2019年4月12日金曜日

12- 粉飾決算の3代目バカ社長がサラ金通いで宴会状態というのが日本

 金子勝・慶大教授が日刊ゲンダイの週1 連載記事「天下の逆襲」で、安倍内閣の経済政策は、3代目のバカ社長が取り巻きで周囲を固め、粉飾決算でデタラメ経営をゴマカしサラ金通いで宴会を続けているという、潰れる会社の典型的パターンだと批判しました。
 
 文中で、西田昌司議員(自民)がMMT(現代金融理論)を引きながら、「自国通貨でお金をどんどん出していけば、日本政府は絶対破綻することはない」と、安倍政権の経済政策を応援したことが紹介されています。
 もともとMMTの考え方政策は劇薬禁じ手」とされているもので、実際にアベノミクスはいわば「日本版MMT」というべきものです。それはながく継続させることができず 日本の社会に驚くべき歪を生み出しましたが、デフレ脱却にはほとんど効果がありませんでした。
 ダイヤモンドオンラインの記事を参考資料として添付します。
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金子勝の「天下の逆襲」  
この国は粉飾決算の3代目バカ社長がサラ金通いで宴会状態
日刊ゲンダイ 2019年4月10日
 国交副大臣の「忖度」発言問題が追及された4日の参院決算委員会で、安倍首相の取り巻きのひとり、西田昌司議員の質問があった。
 
 右派である西田議員がMMT(現代金融理論)を引きながら、「自国通貨でお金をどんどん出していけば、日本政府は絶対破綻することはない」と財政支出の拡大を求めた。MMTは米国の民主党左派が金融緩和による財政拡大の根拠とする理論で、日本でも一部の「左派」が消費増税に反対するために使っている。
 
 答弁に立った安倍は「MMTの論理を実行しているわけではない」と言いつつも、我が意を得たりとばかりに「大胆な金融緩和」について主張した時に「国債は暴落し、円も暴落すると言われた。実際は、国債の金利は下がり、円が暴落したわけではない」とアベノミクスの異次元緩和を正当化した。実はMMTもアベノミクスを影から支える「理論」のひとつなのだ。
 
 アベノミクスの冷静な検証が必要だ。国債金利の下落は日銀による約470兆円もの国債買い入れ、マイナス金利まで導入したからだ。その弊害で銀行収益が猛烈に圧迫されている。2018年4~12月期決算で地銀の8割超が減益に苦しみ、3行は赤字だ。
 
 東京五輪前に不動産バブルが崩れる危険性があり、米中貿易戦争や英国の合意なきEU離脱などのバブル崩壊要因もある。その場合、リーマン・ショックとは異なり、地銀が引き受け手のない形で次々に倒れる戦前のような金融危機が想定される。政府は慌てて同一県内の地銀合併を認める独禁法見直しを打ち出したが、株価が暴落すれば24兆円超のETFを抱える日銀自体も債務超過に陥りかねない。日銀は政策金利誘導も量的緩和も預金準備率操作も使い果たしている。
 
 さらに産業衰退が著しい上、貿易赤字が定着化している。少子高齢化とともに貯蓄率も下がり、産業競争力も衰えていけば、海外投資の収益もやがて減少する。中長期的な日本経済の破綻経路も浮かび上がる。
 
 要するに、3代目のバカボンボン社長が忖度する取り巻きで周囲を固め、公文書や統計の改ざんによる粉飾決算でデタラメ経営をゴマカし、サラ金通いで宴会を続けているような状態なのだ。まさに潰れる会社の典型的パターンだ。
 
 金子勝 慶応義塾大学経済学部教授
1952年6月、東京都生まれ。東京大学経済学部卒業。東京大学大学院 博士課程単位取得修了。 法政大学経済学部教授を経て。2000年10月より現職。TBS「サンデーモーニング」、文化放送「大竹まことゴールデンラジオ」などにレギュラー出演中。『資本主義の克服 「共有論」で社会を変える』集英社新書(2015年3月)など著書多数。新聞、雑誌にも多数寄稿している。 
 
(参考資料)
「日本版MMT」の効果が疑わしい理由
山崎 慧 ダイヤモンドオンライン 2019年4月9日
三井住友DSアセットマネジメント ファンドマネージャー
議論を呼ぶ「MMT」
日本で実質的に行なわれている
 昨今、経済論壇でMMT(Modern Monetary Theory/現代金融理論)が話題となっている。MMTとは、自国通貨の発行権を持つ国では自国通貨建てで国家債務のデフォルト(債務不履行)が起こらず、政府は無限に信用を供与できるという主張である。
    (中 略)
 これに対し、ジェローム・パウエルFRB議長、黒田東彦・日本銀行総裁など主な各国中央銀行首脳らは「危険な考え方だ」と異を唱えており、欧州中央銀行(ECB)の次期総裁の有力候補であるフランソワ・ビルロワドガロー仏中銀総裁は「ハイパーインフレになる大きなリスクがある」とMMTを強く批判した。
 
