身体に障害を持つ人の基礎年金は1級が約97万円、2級が約78万円で、その認定は以前は都道府県ごとに各地の認定医が審査していました。政府(厚労省)は、地域によって判定にばらつきがあるとして、2017年4月に認定業務を東京の障害年金センターに一元化しました。
その結果、昨年更新手続きを行った人のうち、20歳前から障害がある約千人に対し「受給できる障害の程度ではなかった」という審査結果となりました(但し激変を緩和するために、初年度の特例として今年再審査をすることにしています)。
障害による生活上の不便は健常者にはなかなか理解しにくいものなので、決して機械的にカットすべきではないのですが、厚労省は、審査を一元化することに乗じて対象者を大幅に減らそうとしているわけです。
いま彼らが目指している「残業代ゼロ」法案の成立と同様、この目に余る厚労省の非情さは、安倍政権の非情さそのものです。
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全国一元化を口実に…安倍政権が障害年金支給カットの非情
日刊ゲンダイ 2018年6月20日
どこまで非情な政権なんだ――。今度は障害基礎年金をバッサリだ。
障害基礎年金は、日本年金機構が障害や難病を負った人に支給する年金。障害の程度によって1、2級に区分され、年間支給額は1級が約97万円、2級が約78万円だ。
「都道府県単位だった認定審査を昨年4月から障害年金センターに一元化したことが影響し、支給されなくなる受給者が続出しています。一元化を口実に、厚労省がやりたかったのは支給のカットです」(厚労省関係者) 20歳前に障害を負った受給者1010人に、支払いを打ち切る通知を送っていたことが先月末に判明、大きく報じられたが、それだけではなかった。20歳以降に障害を負った受給者のうち、約2900人が、昨年4月から1年間に支給を打ち切られていたのだ。衆院厚労委で、高橋千鶴子議員(共産)が取り上げ、厚労省は事実関係を認めた。
高橋議員は「一元化は本来もらえる人を救おうという趣旨ではなかったか」「もらえなくなる人に思いを致さないのか」と指摘したが、加藤勝信厚労相は「公平給付の実現に目的がある」とお決まりの答弁。世代間の公平など「公平」は、カットのためのいつもの常套句である。
だが、障害基礎年金は最も切ってはいけない社会保障給付だ。厚労省が4月に発表した障害者の実態調査によると、月収9万円未満の人が65歳未満で2人に1人。経済的に苦しい生活を強いられているのだ。
一元化どころか、むしろきめ細かい審査が必要なのが障害年金だ。障害年金に詳しい福祉施設関係者がこう言う。
「現在の障害年金は、身体や精神の機能がどの程度かで審査されています。しかし、その人の“大変さ”は機能だけで決まるものではありません。家庭や住んでいる街の環境など、個別の事情で変わってくるのです。機能上は軽症であっても、暮らしていくのがとても大変なケースも多くあります。“全国一律”に最もなじまない年金なのです。打ち切り通知が大々的に報じられて、いい機会です。実態を直視した審査ができるように、国会でも議論してもらいたい」
本当に困っている人に寄り添うのが政治の仕事であることは、加藤大臣だって理解しているはずだ。審査基準を再考すべきではないか。
障害年金1000人停止検討 年金機構 本年度中に再審査
東京新聞 2018年5月29日
障害がある人に支払われる障害基礎年金を巡り、日本年金機構が受給者約千人について、障害の程度が軽いとして支給打ち切りを検討していることが分かった。都道府県ごとだった審査業務を昨年四月に一元化した影響とみられる。機構は経過措置として一年間は支給を継続し、本年度中に再審査するとしているが、不支給となれば受給者の生活に影響が出そうだ。
障害基礎年金は、二十歳前から障害がある人や、自営業や学生など国民年金の加入者が、病気やけがで一定の障害を負った場合などに支払われる。
受給者は、症状に応じて数年おきに医師の診断書を提出するなどして、更新手続きを行う必要がある。以前は都道府県ごとに各地の認定医が審査していたが、地域によって判定にばらつきがあり、二〇一七年四月に東京の障害年金センターに認定業務を集約し一元化した。
機構は昨年、更新手続きを行った人のうち、二十歳前から障害がある約千人に対し「受給できる障害の程度ではなかった」との審査結果を通知した。だが、一元化した最初の年であることも考慮して、対象者は今年あらためて再審査する。再審査対象の受給者には、六月に送る診断書提出のお願いに、診断書記載要領を読んできちんと記載することを要請する医師あての文書も同封するという。
加藤勝信厚生労働相は二十九日の記者会見で「認定の均一化を図るため業務を集約した。今回の事案は、事例ごとに検証していく必要がある」と述べた。