18日の参院決算委員会で、共産党の辰巳孝太郎議員が、「官邸と財務省、検察が完全にグルになって、森友疑惑を封じ込めていた」ことを示した“爆弾文書”を呈示しました。LITERAが詳細を報じました。
また総理夫人付き職員の谷査恵子氏が、財務省に「賃料引き下げ」「貸付料の減免」を要求していたことを示す文書も呈示されました。それは安倍首相がこれまで谷氏の口利きは「値下げをしてくれ、優遇してくれということではなくて、制度に関する問い合せ」として問題ないと答弁してきたことを否定するものです。
行政が検察に対して指図をするのは「指揮権発動」であり、三権分立を侵すものなので、厳に抑制されるべきものとされています。
その一方で検察庁法には発動の規定があるので、過去において一度、1954年に犬養健法相が発動して「造船疑獄」を終結させましたが、それは法相の辞任と引き換えに行われました。当時のメディアは当然「指揮権発動」事件として大々的に取り上げ、その後も「指揮権発動」は決して行ってはいけないタブーとして抑制されて来ました。
しかし安倍政権になってからは、法務事務次官を通じて平然とそれに類することが行われるようになり、メディアも全く騒ぐ気配を見せません。もはや「指揮権発動:タブー」は死語になったようです。
もともと検察は行政機関とされ、その独立性には疑問符がついているのですが、ここまで行政と一体化してしまうのは明らかな異常です。
これについて植草一秀氏が「刑事司法とメディアの腐敗が安倍内閣存続の根源」とする極めて手厳しいブログを発表していますので、併せて紹介します。
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W杯の裏でとんでもない文書が発覚!
森友文書改ざんで官邸が検察へ圧力、谷査恵子の介入を裏付ける記述も
LITERA 2018.06.20
サッカーW杯や「紀州のドンファン」の話題がワイドショーを独占し、すっかり影が薄くなった森友・加計問題。安倍政権の「逃げ切り作戦」がまんまとはまっている感があるが、しかし、これはテレビが取り上げないだけだ。モリカケをめぐってはいまもとんでもない事実が次々と発覚している
18日におこなわれた参院決算委員会でも、新たな“爆弾文書”が飛び出した。なんと、その文書には、官邸と財務省、検察が完全にグルになって、森友疑惑を封じ込めていたことが示されていたのである。
この文書を公表したのは、共産党の辰巳孝太郎議員。辰巳議員は今回、独自に入手したという2種類の文書を安倍首相と麻生太郎財務相、石井啓一国交相に叩きつけた。
そのうちのひとつは、財務省が森友学園側との交渉記録(応接録)と改ざん前決裁文書を今年の5月23日に国会提出することを決めたのと同時期に作成したメモ。文書の上部右端には、手書きで「5/21 つるた参事官」と書かれており、これは国交省の鶴田浩久大臣官房参事官のことだろう。鶴田氏が参事官になったのは昨年7月の人事異動時。つまり、今年5月という、つい最近に作成されたと思われる。
そして、このメモはじつに生々しいものだ。内容は、財務省と国交省が交渉記録の公開にあたり、近畿財務局と大阪航空局のやりとりを公開するのかどうかを〈国交省として、出すのが得策かどうか検討してほしい〉などと投げかけているのだが、そのなかで、こんな言葉が出てくるのだ。
〈役所間のやり取りの公表に先鞭をつけてよいものか、悩ましい。近畿財務局と理財局のやり取りについては、最高裁まで争う覚悟で非公表とするのだろうが、近畿財務局と大阪航空局のやり取りについては、森友問題に限って考えればメリットもあり得る。色々とひどいことを言われたことが明らかになるし、「大阪航空局に言っておく」とした部分の帰結も分かってすっきりする。〉
近畿財務局と理財局のやりとりは「最高裁まで争う覚悟」で非公表とする──。近畿財務局と理財局がやりとりした際の文書は存在するが、是が非でも公表しない、と言っているのだ。ようするに、この期に及んで財務省は、いまだ文書を“隠蔽”しているのである。
