政府の規制改革推進会議は4日、7分野120項目にわたる規制見直し案を安倍首相に答申しましたが、放送分野では、安倍首相が目指した放送法4条(放送局に政治的公平性を義務付けた)の撤廃は盛り込まれませんでした。
安倍政権は、現行の放送メディアに対しては口やかましく政府批判を抑えようとする一方で、規制緩和によって新規業者の参入を図り、政権寄りの番組を増やそうとしたのですが、それには「事実に基づかない報道が増える」、「テレビ放送には公共性が必要で、言いたいことを言うサービスとは違う」等の反対意見が多く、認められなかったものです。
当然のこととはいえ、政府が作った会議(委員会)が政府の意向を反映しなかったのは評価できます。それにしても安倍政権の横暴は留まるところを知りません。
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放送法4条撤廃見送り 「公共性必要」反対相次ぐ
東京新聞 2018年6月5日 朝刊
政府の規制改革推進会議は四日、農業など七分野百二十項目にわたる規制見直し案を安倍晋三首相に答申した。放送分野では、放送局に政治的な公平性を義務付けた放送法四条の撤廃など政府が水面下で検討した方針は盛り込まなかった。反対意見が多く、疑惑や不祥事に揺れる安倍政権にはね返す力はなかった。
放送分野の答申は、放送とネットでの番組の同時配信に向けた技術開発など、総務省が議論してきた内容が大半。首相は会議で「引き続き総務省を中心に未来を見据えた放送の姿について検討を進めてもらいたい」と述べた。放送法には触れなかった。
政府が放送法四条の撤廃を検討した表向きの理由は、規制緩和により新規参入を呼び込むためだった。しかし実際には、首相はたびたび自身に批判的な報道に不満を示しており、政権寄りの番組を増やすための布石との見方が広がった。
これに対し、規制改革推進会議が学識者らに意見を聴いたところ「テレビ放送には公共性が必要で、言いたいことを言うサービスとは違う」(宍戸常寿(じょうじ)・東京大大学院教授)と反対意見が続出。政権や与党内部からも「事実に基づかない報道が増える」(野田聖子総務相)と異論が相次いだ。疑惑や不祥事で内閣支持率が低迷する中、政府の方針案は急速に後退した。
上智大学の音好宏(おとよしひろ)教授は「今回はメディア側の危機意識が官邸周辺の策謀を抑えた形でまとまったが、首相の思いが消えたわけではないだろう。今後も首相サイドの対応を注視し続ける必要がある」と話した。 (吉田通夫、村上一樹)