2022年8月24日水曜日

旧統一教会が韓国で“邪教扱いされない”ワケとは?

 日刊SPA!が、「旧統一教会が韓国で“邪教扱いされない”ワケとは? ~ 」という記事を出しました。エンタメ系企業を経営し日韓問題に明るいオ・ジホ氏(仮名・49歳)の見解を紹介したもので、一度は聞いておきたいテーマです。

 旧統一教会の正式名称は「世界基督教統一協会」で、1990年代以降は「世界平和統一家庭連合」に改名しました(日本では15年に)
 韓国のキリスト教徒の数は人口比30%(日本は1%)で、その内20%がプロテスタント系で10%がカトリック系といわれています。プロテスタント長老会議で1971年に既に統一教会には疑惑の目を向けられ、1979年には明確になり、2008年に「異端の宗教」と宣告されました。
 「基督教」を謳う一方で、文鮮明や韓鶴子を神のように崇めるのですから当然の成り行きです。
 そんなことから信者数は公称30万人に過ぎず、現在も大々的な布教活動ができない状況です。
 韓国ではむしろ宗教団体ではなく多角的な企業体あるいは事業団体として知られています。その経済的基盤は日本から送金される莫大な献金の筈で、その経済力を用いて韓国の政界にも浸透している点は日本と同じです。以下に紹介します。
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旧統一教会が韓国で“邪教扱いされない”ワケとは?
 「食品ビジネスの団体という認識」
                           日刊SPA!  2022/08/23
◆本部がある韓国での知名度の低さ
 旧統一教会(現・世界平和統一家庭連合)は、本国・韓国でなぜ社会問題化しないのか? 安倍晋三元首相の射殺事件以降、日本では教団に対する批判の声が日増しに強くなっている。しかし韓国で旧統一教会のことが報じられるケースは稀で、国民の関心も日本とはかなりの温度差があるようだ。こうした背景について、エンタメ系企業を経営し日韓問題に明るいオ・ジホ氏(仮名・49歳)は「安倍さんの件があったので韓国人も知るようになったけど、それ以前は統一教会なんて存在もろくに知られていなかった」と語り出した。
「無作為に道行く人に聞いたら、おそらく10人中5人くらいしか統一教会の名前を知らなかったんじゃないですかね。合同結婚式を知っているのなんて10人中3人。霊感商法が日本で叩かれていることを知っているのは10人中1人いるかどうかでしょう。韓国国内だと、統一教会は“悪徳カルト教団”というより“食品ビジネスに積極的な変わった宗教”というイメージが強いんです」

◆韓国では細々とした布教活動
 旧統一教会には高麗人参茶や炭酸ジュースを製造する一和(イルファ)という関連企業が存在する。教団の創始者・文鮮明の在命中は城南一和(現・城南FC)というプロのサッカーチームも所有していた。日本で旧統一教会の問題がここまで大きく報じられていることに、多くの韓国人は「なんで?」と首をひねっているのだという。
韓国では長老派教会などのプロテスタントが非常に強くて、政界や財界にも影響力が大きい。日本と同様に韓国にもインチキ臭い新興宗教はたくさんあるんですけど、キリスト教系に関してはすぐさま社会問題化して潰されちゃうんですよ。問題になっているのは、むしろ占いとかに絡んだシャーマニズム系の新興宗教が多い。
 たとえば統一教会って他のキリスト教団体と同様に聖書を扱うんですね。だけど聖書の解釈がデタラメで、文鮮明や韓鶴子を神様みたいに崇めるじゃないですか。生きている人間を神として扱うなんて、伝統派のクリスチャンからしたら言語道断。絶対に許せないわけです。それゆえ統一教会は大々的な布教活動ができないし、実際、信者数も減っている。モルモン教が韓国で全然広まらないのも同じような理由ですね」
 侵略戦争を行った罪深いエバ国家・日本は、アダム国家・韓国に尽くさなくてはいけない─ 。このような旧統一教会の教えは、一連の報道によってよく知られるようになった。だからこそ、日本人ばかりが霊感商法や高額献金の餌食になっているというわけだ。
 ちなみに韓国国内における旧統一教会の献金実態は、他のキリスト教組織とさほど変わらないとされる。つまり給料の10分の1程度が目安で、それも強制ではなく自発的に行われるのが通例だという。オ氏もこうした事実を認めつつ、日韓におけるキリスト教の社会的影響力の差にも踏み込んで言及する。
「もし統一教会が韓国国内で日本と同じように悪質な資金集めを進めたら、速攻で社会から抹殺されたはず。信者が伸び悩みつつもまだ存続しているのは、目立った動きができなかったからとも言えます。逆に韓国人からすると、なぜ統一教会が日本で反社会的なことばかりやっているのに許されてきたのか、そっちのほうが理解に苦しみますね」