他方、5月に財務省が公開した近畿財務局の交渉記録のなかには、籠池諄子氏が近畿財務局の担当者にコースターを投げつけたことや暴言を吐いたということが書かれた箇所があり、これはメディアにも大きく取り上げられた。交渉記録の公開によって、籠池夫妻を“トンデモクレーマー”として注目させることに成功したのだ。
都合の悪い文書は隠蔽して、メリットにつながる文書は公開する──。ということは、「最高裁まで争う覚悟」で出さないという近畿財務局と大阪航空局のやりとりは、政権に打撃を与える相当な内容が書かれているのだとわかるだろう。
いや、この文書だけではない。近畿財務局と大阪航空局のやりとりを記した文書が存在することも今回のメモで判明したし、さらに言えば、籠池泰典理事長(当時)が近畿財務局に、昭恵夫人の「いい土地ですから、前に進めてください」発言を伝え、昭恵夫人と籠池夫妻のスリーショット写真を提示した2014年4月28日のものなど、重要な時期の交渉記録はいまだ公開されていない。近畿財務局の職員は4月28日の交渉記録を「作った記憶がある」と話す一方、麻生財務相は「いまの段階では見つかっていない」と主張するばかりだが、これも結局は、「存在するのに隠している」としか考えられないのだ。
「官邸も早くということで、法務省に何度も巻きを入れている」の記述が
これだけでも超弩級のスクープ文書だが、このメモが「爆弾文書」たる理由は、ほかの部分にある。冒頭にも記したように、官邸と財務省、検察がグルであることが示されている箇所が出てくるのだ。
〈5/23の後、調査報告書をいつ出すかは、刑事処分がいつになるかに依存している。官邸も早くということで、法務省に何度も巻きを入れているが、刑事処分が5/25夜という話はなくなりそうで、翌週と思われる。〉
刑事処分の発表後に調査報告書を出す──。事実、大阪地検特捜部が佐川宣寿前理財局長をはじめ告発されていた財務省幹部および近畿財務局職員計38人の不起訴処分を公表したのは、5月31日のこと。財務省が調査報告書を公表したのは5日後の6月4日だ。そもそも、大阪地検特捜部は当初から立件は見送る算段で、決裁文書の改ざん発覚の1カ月後である4月の時点で全員不起訴が決定していたことは既報
(http://lite-ra.com/2018/06/post-4044.html)の通りだが、財務省はこの結果を当然把握しており、その上でいつ調査報告書を出すかを決めていたのだ。つまり、完全な出来レースの調査報告だったのである。
しかも、注目すべきは、〈官邸も早くということで、法務省に何度も巻きを入れている〉という部分だ。これは、大阪地検の不起訴処分という捜査結果を早く公表するよう官邸が法務省に対して圧力をかけていた、ということ。ようするに、政治的独立性を保持すべき検察の捜査結果に法務省を通じて介入していたことを、この文書は裏付けているのである。
官邸から法務省へ、法務省から大阪地検へと加えられた圧力。無論、官邸が介入したのは、捜査結果の公表だけではない。不起訴処分という決定自体も、官邸の介入によっておこなわれたものと考えるべきだろう。
本サイトでは、不起訴処分が公表された際に、大阪地検特捜部の捜査を潰した首謀者は“法務省の官邸代理人”こと黒川弘務・法務省事務次官だと指摘。森友問題が勃発したあとには「黒川次官と菅義偉官房長官の間で、法務省の悲願だった共謀罪の成立とバーターで、安倍首相、昭恵夫人の疑惑に蓋をして、籠池理事長の口封じ逮捕をおこなうという密約が交わされた」という噂が駆け巡ったことや、「森友捜査をコントロールしようと大阪地検にプレッシャーをかけるべく、毎日のように本省が地検幹部に連絡を入れていた」という地検担当記者の証言などを紹介した。
そして、この官邸 ─ 黒川法務事務次官というラインが大阪地検特捜部の捜査に介入していたことは、今回の文書で確かなものになった。不当な土地取引のみならず、決裁文書の改ざんという国家的大犯罪が罪にも問われず、見逃されるという民主主義国家にあるまじき結果は、やはり安倍官邸が引き出していた ──。これこそがまさに「独裁」の実態ではないか。
昭恵夫人付き職員の谷査恵子氏が森友土地の「賃料引き下げ」を要求の記述も
