2022年8月19日金曜日

徹底追及 統一教会 闇勢力編 (上)~(下)

 しんぶん赤旗に「徹底追及 統一教会 闇勢力編(上)(中)(下)」が連載されました。

 記事中には下記のようなエピソードが載っています
・公安調査庁の公表資料『内外情勢の回顧と展望』には、統一協会をかつて「社会通念とかけ離れた主義・主張」を掲げた「特異集団」としてカルト性が最も高い『A1』にランク付けされていたが、第1次安倍晋三政権になった07年の資料からは、「特異集団」の項目そのものが消えた。
公安調査庁職員だった西道弘氏が職場で、「統一協会はカルト集団なのに、なぜ当庁はああいうやつらと付き合うのでしょう」と述べた時、先輩職員から「何をいうか! あの人たちは共産主義とたたかっている立派な人たちで、ウチにもよく協力してくれているんだ」と言われた。

 3回分を一緒に紹介します。
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徹底追及 統一教会 闇勢力編(上)
 勝共連合と公安 〝汚れ仕事”担当
                       しんぶん赤旗 2022年8月16日
 東京膠近郊のターミナル駅近くにある喫茶店で、50歳がらみの男性2人が向き合っていました。
 色白で眼鏡をかけた小太りの男性が、もう片方の男性に1冊の雑誌を渡します。『世界思想』。統一協会(世界平和統一家庭連合)の政治団体「国際勝共連合」の機関誌です。
 渡された男性は、雑誌と引き換えのように、茶封筒を取り出し渡しました。封筒の中身は1万円札1枚です。『世界思想』の定価は1千円にもかかわらず‥‥
 封筒を渡した男性は、当時、公安調査庁職員だった西道弘氏。

情報提供料
 「情報提供料ですよ。1万円は資料代として公安調査庁に請求していたように思います。まあ『世界思想』なんて統一協会のプロパガンダで役にたちませんが」。西氏は少し甲高い声でそう証言します。
 相手の男性は何者か-。
 「勝共連合の地方組織の幹部でした。月に1回ぐらい会っていたかな。相手から連絡が来ることが多いが、こちらから『そろそろ会わないか』ということもあった。だいたい30分から1時間程度でした」
 勝共連合は統一協会が1968年4月1日に設立。統一協会は共産主義=悪魔と位置づけ撲滅の対象としています。勝共連合は反共謀略ピラの配布など、自民党が公然とできないような汚れ仕事を担当。まさに日本政治の間勢力です。
 勝共連合の男性は、統一協会の開祖、文鮮明を「文先生」と呼び、妻の韓鶴子・現総裁ら文一族を「様」付けで呼んでいたといいます。「統一協会の信徒に間違いないですね」と西氏は振り返ります。
 西氏は公安調査庁の出先機関にいた十数年前に業務で統一協会関連も担当していました。
 公安調査庁とは国民に対して日常的にスパイ活動をしている政府の組織。盗聴、脅迫、金品の提供などによるスパイエ作といった違法で卑劣な手法をとってきました。とくに日本共産党や民主団体を目の敵として監視している、いわぱ秘密警察″です

大衆協力者
 西氏に質問しました。
 -スパイ組織が勝共連合=統一協会のメンバーと会ってどんな話をするのか。
 「相手は地元の共産党の動向を話していました。地方選挙の情勢とかでしたね。白罠党国会議員の選挙,を手伝ったとかも話していました。正直たいした情報はないのです」
 -そでも会っていた?
 「『大衆協力者』という位置づけでした。企業の危機管理担当や官公庁の労務担当とかと同じです」
 統一協会は公安調査庁にとってどんな利用価値があったのかー。西氏はこう続けます。
 「公安調査庁にとって『反共』という点で統一協会は友好団体みたいなものなのですよ」
                        (つづく)(統一協会取材班)

徹底追及 統一教会 闇勢力編(中)
勝共連合と公安 「反共」でずぶずぶの関係 消えた特異集団
                       しんぶん赤旗 2022年8月17日
 東日本地域にある公安調査庁の出先機関。部署内で幹部らが、オウム真理数を調査する段取りなどを議論していました。
 「こんちは」。突然、部外者の男性が気軽な様子で部屋へ入ってきました。
 議論を横で聞いていた公安調査庁職員作・西道弘氏は、男性を外につれだそうと走り寄ります。あわてていたためか、西氏は滑って転倒。上の前歯を折ってしまいました。
 入室してきたのは、国際勝共連合の地方組織の幹部。勝共連合は、統一協会(世界平和統一家庭連合)の開祖、文鮮明がつくった反共謀略集団です。