◆韓国でのヘイトスピーチが報道されないワケ
 現在、日本のメディアでは旧統一教会関連のニュースが連日大きく報じられている。一例を挙げると、8月18日にはソウルで統一教会の日本人信者が4000人ほど集まって「ヘイトスピーチをやめよ!」「信教の自由を妨害するな!」と批判報道に対する反対デモを決行。その様子はワイドショーでも生中継されたほどだが、肝心の韓国国内ではまったくニュースにもならず黙殺されていたという。
「統一教会系の『世界日報』も完全無視していたくらいだから、いささか異常だと思いますね。通常、こうしたデモは事前に各メディアへ情報を伝えておくものなんですよ。自分たちに伝えたい主張があるんだから、報道を通じて世にメッセージを拡散してもらいたいと考えるわけで。でも今回のデモは、韓国社会で話題になると教団としては都合が悪い。極力、大ごとにしたくないんです。あくまでもアピールは日本向けであって、韓国国内では今までどおりコソコソと活動していくつもりなのでしょう」

◆韓国に嫁いだ日本人信者が日本語の先生を
 さて、ここまでフラットな視線で解説してくれたオ氏だが、実は個人的にも旧統一教会に対しては複雑な思いを抱えているのだという。普段から日本人相手にビジネスを行う機会が多い彼は、日本語も極めて堪能。しかし最初に日本語を教えてくれた“先生”は、なんと旧統一教会の敬虔な信者だったそうだ。
「あれは1992年頃でしたかね。学生だった僕は日本の文化に興味を持ち、日本語を勉強したいと考えていたんです。そこに現れたのが合同結婚式で韓国人と結婚したという日本人女性。僕の地元・大邱(テグ)は工場ばかりあるような街だから、今でこそ東南アジア系の出稼ぎ労働者が多いんですけど、当時は外国人を見かけることなんてほとんどなかった。そんな彼女が日本語を教えてくれるということで、僕も何ヵ月か教会に通いましたよ。教義自体にはまったく興味もなかったですけど(笑)。
 今考えると、彼女も不安だったと思うんですよね。全然勝手がわからない異国の土地に連れてこられて、統一教会系の企業で働かされていましたし。それもほぼ無償で、ボランティア状態だと言っていた。果たして今はどこで何をして過ごしているのか、たまに思い出して切なくなります」
 オ氏は「旧統一教会=悪の宗教=韓国」といったイメージが日本で広まり、復調の兆しを見せていた日韓関係が再び悪化することを懸念している。韓国の世論が旧統一教会を支持しているわけでは決してないし、相手にもされていないのが実情だと繰り返す。
「たしかに統一教会は韓国で生まれた宗教団体です。でも韓国国内で表立った布教活動ができないものだから、途中から日本を中心とした海外で組織を拡大させていった印象があるんですよ。そのへんはLINEと似ているかもしれない。LINEも韓国企業が作ったんだけど、すでに類似サービスのカカオトークが普及していた韓国国内ではまったく浸透しなかった。そのLINEが日本を含めたアジア諸国で爆発的に広がっていき、韓国人はビックリしたんですよね」
 日本人から莫大な資金を吸い上げている旧統一教会側からすると、霊感商法が社会問題化した80年代と同様、社会から猛批判されている現状は由々しき事態。この批判の波が韓国にまで届いたら、たまったものではないだろう。旧統一教会の韓国国内での動きにも注視していきたい。