さらに、辰巳議員はこの文書とは別に、財務省と国交省が隠蔽しつづけている記録のひとつとして、2015年11月12日に総理夫人付き職員の谷査恵子氏が財務省に口利き電話を入れた当日、近畿財務局が大阪航空局に電話で報告していた内容が記された文書も公表。ここには〈近畿財務局からの情報提供〉として、〈11/11に安倍総理夫人付きのタニ(女性)氏から、森友学園に係る以下の問い合わせが財務本省にあり〉と書かれており、さらには、谷氏が「新聞報道であった介護施設に対する賃料引き下げの優遇措置を小学校にも適用出来ないのか」「貸付料の減免、土壌汚染対策工事中の免除等はできないのか」と迫ったことが記されていた。安倍首相はこれまで谷氏の口利きを「値下げをしてくれ、優遇してくれということではなくて、制度に関する問い合せ」として問題ないと答弁してきたが、谷氏ははっきりと「賃料引き下げ」「貸付料の減免」を要求していたのである。
しかも、この文書には、〈安倍総理夫人付きのタニ氏は、経済産業省からの出向者のようである。〉〈安倍総理夫人は、森友学園が開校を計画している「瑞穂の國記念小學院」の名誉校長に就任しています。〉とも記されている。いかに森友が「総理夫人案件」であることを強く意識していたか、ここでもよくわかるというものだろう。
こうした財務省が隠し通そうとする文書を突きつけられ、安倍首相は「事前通告にない質問だから答えようがない」と逃げ、「真偽のほどもわからない」「真実かどうかもわからない」「まったく架空の状況」などと、あたかもでっち上げの可能性があるかのように強調した。──こうした態度も含め、メディアはしっかり報じる必要があるだろう。
何度でも言うが、森友も加計も、民主主義の根幹を揺るがすこの国にとって重大な問題だ。そこから関心を失わせようと安倍首相や麻生財務相は嘘ばかりを吐き、為政者の嘘を国民に慣らしつつあるが、そのおかしさに異を唱えず、報じないならば、メディアも同罪だ。 (編集部)
刑事司法とメディアの腐敗が安倍内閣存続の根源
植草一秀の「知られざる真実」 2018年6月21日
「いつまで「もりかけ」を追及しているのか」との言い方は、安倍内閣が「もりかけ追及」から逃れるために流布している言葉である。
世間でも、「いつまでもりかけばかりかの声が多い」との声が聞かれるが、それは、テレビメディアで御用コメンテーターが「いつまでもりかけばかりか」と繰り返すのを市民が右から左に、受け売りで述べているものに過ぎない。
5月の連休前に安倍内閣が崩壊寸前まで追い詰められた。
財務省が公文書を大規模に改ざんしていた事実が明らかになった。安倍昭恵氏の関与も明白になった。財務省事務次官のセクハラ行為も正式に認定された。国有地の不正払い下げも明確になった。麻生財務相が辞任に追い込まれ、安倍内閣が総辞職するのが適正であった。
しかし、安倍内閣はこの状況を二つの策謀によって逃げた。
二つの策謀とは、1.刑事司法の不当支配、2.メディアの不当支配である。
刑事司法を不当に支配し、メディアを不当支配することにより、不当な内閣が不当に存続し続けてしまう。
安倍内閣の最大の罪は、刑事司法を不当支配していることである。
日本の警察、検察、そして裁判所には不当に巨大な裁量権が付与されている。
犯罪が存在するのに無罪放免にする裁量権 と 犯罪が存在しないのに無実の人間を犯罪者に仕立て上げる裁量権である。
安倍内閣は人事権を濫用して、警察、検察、裁判所を不当支配、私物化している。
だから、権力の犯罪は無罪放免にされ、政治的敵対者は犯罪者に仕立て上げられる。
そして、メディアは、刑事司法の決定を錦の御旗にして内閣を擁護する。
また、人々の関心を逸らすための情報操作、人心誘導を行う。
このことによって、不当な権力が存続し続ける。
この構造を主権者が見抜かなければならない。
森友問題では、検察が国有地の不正廉売、虚偽公文書の作成、虚偽公文書の国会への提出を、刑事事件として立件しなければならなかった。
しかし、内閣が刑事司法を不当支配しているため、重大犯罪がすべて無罪放免にされている。準強姦の逮捕状を握り潰す権力であるから、このような暗黒刑事司法は日常茶飯事となっていると言える。
他方で、無実の政治的敵対者が犯罪者に仕立て上げられたり、仕立て上げられそうになってきたりした。
北朝鮮を人権侵害国家だと批判する者がいるが、日本もまったく負けていない。
(後 略)