部外者入室
「部外者が勝手に入ってくることなんてありえない。そんなことできるのは、この男性だけだった。私が統一協会を担当する前は、よく部署内にきていた。ずぶずぶの関係だった」と西氏は振り返ります。
 公安調査庁の公表資料『内外情勢の回顧と展望』では、かつて「社会通念とかけ離れた主義・主張」を掲げた「特異集団」として統一協会を指す記述がありました。それが2007年のの資料からは、「特異集団」の項目そのものが消えます。当時は第1次安倍晋三政権でした
 「以前、内部資料に『特異集団』という項目があった。統一協会は、たしか『A1』と記されていた。アルファベットと数字が若いほどカルト性が高いということだったと思う。『回顧と展望』から消えた経緯は知らない」
 公安調査庁自らが「特異」とする団体となぜ、ずぷずぶの関係となるのかー。
 西氏はかつて先輩職員と宿直勤務をしていたとき、統一協会についてこんな議論になったと振り返ります。
 西氏 「統一協会はカルト集団です。なぜ当庁(公安調査庁)はああいうやつらと付き合
    うのでしょう」
 先輩職員 「何をいうか!あの人たちは共産主義とたたかっている立派な人たちで、ウチ
    にもよく協力してくれているんだ!」
 統一協会の政治団体である勝共連合は、単なる「反共」ではなく、共産主義の思想そのものを撲滅しようという団体です。

密接不可分
 統一協会の田中富広会長は10日の記者会見で「協会の基本姿勢は共産主義との対峙(たいじ)だ。その視点から言うと自民党の議員の方々がより多く接点を持つことがある」と本音を語りました。
 勝共連合初代会長の久保木修己・統一協会初代会長(当時)は、さらに踏み込んで勝共連合の役割を著書に記しています。
 -勝共運動は「神主義」を基本としている。単なる政治運動ではなく、宗教理念をベースにした国民教育運動だ。共産主義の本質は神への反逆思想である…。
 勝共運動と自民党の支援は、統一協会の理念や活動と密接不可分だというのです。
 西氏ははっきりとした口調でこういいます。
 「社会問題になった霊感商法を半世紀も続けている団体だと知ったうえで公安調査庁や自民党は統一協会と付き合っている。左翼勢力に対して共闘する仲間意識がある。『反共』であればなんでもいいわけです」 (つづく)


徹底追及 統一協会 闇勢力編(下)
岸信介元首相と懇意 “勝共運動飛躍の契機”
                       しんぶん赤旗 2022年8月18日
 統一協会(世界平和統一家庭連合)と自民党をつなぐ“原点”ともいうべき場所があります。
 気温が35度を超える猛暑のなか、東京・渋谷駅から坂道を15分ほど上りました。汗が額から流れ落ちるころに、渋谷区南平台町につきます。道玄坂上のバス停手前に路地を2回曲がると、改装中の白いマンションが見えます。
 かつての地番は南平台45番地。岸信介元首相の自宅があった場所です。
 1964年11月1日、統一協会は、岸宅に隣接した邸宅に本部を構えました。
 協会関係者らがまとめた『日本統一運動史』は、当時の本部についてこう記しています。
 「戦後の岸内閣の時代に、首相公邸として使用されていました」
 マンションに住む男性に尋ねると「岸元首相の自宅がここにあったのは知っています。統一協会本部もあったの? それは知らないなあ」と言います。
 南平台の協会本部にいったことがある女性に話を聞くことができました。和歌山県に住む小中泉さん(79)=仮名=です。小中さんは大学の卒論を書き終えた22、23歳のころ、「キリスト教に関心がありませんか?」と女性から声をかけられました。それをきっかけに南平台の本部に数回通ったといいます。
 「だれかに『隣は岸元首相のお宅だ』と聞いてびっくりしました。中庭でバレーボールをしていたから、敷地は広かったように思います」
 統一協会初代会長の久保木修己氏は著書で、岸氏が協会本部にしばしば足を運んだとしてこう回想しています。「隣同士のよしみということもあったかもしれません」
 ただ実際には、“隣同士”の関係を超えた深い付き合いでした。
 岸氏は73年4月8日、統一協会にきてこんなメッセージを発しています。
 ―ここにくるのは3回目。右翼の大物だった笹川良一氏に、信者たちは日本を「救うべき大きな使命を持っている青年だ」などと聞いた。久保木会長の説教は情熱がこもっており「非常に頼もしく私は考えた」…。
 文字通りの大絶賛です。68年に岸氏は国際勝共連合の発起人に名を連ねます。勝共連合は、統一協会の政治団体でもっぱら反共謀略活動を展開する組織です。
 韓国の朴正煕(パク・チョンヒ)大統領(当時)に久保木会長が面会(70年)する際には、岸氏が自筆で推薦文を書いたといいます。
 久保木氏は岸氏の貢献についてこう書き残しています。
 「岸先生に懇意にしていただいたことが、勝共運動を飛躍させる大きなきっかけになったことは間違いありません。国内においても国外においてもそれは言えることです」
                                   (おわり)
                    ◇
 闇勢力編はいったん終わりますが、連載は今後断続的に掲載します。