2018年6月15日金曜日

高プロで“ヤラセ調査”発覚 厚労省の姑息なアリバイ作り

 労働基準法をはじめとする労働法は全て労働者の権利を守るためのもので、経営者の儲けを増やすためのものではありません。
 労働法に詳しい上西充子法政大学教授は、NHKの番組で政府の「働き方改革法案」について
これは労働基準法の改正で、労働者が労働法の保護の外に放り出されるという制度。『使用者にこうさせてはならないという規定を外してしまうので、使用者に対する縛りが外れるという基本的なところを理解する必要がある」
と述べています。
 そもそも法案には、「立法事実(立法の理由)」が必要です。「経営者(使用者)にとって都合が良いから」というのは勿論理由にはならず、「立法(または改正)が労働者の利益につながること」を説明する必要があります。
 
 裁量労働制は、政府側が根拠となるデータを捏造していたことが明らかになって上程が見送られましたが、「高プロ高度プロフェッショナル制度でも同じようなデッチ上げが行われている可能性が強いと言えます。
 野党に「立法事実」を追及された政府は、慌てて12件のヒアリング調査書を提出しました。根拠はたった12件のヒアリング調査書とは驚くべきお粗末さですが、その12件も前身の労基法改正案提出前に実施したのは僅かにだけで、あとは全て高プロ案が国会に提出された後で行ったものでした「理由の後付け」もいいところで、ヒアリング対象は企業が行い、9件については人事担当者がそのヒアリング現場に同席していたということです。話にならないというしかありません。
 
 参院厚生労働委員会は13日、川越市で地方公聴会を行いましたが、経営者の公述人が「高プロ制度を望む社員はいない」と発言するなど4人の公述人から賛成意見はなく、この高プロ制度(残業代ゼロ制度)の削除や徹底審議を求める意見が相次ぎました。
 
 日刊ゲンダイ、しんぶん赤旗、レイバーネットの記事を紹介します。
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高プロで“ヤラセ調査”発覚 厚労省の姑息なアリバイ作り 
日刊ゲンダイ 2018年6月14日
 安倍政権は何が何でも“現代の奴隷制度”を導入する気だ。裁量労働制をめぐる捏造データに続き、現在国会審議中の「高度プロフェッショナル制度」(高プロ)でもヤラセ調査が明らかになった。厚労省は「高プロは日本に必要な制度」と主張する補完根拠として民間企業などのヒアリング調査を挙げているが、ナント! 関連法案が国会に提出される前に調査した対象者がたった1人だったのだ。
 
 一部の専門職を労働時間規制から外す高プロは、捏造データで国会上程が見送られた裁量労働制よりも「悪質制度」といわれる。厚労省は2015年4月3日に提出した労働基準法改正案で創設を目指したものの、17年秋の衆院解散で廃案に。そして今年4月、再び「働き方関連法案」に盛り込む形で再提出していた。
 ところが、12日の参院厚労委の理事会に開示された資料によると、厚労省が高プロの可否などについてヒアリングをした計12人のうち、前身の労基法改正案提出前に実施したのは15年3月31日の1人だけ。他は同年5月11日が2人。今年1月31日が6人で、2月1日が3人だった。つまり、11人は高プロ案が国会に提出された後だったのだ
 
 法律を制定するのであれば、その法律が必要という合理性を支える社会的事実「立法事実」が不可欠だ。当然、基礎資料となるデータやヒアリングは重要なファクトになる。法案を国会提出した後で、ムリヤリ屁理屈を並べ立てるなど言語道断だ。
 
