「世に倦む日々」氏が、今度は「トランプ氏が拉致問題を提起したというのはウソである」ことを緻密に論証しました。これまでと同様、説得力があります。
安倍首相とウソの関係はやはり切り離すことは出来ず、「安倍晋三発の情報というのは、北朝鮮問題だけではないが、ほとんどがウソであり、世論操作の目的でマスコミにフェイクニュースを撒かせているものだ」と述べています。
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安倍晋三のフェイク報道の政治 - トランプは拉致問題を提起していない
世に倦む日々 2018年6月18日
12日の歴史的な米朝首脳会談のあと、先週、国内では拉致問題についての動きがあり、報道の中心になった。まず、13日午後に萩生田光一が、米朝会談でトランプが拉致問題を提起した際、金正恩が「拉致問題は解決済み」とは言わなかったという情報を流した。12日夜の日米電話協議でトランプから説明されたというのがソースで、安倍晋三が萩生田光一を使って流させたものだ。そして、14日早朝に産経が、金正恩が安倍晋三と会ってもよいとトランプに伝えたと報道した。産経の記事では、「複数の政府関係者が明らかにした」とあり、「12日中に米政府から複数のルートで日本政府に伝達された」と書かれている。同じ14日早朝、読売は、日朝両政府関係者が複数回にわたって水面下で交渉し、安倍晋三が8月にも平壌を訪問する可能性があるという記事を書いている。その14日、安倍晋三と拉致被害者家族会との会談が官邸で行われ、夜のテレビ報道はこの問題一色となり、俄然、「日朝首脳会談」と「拉致問題解決」の気運が高まる状況となった。
ところが、15日夜、北朝鮮の平壌放送が「拉致問題は解決済み」と明言、報ステの番組の中で小川彩佳が速報で伝え、17日朝のフジの番組に出演した西村康稔が、8月・9月の日朝首脳会談は難しいと否定する進行になり、「拉致問題解決」の空気は一気に萎む顛末となる。私は、14日、天木氏と会談して動画を撮っていて、その中でこの問題が話題になったのだけれど、即座に、萩生田光一や産経の情報はフェイクで、安倍晋三が自らの支持率を上げるための情報操作だと直観し、その旨の判断と見解を天木氏に返していた。金正恩が安倍晋三と会ってもよいとシンガポールで語ったなどというのは、全くの作り話であり、安倍晋三が産経を使って撒かせているガセだ。萩生田光一の話もガセで、安倍晋三による情報工作である。野党は集中審議で追及して真相を確認すればいい。なぜ萩生田光一の口を使ったのか。政府の人間ではなく、責任を逃げられるからだ。国会で政府答弁をしなくて済むからで、本人の聞き間違いによる誤解ということで済むからだ。
実際には、拉致問題の話など米朝首脳会談では出ていない。考えてみるといい。フェイストゥーフェイス(二者面談)の会談は38分間しか行われていない。半分の時間が通訳に費やされるから、首脳二人が言葉を発したのは20分間で、一人がわずか10分間である。このとき、二人の間で話し合って決めなくていけなかったのは、共同声明に書き込む文言の中身であり、米国側からすれば、何としてもCVIDの文言を入れるか、非核化の検証についての北朝鮮のコミットを得るべく、詰めの交渉に迫られていた。崔善姫とソン・キムとの現地での実務者交渉は前日11日に行われ、その様子はテレビで報道されたが、実際には再び会って深夜まで交渉が続いていたことを中央日報が報じている。この夕方、ポンペイオは記者会見で、CVIDのみが米国が受け入れられる唯一の成果だと言い、北朝鮮側に最後のプレッシャーをかけていた。だが北朝鮮は折れず、CVIDの文言を拒否、会談を失敗させられないトランプの足下を見て、北朝鮮の狙いどおりの合意文書に纏めることに成功する。
トランプは、38分の直接会談の間、あの手この手で金正恩を懐柔・説得し、CVIDの明記を要求しただろう。中央日報の記事では、金正恩は、制裁解除を交換条件に求めていたとあり、そこで両者が折り合えなかったと書いている。私は、その可能性もあるけれど、13日の朝日の記事で現地から牧野愛博が書いていたように、米国側が体制保証の具体的措置(CVIG=不可侵条約)を提出しなかったことが大きな原因だろうと考えている。牧野愛博は、今回の米朝交渉の米国側の中枢(CIA)と繋がっていて、リーク情報をダイレクトに受け取っていることは間違いない。体制保証か、制裁解除か、いずれにせよ、米国は北朝鮮が求める見返りを出さなかったため、共同声明でのCVID明記は見送られ、トランプは記者団から猛攻撃を受ける羽目になった。38分間の直接会談の後、1時間半の閣僚合同会議になっても、議題の中心はCVIDで、北朝鮮にCVIDを受け入れさせるべく突っ込んだ議論が展開されたに違いない。米国の閣僚の中に拉致問題に関心を持っている者はいない。
もし、会談で日朝の拉致問題をトランプが提起していたとすれば、具体的にどういう進行になっていたか。まず、トランプは安倍晋三から話を聞き、国務省から簡単なブリーフィングを受けているだけで、詳しい知識を持っているわけではない。北朝鮮の中に日本人のキッドナップ・ホステージ(拉致被害者)が大量にいるらしいという程度だろう。それを返還したらどうだという要求を出したとすれば、当然、金正恩の方は、そのような事実はなく、拉致問題は日朝間ですでに解決済みの外交案件であり、安倍一味が胡乱な言いがかりをつけているだけだと返答するだろう。そこでもしトランプが、それはどういうことだ、安倍晋三から聞いた話とはずいぶん違うぞと言い出し、拉致問題について質問を交えた突っ込んだ応酬など始めたら、通訳の時間も含めて20分以上は簡単に埋まってしまう。閣僚合同会合も同じで、日朝の拉致問題など取り上げたら、肝心の他の問題(CVID・CVIG、米韓合同軍事演習)の詰めなど何もできなくなってしまう。トランプは拉致問題の提起などやっていない。私はその点については自信がある。
提起したと方便を言ったのは、日本人記者(日本政府と日本世論)に対するリップサービスであり、日本に対する外交処理だ。実際、あの記者会見で、トランプは、拉致問題の提起に対して金正恩がどう返答したかを説明しなかった。そして、記者会見の場で、金正恩が安倍晋三と会ってもいいと言ったとも言わなかった。もし、トランプが、本当に金正恩に日朝会談の開催を持ちかけ、金正恩がそれに応じて返答していたのであれば、トランプはそれを会談の重大な成果の一つとして記者会見で報告していただろう。大きく宣伝していたことは間違いない。事後の安倍晋三との電話協議の場ではなく、シンガポールの記者会見場でその事実を伝えただろうし、平壌放送もそれを認めていただろう。われわれは、権力によるリークが意図的なもので、大衆操作の本質を持っていることを見抜かないといけないし、権力側のリーク情報を常に疑わないといけない。北朝鮮に関わる安倍晋三発の情報というのは、北朝鮮問題だけではないが、ほとんどがウソであり、世論操作の目的でマスコミにフェイクニュースを撒かせているものだ。
安倍晋三は、世の中に流れる政治報道などというものは、すべて自分に都合のいいウソでいいと思っていて、大衆にはウソを信じこませていればいいと思っている。そして、マスコミを使えば、大衆はウソを簡単に信じこむと思っている。