政府は「働き方」改革法案を今国会の最重要法案とうそぶいています。確かに経済界からすればせめて「残業代ゼロ」法案は成立させて欲しいのでしょうが、その内容はあまりにもお粗末で、そもそもが「立法事実」がないのに立案された法案です。
共産党の倉林明子議員によれば、「働き方」法案には、詳細は内閣が定める政令や厚労省が定める省令によるとされている項目が90超に及ぶということです。
要するに中身はまだ白紙であって、詳細は政府・厚労省だけで、国会の審議を経ないで勝手に決められる仕組みになっているということです。
高プロ制度が過労死を繰り返さないという提案理由の法案になっておらず(福島瑞穂議員)、ただの「残業代ゼロ制度」であることも明らかになりました。
しんぶん赤旗の3つの記事を紹介します。
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22日の記事の更新はお昼前後となります。
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「働き方」法案 政省令90超、中身は白紙 倉林氏質問
残業上限も高止まり
しんぶん赤旗 2018年6月20日
「働き方改革」一括法案をめぐり、日本共産党の倉林明子議員は19日、参院厚生労働委員会で、残業代ゼロ制度(高度プロフェッショナル制度)の具体的中身が政省令で定める事項ばかりで国会軽視もはなはだしいと批判。「過労死ライン」の残業上限も労働時間の高止まりの危険が現実のものになっていると追及しました。「20日に会期末となる。廃案にすべきだ」と迫りました。
倉林氏は、高プロの労働者ヒアリングが法案要綱策定後のもので立法事実と言えず、労働時間データも2割削除後の再集計で数値が激変したことを指摘しました。
加藤勝信厚労相は、「数字に変動があるのは指摘通り」と認め、安倍晋三首相の「変化はみられない」(4日)との答弁を修正しました。しかし、「法案の位置づけに大きく変わりはない」と強弁。倉林氏は、「立法の根拠はことごとく崩れた。やり直すしかない」と強調しました。
倉林氏は、高プロの具体的な対象や、長時間労働を防ぐとされる「裁量」の保障などを質問。山越敬一労働基準局長は、どれも「省令で決める」としか答えられませんでした。
倉林氏は、「法案に政省令で決めるものが90以上もある。白紙委任に等しい。中身がスカスカだ。こんな法案は断固認められない」と批判しました。
残業の上限規制も、単月100時間、平均80時間、年720時間という「過労死ライン」を容認。倉林氏は、損保大手の三井住友海上で残業を決めた三六協定が、法案を踏まえ、従来の年350時間から540時間へ、190時間も延長されていると告発しました。
加藤厚労相は、「法案はギリギリ実現可能なものとして労使が合意した」などと、「過労死ライン」の上限に固執。倉林氏は、週15時間、月45時間、年360時間の大臣告示基準の法定化を求め、「過労死促進などあってはならない」と強調しました。
「働き方」法案の欠陥が次々 野党は徹底審議・廃案要求
しんぶん赤旗 2018年6月20日
「働き方改革」一括法案について、参院厚生労働委員会での19日の審議では法案の欠陥が次々浮き彫りとなり、野党側は採決を強行せずに徹底審議すべきだと主張しました。日本共産党、立憲民主党、社民党は20日の会期末での廃案も求めました。
同法案の残業上限で残業が削減するのか、国民民主党の小林正夫議員の質問に対し山越敬一労働基準局長は、「効果を定量的に示すことは困難だ」と答えられませんでした。日本共産党の倉林明子議員の質問で、残業が増加する企業もあることが分かっています。
高度プロフェッショナル制度について加藤勝信厚労相は、「高プロは労働時間短縮とただちに結び付かない」、「(年収要件の)1075万円を上回る(成果報酬の)ところは、高プロでは要求していない」と立憲民主党の難波奨二、石橋通宏両議員に答え、ただの「残業代ゼロ制度」だと明りょうになりました。
石橋氏は、高プロに同意しない労働者への不利益取り扱いや同意撤回の規定に企業が違反してもおとがめがなく、欠陥法案だと問題視しました。
社民党の福島瑞穂議員は、「過労死を繰り返さないという提案理由の法案になっていない」と批判しました。
「働き方」法案 会期末 廃案こそ 雇用共同アクション国会前行動
会期延長は許されない
しんぶん赤旗 2018年6月20日
国会会期末を翌日に控えた19日、全労連や全労協など幅広い労働組合でつくる「雇用共同アクション」は参院議員会館前行動を行い、「『働き方改革』一括法案は審議未了で廃案にせよ」と訴えました。
約100人の参加者を前に主催者あいさつした全労連の岩橋祐治副議長は、「国会会期を延長し、何が何でも法案を成立させようとすることは絶対に許されない」と強調。「時間外労働や休憩、深夜の制限なく使用者が労働者を働かせる『残業代ゼロ制度』は、憲法違反だ。違憲の法案は絶対に廃案にしよう」と訴えました。
全労協の中岡基明事務局長は、労働者や市民、野党のたたかいが「今日の採決をさせないところまで与党を追い込んでいる」と強調。調査データや労働者のニーズを偽造してまで過労死促進法案を成立させようとする安倍政権を批判し、「労働組合が先頭に立って廃案に追い込むたたかいを貫徹しよう」と呼びかけました。
中央大学の近藤昭雄名誉教授は、派遣法の対象拡大による非正規雇用の促進など、労働法制が改悪されてきた流れを指摘し、「8時間労働制を崩す法律は絶対に通してはいけない」と強調しました。
日本共産党の吉良よし子、山添拓、社民党の福島瑞穂の各参院議員が連帯あいさつしました。山添氏は、「法案成立は潔く諦めて国会を終わりにし、廃案にするべきだ」と強調しました。
「働き方改革」一括法案の廃案を求めて声を上げる人たち=19日、参院議員会館前