トランプ大統領は22日、朝鮮を「尋常でない脅威」だとして、さらに1年間「制裁」を続けると述べました。中国に加えて韓国とロシアが国境を越えたエネルギー・プロジェクトを推進し、自由貿易協定に関する話し合いを始めるなかで、そうした計画を潰し、米国が朝鮮半島の問題で主導権を握るための判断と見られています。
トランプ氏はつい先日まで米朝の宥和を強調していたのに「変転ただならない」という感じですが、それこそが米国の本性であり、また自己中心のトランプ氏の本性なのでしょう。
米国は現に理不尽な対ロシア経済制裁を継続していますが、敵視している国を破壊するためには非道な手段であろうとも、それを採用することに躊躇しません。
櫻井ジャーナルが米国のそうした歴史について語りました。
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韓国大統領は露国と朝鮮問題や経済分野での連携を表明
米大統領は制裁継続へ
櫻井ジャーナル 2018年6月24日
ドナルド・トランプ米大統領は6月22日、朝鮮を「尋常でない脅威」だと表現、さらに1年の間「制裁」を続けるという。大統領は6月12日にシンガポールで朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長と会談、その翌日に朝鮮からのアメリカに対する核の脅威はなくなったとツイートしていたが、早くも軌道修正したようだ。朝鮮半島の問題で主導権を握れそうにないとアメリカ政府は判断したのだろう。
6月22日には韓国の文在寅大統領がロシアを訪問してウラジミル・プーチン露大統領と会談している。その際、両国は平和的な朝鮮半島の非核化を目指すことで一致、国境を越えたエネルギー・プロジェクトを推進し、FTA(自由貿易協定)に関する話し合いを始めることで合意した。この計画を潰すためには、朝鮮に対する「制裁」を各国に続けさせるしかない。
トランプ政権に限らず、アメリカの歴代政権は朝鮮を軍事的な脅威だと考えていなかっただろう。アメリカと朝鮮を比べた場合、軍事力も経済力も圧倒的にアメリカが優位だということは言うまでもないことで、朝鮮から戦争を仕掛ける状況にはない。アメリカの先制攻撃に対する反撃としても核兵器は有効でなく、例えば、特殊部隊を潜入させてアメリカ軍が占領している日本の原発を破壊した方が効果的だ。ターゲット国へ工作員を潜入させ、インフラに爆弾を仕掛けておくということも考えられる。
ネオコンを始め、アメリカ支配層の内部にはシンガポールでの会談に反対する勢力が存在、その主張を有力メディアは伝えていた。リビア・モデルの話も米朝会談を壊すためにのものだろう。アメリカがイラクを先制攻撃した2003年にリビアは核兵器や化学兵器の廃棄を決定したが、アメリカは約束を守らずに「制裁」を続け、2010年にはバラク・オバマ大統領がムスリム同胞団を使った侵略計画(PSD11)を作成、「アラブの春」という形で実行に移された。その結果、リビアは侵略され、破壊、殺戮、略奪で現在は暴力が支配する破綻国家だ。リビア・モデルとは、朝鮮をリビアと同じようにしてやるということにほかならない。
トランプ大統領は「ドイツ・モデル」を考えていたかもしれない。東西ドイツが統一される際、アメリカの国務長官だったジェームズ・ベイカーはソ連のエドゥアルド・シェワルナゼ外務大臣に対し、統一後もドイツはNATOにとどまるものの、東へNATOを拡大することはないと約束したことが記録に残っている。それをミハイル・ゴルバチョフも信じて統一を認めたわけだが、アメリカは約束を守らなかった。アメリカの世界制覇を願う人にとってドイツ・モデルを成功例なのかもしれないが、自国の主権を守りたいと考える人にとっては反省すべきケースだ。
すでにNATO軍はロシアの玄関先まで到達、軍隊を配備し、ミサイルを設置してロシアを恫喝している。その結果として軍事的な緊張は高まり、全面核戦争の危険性は冷戦時代よりはるかに高まってしまった。1989年11月に「ベルリンの壁」が壊されて冷戦は終結したのかもしれないが、これはアメリカのソ連/ロシアに対する侵略劇の幕開けを告げる合図だった。
アメリカ支配層にとっての朝鮮統一とは朝鮮半島の制圧を意味している。半島の付け根までアメリカ軍を進め、中国との国境線にTHAAD(終末高高度地域防衛)ミサイル・システムを並べるということだ。