2018年6月28日木曜日

米国のイラン原油輸入停止要求に 日本はどうする積りなのか

 トランプ大統領は58日、突然イラン核合意を離脱すると宣言し、21日にはポンペオ国務長官がイランに対して「史上最強の制裁を科す」と宣言しました。
 オバマ前大統領が進めたイラン核合意は、中東で最も懸念されるイランの核兵器開発を封じ込めるための現実的で合理的なものでしたが、トランプは一貫して批判的でした。イランが反米・反イスラエルであったのでそれが気に入らないのだとしか考えられません。
 
 米国はこれまでも標的の国家を決めてはそれを徹底的に破壊して来ました。しかしイランは大国なので最終的にイラン・アメリカ戦争に発展する惧れがあります。
 いずれにしてもそれは「対岸の火事」、ということで従来は済んだのですが、安倍政権が狂気の戦争法を通し、そこに集団的自衛権の行使を謳ったために、事情はすっかり変わりました。
 
 それはともかくとして、6月27日、トランプはついに同盟国に対して「イラン産原油の輸入を11月までにゼロにするように」とする「最後通告」を出しました。
 天木直人氏が惧れていた事態が出現しました。
 
 同氏の27日のブログと、関連する5月14日と6月20日の2つのブログを併せて紹介します。
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安倍首相を苦しめる事になる米国のイラン原油輸入停止要求
天木直人のブログ 2018年6月27日
「ついに」、というべきか、「やはり」というべきか、トランプ大統領の米国が安倍首相の日本に対し、イランに対する経済制裁に参加しろと言って来た事が明らかになった。
 私は5月14日と6月20日のメルマガで二度にわたって警鐘を鳴らした。
 今度ばかりは米国の対イラン制裁要求に従ってはいけないと。
 米国・イスラエルとイランの戦争に巻き込まれてはいけないと。
 しかし、100%トランプ大統領の側に立つと言い続けて来た安倍首相は、最後はイラン原油輸入停止要求を飲む事になるだろう
 そして日本の中東外交は、どんどんとイスラエル寄りになっていく。
 いまこそ、外務官僚や経産官僚は安倍首相に思いとどまるように進言すべきだが、人事を人質に取られたままでは、それも無理だろう。
 いまこそ財界は筋を通すべきだが、米国とのビジネスに悪影響が及ぶことを恐れて、安倍政権がモタモタしているうちに、先駆けて、対イラン取引を自粛するだろう。
 そしてメディアだ。
 これほど大きなニュースであるというのに、それを一面で取り上げた大手紙は日経新聞と読売だけだ。
 しかも、米国の対イラン制裁に参加してはいけない、と書くメディアはただの一つもない。
 日本は国をあげて対米従属の国になってしまったごとくである。
 泣く子とトランプの米国には勝てないといわんばかりである(了)
 