■国会炎上当日と翌日に
 6人にヒアリングした1月31日は、参院予算委で加藤勝信厚労相が「働く人のニーズを把握しているのか」「高プロについての意見を聞いた記録があるのか」と野党に厳しく追及され、シドロモドロになっていた当日だ。国会で炎上した当日と翌日に慌ててヒアリングしたとしか思えないし、「ちゃんと声を聞きましたよ」という“アリバイづくり”にしか見えない。どう考えても高プロの根拠は“ゼロ”だろう。労働問題に詳しい上西充子法大教授はこう言う。
「そもそも、ヒアリングの対象者が12人というのは、あまりにも少なすぎます。その上、対象者のうち9人は、ヒアリングの際に会社の人事担当者が同席しています。そんな状況で対象者が本音を語れるとは思えません。高プロ制度の必要性を示すヒアリング結果は、“ヤラセ”に近い形で作られたのではないか。そう疑われても仕方ありません。政府の『導入ありき』を許していると、労働者の働き方は破壊されてしまいます」
 
 ウソとインチキまみれの制度なんて絶対、成立させたらダメだ。
 
 
「残業代ゼロ」賛成なし 埼玉・川越 「働き方」法案 地方公聴会
会社社長「社員は望まない」
しんぶん赤旗 2018年6月14日
 政府・与党が「働き方改革」一括法案の早期採決をねらう中、参院厚生労働委員会は13日、埼玉県川越市で地方公聴会を行いました。残業代ゼロ制度(高度プロフェッショナル制度)について経営者の公述人が「望む社員はいない」と発言するなど4人の公述人から賛成意見はなく、残業代ゼロ制度削除や徹底審議を求める意見が相次ぎました。日本共産党から倉林明子議員が質問しました。
 
 三州製菓の斉之平(さいのひら)伸一社長は、女性社員のアイデアで商品を開発しており「女性は残業をゼロにしないと力を発揮できない」と時短の取り組みを紹介。残業代ゼロ制度は、「該当する社員もいないし、社員が望むこともまったくない」と導入の考えがないとしたうえで「過労死につながらないよう歯止めはお願いしたい」と懸念を述べました。
 
 連合埼玉の佐藤道明事務局長は、「長時間労働を助長する高プロは削除を強く求める」と強調しました。
 
 高木太郎弁護士は、「加藤勝信厚労相は、高プロで労働時間を労働者が決められるなどと答弁しているが、法文に規定がないのに省令で可能なのか。案文を示して審議すべきだ」と指摘しました。
 
 倉林氏は残業代ゼロ制度の欠陥を質問。高木弁護士は「休日年104日の社内規定をつくりさえすれば、実際に休ませなくても裁判で合法と判断される危険性がある」と警鐘を鳴らしました。
 産業医経験のある労働衛生コンサルタントの竹田透氏は、「長時間労働の面接で、事後措置を放置する事業主もいる」と指摘。法案で規定が強化されるものの、確実に残業が止まるものではなく、残業代ゼロ制度の残業100時間での医師面接では過労死の危険性を取り除けないことが分かりました。
 
 
猛毒の過労死殺人法案「高プロ」通すな!〜国会前で数百人が抗議
レイバーネット 2018年6月14日
 
 「私たちは猛毒の過労死殺人法案と呼ぶことにしました」。定額働かせ放題、奴隷労働、過労死促進法と言われてきた「高プロ」(高度プロフェッショナル制度)にこんな名前もついた。6月14日、参院厚労委員会で高プロを含めた「働き方改革一括法案」の審議があり、強行採決が懸念されていた。昼の議員会館前には「雇用共同アクション」の呼びかけで、全労連・全労協の労組を中心に数百人が集まり、高プロ絶対反対の声を上げた。
 
 厚労委員会の倉林明子議員(共産党/写真)は、「衆院でもボロボロだったが、参院にきてさらに法案の前提になるデータの間違いが次々に発覚している。立法の前提が崩れている。廃案にするしかない」と強くアピールした。パートを組織している生協労連の女性は、「高プロだけでなく“同一労働同一賃金”も大問題。差別を温存するパート法の仕組みがそのままだ。ウソだらけの安倍さんには辞めてほしい」と怒りをぶつけた。この日の採決はなかったが、次の19日の委員会が心配されている。雇用共同アクションは廃案を求めて、運動を強めていく方針だ。(M)