の気持ちがわかっていない。被爆者は生きているうちに核兵器のない世界の実現を願っている」と述べ、「被爆国として核保有国に対し、NPT第6条と核兵器をなくすとのこれまでの合意の履行を迫ることが日本政府の役割だ」と指摘しました。また、岸田首相が言及した現実的なアプローチについて、「核保有国に迫らず、何が現実的アプローチだ」と批判しました。

米追従では廃絶できぬ カナダ在住 サーロー節子さん
【ニューヨーク=石黒みずほ】広島の被爆者でカナダ在住のサーロー節子氏は1日、岸田文雄首相が核不拡散条約(NPT)再検討会議で行った演説について「いつまでも米国に追従していては、首相が求める社会(核なき世界)は来ない」と日本政府の姿勢を批判しました。ニューヨークの国連本部で記者団に語りました。
 サーロー氏は、岸田氏が演説の冒頭で核なき世界にむけて「あらゆる現実的な措置を段階的に行わなければならない」と述べたにもかかわらず、核兵器禁止条約に一切触れなかったと指摘。「被爆者の願いをどこまで真剣に考えているのか実感できない」と語りました。
 世界の若者に核の実態を知ってもらうための基金の創設など、岸田氏が提案した行動計画に理解を示しつつも、政府自体の姿勢が問われていないと批判。「抑止論に基づいた米国の核政策を支持し、核のない世界を求めるというのは矛盾がある」と述べました。

 また、ロシアがウクライナ侵略で他国を核で威嚇していることについて、「核があるゆえに解決できない。もう(侵略開始から)5カ月もたち、人命が失われ続けている。核軍縮の必要性がより鮮やかに示された」と話しました。