2022年8月3日水曜日

皇帝のいない8月 統一教会問題の政局化と台湾有事工作の不透明化

 世に倦む日々氏が掲題の記事を出しました。ここで「皇帝」とは安倍晋三氏のことで、過日唐突に石破茂氏が議員団を引き連れて台湾の蔡英文総督と面会したのは、米国の要求で安倍氏がその任に就く予定だったのが、不慮の死を遂げたため石破氏がピンチヒッターのなったものです。米国が意図する台湾有事への段取りの一つと見られます。

 ペロシの訪台も同じ発想のものですが、記事を書く時点では実現しない可能性の方がいくらか大きかったため、タイトルは「台湾有事工作が不透明化」というニュアンスになっています。しかし実際にはペロシは2日深夜に台湾入りを果たしました(別掲の記事参照)。
 かくして米国は自国の利益のために台湾有事を目指して、執拗にその歩を進めているわけです。もしもそうなれば日本の主要都市は灰燼に帰すことになるのに、日本の極右の面々は兎も角として、多くの人たちが何の反対も示さないのはどういうことなのでしょうか。
 世に倦む日々氏は、いずれにしても日本の「皇帝のいない8月」は、統一教会問題で大荒れのところにコロナとインフレが加わり、台湾有事どころではないとしています。
 そしてこのまま岸田政権の支持率が下がり続け、35%を切れば安倍晋三のシンボルの凋落は決定的となり、永田町の権力構造を再編させるエネルギーが生れるとなるとして、「そこへ辿り着くためには、麻生太郎と菅義偉を蹴落とす必要があり、 麻生太郎・菅義偉の統一教会との関係証明が政局のカギとなる」と見ています。
 なるべく多く、著名な大物議員の壺⇒統一教会関係証拠を発掘し、切れ目なくマスコミで曝して話題を拡声し、世間の関心を肥大化させることだ。そして、自民党の中から安倍批判の声を起こさせ、波紋と共鳴を広げさせ、安倍レジーム崩壊へ追い込むことである」と。
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皇帝のいない8月 - 統一教会問題の政局化と台湾有事工作の不透明化
                          世に倦む日々 2022-08-01
週末(7/30-31)も統一教会の問題がテレビ報道の主役となった。TBSのサンジャポが大きく取り上げ、日テレのバンキシャでは自民党元参院議員の伊達忠一の証言に焦点が当った。電話取材に応じた伊達忠一は、2016年の選挙で安倍晋三に統一教会の組織票を依頼していた経緯があったことを明らかにした。伊達忠一がその返礼に2020年に韓国で開催された統一教会の集会に出席し、壇上でスピーチした映像も紹介された。平日のミヤネ屋同様、日テレのこの問題への集中度が熱く鋭い

31日の夕刻、共同通信の世論調査が発表され、岸田内閣の支持率が12ポイント下がって51%となり、また、国葬についても反対53%、反対45%となり、反対が賛成を上回る結果となった。マスコミの世論調査では初の事態である。今回の共同の調査には統一教会関連の質問は入ってない。が、一週間後のJNNの調査には必ず含まれるはずだ。無論、国葬の是非も入る。内閣支持率の下落も含めて、どのような数字になるか大いに注目される。コロナ禍第7波の影響も重なるので、大幅な支持率低下が予想される

安倍晋三の国葬予定日は2か月後の9月27日。9月前半とされる改造日程、そして臨時国会の開幕を睨んで、統一教会をめぐる問題はどんどん加熱し、自民党に対する世論の批判が高まる進行と傾向は間違いない。それは同時に安倍晋三への国民の評価が失墜し、安倍晋三の存在がプラスシンボルからマイナスシンボルにスイッチする移行過程でもある。このまま、先週暴露された山本朋広の「マザームーン」の陶酔と絶叫のような証拠映像が次々とテレビに出続けたら、2か月後の国葬催行は冗談のような絵になる。