 ただ、MMTのように、政府の債務を中央銀行が引き受けることによって財政政策を拡大させるという考えは決して突飛なものではなく、むしろオカシオコルテス氏の言うように、有史において幾度も用いられてきたオーソドックスな考え方だ。それどころか、この政策はすでに日本で行われているとも言える。
 2013年に量的・質的金融緩和が導入され、2016年にマイナス金利付き量的・質的金融緩和にてイールドカーブコントロールが導入されるまで、日銀の国債購入額は新規発行額を大幅に上回っていた。一方、財政政策はこの間、アベノミクスの三本の矢のうちの第二の矢として大規模化していた。これは、財政政策の財源となる国債を日銀が引き受けていると明示されていないだけで、アベノミクスにおける金融緩和と財政支出拡大のポリシーミックスは、オカシオコルテス氏の目指しているものに非常に近い。
 
 こうした、「日本版MMT」の結果はどうであろうか。2013年から2016年までの消費者物価は、生鮮食品とエネルギー、消費税を除くベースで前年比+0.5%(年率)にとどまっており、日銀は現在に至るまで2%の物価安定目標の達成に苦慮している。ハイパーインフレが生じるどころか、政府はデフレ脱却宣言すら行えておらず、「日本版MMT」を用いてもなお物価の押し上げに失敗している
 
劇薬どころかかなり疑わしい
日本版ヘリコプターマネーの効果
 今後も財政と金融の協調の議論が続くのであれば、これまで講じられてきた政策が不十分だとして、さらに踏み込んだ信用供与に話題が移ることになるだろう。具体的には、政府による日銀保有国債のデフォルトだ。
 
 日銀保有国債の永久債化や、日銀引き受けによる政府紙幣の発行も同種の考えで、これらはヘリコプターマネーなどとして定期的に話題に上っている。たとえば、若田部昌澄・日銀副総裁は、副総裁に就任する前の2015年2月5日の朝日新聞のインタビューで、「政府と一体と考えられる日銀が持っている国債260兆円は国のバランスシートから落とせる」と発言しており、政府と日銀の間で資金を貸し借りしているのだから、両者を合わせた組織(統合政府)として考えれば、債務は相殺され消えるという理論として語られることが多い。
 一般に、こうした政策・考え方は劇薬・禁じ手と言われているが、実際には劇薬どころか効果がかなり疑わしい。簡略化して考えると、日銀のバランスシートにおける保有国債(資産)の裏付けは、当座預金(負債)であり、これは民間銀行のバランスシートにおける当座預金(資産)を通じて国民の預金(負債)と繋がっている。
 
 すなわち、日銀の保有国債をデフォルト債務不履行させることは、国民の預金をデフォルトさせることと同義となる。これは政治的にほぼ不可能であり、仮に実施されたとしても国民負担による財政再建となるため、増税による財政再建となんら変わらない。
 
 保有国債をデフォルトさせても、国民の預金は保護すればいいという考えもある。ただし、この場合、日銀は債務超過となり、政府債務が日銀債務に置き換わっただけとなる。政府が借金しているのはあくまでも民間部門に対してなので、日銀の保有国債をデフォルトさせたところで、統合政府の債務は消えないのだ。政府債務が減る同額だけ日銀債務が増えたところで、何か変化が起こるのだろうか。
 
 中央銀行が債務超過になったことで、多少のインパクトがある可能性は残るものの、同額の政府債務も減少することを考えると、財政再建の前進とも後退とも捉えられず、これによって物価に何らかの影響が及ぶとは考えにくい。
 
杞憂に終わる日本版MMT
物価上昇モメンタムが途切れる恐れも
 まとめると、これまで行われていた「日本版MMT」は物価に対して影響を与えておらず、より踏み込んだ政策をとっても影響は薄いように思える。結局のところ、財政政策の拡大が物価に影響を与えるかどうかは、財源の調達方法ではなくその規模と使途に依存する。歴史上、ハイパーインフレのほとんどが放漫財政ではなく、大規模な国家予算の投入が将来の利益につながらなかった敗戦が原因となって生じてきたことがその証左だろう。
 
 MMTに対しては懸念が表明されているものの、その議論が日本に及ぼす影響は良くも悪くも限定的だろう。むしろ現段階では、MMTがハイパーインフレを招くリスクを心配するよりも、景気が腰折れし、日銀の言う物価の上昇モメンタムが途切れるリスクをより心配すべきではないだろうか。
 
 名目GDPの伸びがここ1年半にわたって完全に停止し、足元で景気動向指数が「下方への局面変化」を示しているにもかかわらず、消費増税を強行することになれば、2014年と同様の結果になるのが目に見えている。
(三井住友DSアセットマネジメント ファンドマネージャー 山崎 慧)