 
日本は米国の対イラン制裁強化要求に応じてはいけない
天木直人のブログ 2018年5月14日
 きょうのテーマは何といってもこれだ。
 きょう5月14日の産経新聞が、日本外交の真価を問うことになる一大スクープ記事を報じた。
 すなわちトランプ米政権が、離脱した欧米6カ国とイランとの核合意に代わるあらたな合意を目指しているというのだ。
 その合意とは、北朝鮮に「最大限の圧力」をかけて非核化に応じさせたのと同様に、対イラン制裁強化を通じ、イランの非核化に向けた「あらたな核合意」を目指すものだという。
 しかも前回の核合意は、英仏独ロ中を含めた欧米6カ国とイランとの交渉を通じた欧米6カ国とイランとの合意だったが、今度はアジア、中東の同盟国をも含めた交渉であり、合意であるという。
 もちろん、日本もその中に含まれている。
 そして、驚くべきことに、すでに12日までに米政府当局者は日本政府とその協議を始めていたというのだ。
 つまり米朝首脳会談における北朝鮮の非核化の話をしていた時に、同時に米国は日本に対し、イランの非核化に向けた制裁強化を要求していたのだ。
 日本も対イランへの制裁強化に加われと圧力をかけていたのだ。
 間違いなくこの米国による対イラン制裁強化への協力要求は、これからの日米外交の大きな懸案として急浮上するだろう。
 しかし、日本は対イラン経済制裁強化に協力してはいけない。
 米国・イスラエルの対イラン戦争に巻き込まれるからだ。
 2003年にブッシュ米政権がイラクを先制攻撃しようとしていた時、私は駐レバノン大使として、小泉政権に対し、米国にイラク攻撃をさせてはいけないと意見具申した。
 たとえそれが日本にできなくても、日本は決して米国のイラク攻撃にくみしてはいけないと意見具申した。
 いまの私は、安倍政権に意見を具申する立場にはない。
 しかし、あの時以上に強い警告を発したい。
 米国に対イラン制裁強化をさせてはいけないと。
 たとえ日本にそれができなくても、日本は決して米国の対イラン制裁強化にくみしてはいけないと。
 これ以上の対イラン制裁強化は米国・イスラエルとイランの戦争につながる。
 そして米国・イスラエルとイランの戦争が起きれば、それが中東や世界にもたらす混乱と犠牲の深刻さは、あの米国のイラク攻撃の比ではない
 こんどこそ日本は米国の戦争を阻止しなければいけない。
 たとえ阻止できなくても、少なくとも日本は米国の戦争に巻き込まれてはいけない
 安倍政権は苦しい決断を迫られることになる。
 敵前逃亡の得意な安倍首相だ。
 一日も早く日本の総理を辞めたほうが身のためである(了)
 
 
日本は米国の対イラン制裁強化要求に応じてはいけない(続)
天木直人のブログ 2018年6月20日
 私は5月14日のブログで書いた。
 日本は米国の対イラン制裁強化要求に応じてはいけない、と。
 なぜならば、イランへの制裁強化に応じるなら日本はこれから始まろうとしている米国・イスラエルとイランとの戦争に巻き込まれる事になるからだ。
 そして、ついに米国は日本に対する対イラン制裁について本格的に要求して来た。
 きょう6月20日の読売新聞が一段の小さな記事で報じた。
 日米両国はきのう6月19日、イラン核問題をめぐる外務省局長協議を東京都内で開いたと。
 しかし、その記事には詳細な事は一切書かれていない。
 ただ、米側が制裁内容を説明し、日本側が、日本企業に悪影響のないようにしてほしいと申し入れた、としか書かれていない。
 そこでインターネットで関連情報を探したら、より詳細な記事が流されていた。
 すなわち、アメリカ国務省のイラン問題担当であるアンドリュー・ピーク次官補代理が来日したと。
 トランプ政権がイラン核合意から離脱したことを受けて、日本の政府や経済界に対イラン投資の抑制を働きかけるために来日したと。
 そしてピーク次官補代理はJNNのインタビューに答えて次のように語っている。
 イランの経済は、国家および各地でテロを支援している革命防衛隊が支配していると。
 そんなイラン経済に対しアメリカは制裁を強化しているのだと。
 アメリカは今後とも、イランに対する圧力を最大化し、イランの核開発だけでなく、ミサイル開発やレバノン・シリア・イエメンなどへの武装勢力支援を止めさせることを目指すと。
 こんな米国の対イラン制裁に協力したら、間違いなく日本は米国・イスラエルの対イラン戦争に巻き込まれる事になる。
 そして、こんな米国の危険な要請に対して、きっぱりと「反対だ」と言えず、日本企業に悪影響のないようにしてほしい、などと申し入れているようでは、その先は見えている。
 最後は米国の経済制裁に従う事になるのだ。
 これだけは避けなければいけない。
 あの時よりもはるかに深刻な事態に巻き込まれる事になるからだ。
 メディアは米国の対イラン制裁の動きについて、もっと大きく報じるべきだ。
 それに対する安倍政権の対応を国民に知らせなければいけない。
 なによりも、今度こそ、米国の戦争には、日本は一線を画さなければいけないと書かなければいけない(了)