マスコミ論者は、世論調査結果を後追いするコメントを吐いてギャラを稼ぐ業界商売人だから、2-3週間後には全員が国葬反対の主張に変わっていておかしくない。支持率が下がる中、聞く力がモットーの岸田文雄はどう出るだろう。簡単に国葬を先送りしたら、党内保守派の逆鱗を買い、安倍シンパの保守系論者から袋叩きされる。だが、世論に抗して国葬を強行した場合は、支持率が30%台に落ちる。秋から冬、来年にかけて値上げラッシュで国民生活はきわめて深刻な事態が想定され、岸田文雄の政権運営は窮地に陥るはずだ。

先週の政局の動きを整理しよう。大きな事件だったのは、甘利明の追悼演説が飛んだハプニングである。マスコミでは特にニュースになってないが、分析と考察を要する事件だ。甘利明を推挙したのは安倍昭恵だと言われている。この局面でキーパーソンであるはずの妻昭恵の指名にもかかわらず、党内から反発を受けて阻止された。甘利明だけでなく昭恵がいかに人望がなく、安倍派内に影響力がないかの証左であり、この意外な展開には驚かされる。鶴の一声にならなかった。安倍晋三に近かった者ほど、昭恵の実像をよく知っていて、昭恵の政局介入に鼻白むのだろう。

が、甘利明を推したと思われる人物はもう一人いる。副総裁で3Aの一人である麻生太郎だ。派内に重鎮子分として甘利明を飼っている。マスコミは、なぜかこの一幕に麻生太郎が関与している点に光を当てない。安倍派の面々は、甘利明が追悼演説に名指しされた動きを見て、すぐに麻生太郎の影を察知し、安倍亡き後の党内の主導権を握ろうとする野望を嗅ぎ取ったのだろう。昭恵を前面に立てた作戦だったが、裏で操っている黒幕が誰であるかは明白だ。不快に感じた安倍派は結束し、すぐにこの動きを迎撃し封殺、甘利明は恥をかいて失脚の顛末となった。

自民党内は盤石ではない。権力の中心であり方向性を指示していた安倍晋三が欠けると、自民党の船は動揺して針路を見失う。エンジンの出力が下がって減速し迷走する。リーダーがいない。このまま政権の支持率が下がり、自民党の支持率が下がると、党内は次第に不安定になり、相互の牽制と潰し合いが始まるだろう。岸田文雄は、政策的には180度違うはずのネオリベの首魁たる菅義偉を副総理に起用し、政権基盤を安定化させようと目論んでいるという噂がある。これもまた、麻生太郎の思惑からの観測気球の政治(マスコミ辞令)と思われる。

統一教会と自民党との繋がりを示す醜聞シリーズで、現在までマスコミの表面で踊った議員は小物がほとんどである。初めて名前を知った者が多い。安倍派にフォーカスが当っている。が、大物の菅義偉や麻生太郎に、統一教会との関係を示す証拠の事実がないわけがない。思想的に強烈な同志である反共右翼の野獣だからである。他の小物議員のように、票が欲しいから、運動員が欲しいからという動機からではなく、理想を共有する反共同志として相互に接近し癒着していておかしくない。菅義偉と麻生太郎の「壺エビデンス」の出現に期待する。

先週28日、石破茂が台湾を訪問し蔡英文と会談、「台湾有事への備えの必要性を訴え」る発言をして両者一致した。東アジア情勢として非常に大きなニュースだが、日本のマスコミは大きく報道しなかった。今回、石破茂は超党派の議員集団で訪台しているけれど、安倍晋三の代役の仕事である。安倍晋三が参院選後にこの役を実行する計画だった。生前の報道では、安倍晋三のスタンドプレーの政治のようにマスコミは報じ、安倍晋三が引っ張って「台湾有事に備える日台連携」へ持ち込んで行くように演出していたが、実はそうではなかった事実が窺える。

国策として、機関決定として、自民党政権の外交方針として、安倍晋三の訪台が準備されていて、そこで情勢を興し、世論を盛り上げ、秋の改憲政局と防衛3文書に繫げる戦略が布石されていたことが分かる。安倍晋三が死んでも事はボツにならず、石破茂がピンチヒッターで任務を果たした。予定されていた安倍訪台は、安倍個人の行動ではなく、アメリカが差配し、日米台で調整して中国に挑発と打撃を与えて、戦争への間を詰める策略だったのだ。ペロシの訪台もそれに組み合わせた動きであり、相乗効果を狙った機動的な連携作戦だろう。アメリカは、この夏を台湾有事に向けた本格化工作を仕掛ける段階に設定していた。

が、中国が激しく反発した影響なのか、ペロシ訪台は米政権内部で腰砕けとなり、ミリーが反対を表明、サリバンも慎重な姿勢へと後退する。軍の意思はミリーが、CIAの意思はサリバンが表明している。ホワイトハウスの中でペロシ訪台に拘ったのは、どうやらブリンケンのようで、他に考えられない。ということは、ブリンケンとサリバンが割れたことを意味する。初めての二人の齟齬の瞬間だ。軍もCIAも「責任がとれない」と引いたのだろう。現時点(8/1)でペロシの所在と旅程は不明だが、仮に訪台が挫折したとなると、ブリンケンの政権内での威信が揺らいだ意味になる。

こうした米側内部の綻びが、石破訪台を日本のマスコミが大きく扱わなかった背景にあり、台湾有事工作の本格化が躓いた理由だと思われる。だが、それもこれも、安倍晋三という要石が失われた変事が原因であり、ブリンケンが設計した工程表に穴が空いた不具合の帰結に他ならない。衝撃的なテルミドールの政変が米日を襲い、思い描いていた8月とは違う8月が到来した。皇帝のいない8月。アメリカは、早く皇帝の代役を探して据えないといけない。けれども、その日本の政治は、統一教会問題で大荒れになっていて、そこにコロナとインフレが加わり、台湾有事どころではない不透明な状況と化している。

熱月の変事がなければ、今頃、櫻井よしこらがテレビに出て、安倍訪台の意義を喧伝し、日本の世論を台湾有事モードへ扇動する算段だったのだろう。ヌーランドの訪日とNHKでの檄も、その旗振りの一環だったに違いない。しかし、櫻井よしこはテレビに顔出しできない。いわゆる壺文化人、すなわち統一教会シンパだからであり、放送で関係を釈明しなければならない立場だからだ。他の安倍系右翼文化人も同様であり、あとで関係の証拠が上がったら困る者は、今、容易にテレビで口を開けない。ほとぼりが冷めるまで逼塞する必要がある。が、その間も、統一教会問題の蔵出しネタが次々と出る。統一教会と国葬をめぐる世論調査の追討ちが続く。

岸田政権の支持率が35%を切ったら、紀藤正樹らが求めるところの、国会での統一教会問題調査委設置の運びになるだろうか。楽観的で希望的な観測だが、それが実現する流れを切に望みたい。そこまで行けば、安倍晋三のシンボルの凋落は決定的となり、安倍派なる集合は有名無実になるだろう。安倍晋三を否定する磁力と磁場が発生し、永田町の権力構造を再編させる電流が走るだろう。その図を目指したい。そこへ辿り着くためには、麻生太郎と菅義偉を蹴落とす必要があり、甘利明と同じ永久失権の境遇に揃ってもらわないといけない。麻生太郎・菅義偉の統一教会との関係証明が政局のカギとなる。

なるべく多く、著名な大物議員の壺関係証拠を発掘し、切れ目なくマスコミで曝して話題を拡声し、世間の関心を肥大化させることだ。そして、自民党の中から安倍批判の声を起こさせ、波紋と共鳴を広げさせ、安倍レジーム崩壊へ追い込むことである。