2019年4月15日月曜日

15- アサンジ氏の逮捕に抗議しない民主主義者はあり得ない

 櫻井ジャーナルが「アッサンジの逮捕に抗議しない民主主義者は存在しない」とするブログを発表しました。
 そのなかで、アサンジ氏の逮捕は他国の法律に違反して入手した情報を報道したジャーナリストを逮捕、起訴できるという先例になるとし、権力犯罪を暴くことは許されないとアメリカとイギリスの当局は宣言したことになると述べています。
 アメリカは実態を内部告発した人びとは厳罰に処す一方、告発された行為をした人びとには寛大とも指摘しました(日本社会にもそうした傾向がありますが)。
 そしてこの逮捕は、アメリカの支配層が公然と言論封殺を始めた大きな節目になるもので、民主主義者なら今回の逮捕に抗議の声を上げるはずだとしています
 
「マスコミに載らない海外記事」の「アサンジ逮捕は歴史からの警告」も併せて紹介します。
 何か意味が掴みにくいタイトルですが、原題は「THE ASSANGE ARREST IS A WARNING FROM HISTORYなので、字義通りの訳になっています。「歴史から警告を受ける事態」? とでも解すのでしょうか。
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アッサンジの逮捕に抗議しない民主主義者は存在しない
 櫻井ジャーナル 2019年4月13日
 ロンドン警視庁が4月11日に逮捕したウィキリークスの創設者、ジュリアン・アッサンジは2010年4月から11年初めにかけての時期にアメリカで秘密裏に起訴されていた。バラク・オバマが大統領だった時期だ。
 
 2010年4月にウィキリークスはアメリカ軍がイラクで行っている殺戮の実態を明らかにする映像を含む資料を公開した。その情報を提供した人物がブラドレー・マニング(現在はチェルシー・マニングと名乗っている)特技兵だ。2010年5月に逮捕されて懲役35年を言い渡された
 マニングは2017年5月に釈放されたが、今年(2019年)3月に再び収監される。アメリカの裁判所はアッサンジに対する弾圧を正当化する証言をマニングにさせようとしたが拒否されたが、そうした態度への懲罰だ。アメリカ支配層はロシアゲートという戯言を事実だとふたりに偽証させようと目論んでいる可能性もある。
 
 今回の逮捕は他国の法律に違反して入手した情報を報道したジャーナリストを逮捕、起訴できるという先例になる。世界には秘密保護法で権力犯罪を隠蔽しようとしている国が少なくない。そうした国の権力犯罪を暴くことは許されないとアメリカとイギリスの当局は宣言したわけである
 
 アメリカでは拷問や通信傍受システムなどの実態を内部告発した人びとは厳罰に処す一方、告発された行為をした人びとには寛大。2008年にリーマン・ブラザーズが破産して金融システムで横行していた不正が発覚したが、会社は「大きすぎて潰せない」、責任者は「大物すぎて処罰できない」という屁理屈でツケは庶民に回された。アメリカを中心とする支配システムは腐敗し、崩れ始めている
 
 そうした中、アメリカの支配層は言論封殺を始めた。アッサンジの逮捕はそうした弾圧の大きな節目になる重大な出来事。この出来事に沈黙しているということは言論の自由を放棄していることを意味する。民主主義者なら今回の逮捕に抗議の声を上げるはずだ。
 カネと情報が流れる先に権力は生まれる。民主主義を実現するためには民へカネや情報が流れる仕組みを作らなければならない。富裕層がカネや情報を独占する国が民主主義であるはずはない。独占の度合いが高まればファシズムになる。
 
 
アサンジ逮捕は歴史からの警告
マスコミに載らない海外記事 2019年4月14日
ジョン・ピルジャー johnpilger.com 2019年4月13日
 この暴挙が、マグナ・カルタの国で、ロンドンの中心で起きたことは「民主的」社会を案じる全員恥ずかしい思いをし、怒るべきなのだ。アサンジは国際法に保護された政治亡命者で、イギリスも署名者である厳密な契約の下の亡命受益者だ。国際連合はこれを恣意的拘留に関する作業部会の法律上の裁定で明確にした
 だがそれもくそくらえだ。凶悪犯にやらせろだ。エクアドルのレニン・モレノ、中南米のユダ、嫌な支配体制を粉飾しようと努めているうそつきや、イギリスのエリートと一緒になったワシントンはトランプ政権内の準ファシストに指揮されて、帝国最後の神話、公正と正義を放棄したのだ。
 
 ハーグ裁判所の被告席に送られるべく、ロンドンはコノートスクエアにある数百万ポンドもするジョージ王朝形式の家からトニー・ブレアが手錠をかけられて引きずり出されたと想像願いたい。ニュルンベルグ裁判の基準によれば、ブレアの「主要犯罪」は、百万人のイラク人の死だ。アサンジの犯罪はジャーナリズムだ。強欲な連中の責任を問うこと、彼らの嘘を暴くこと、全世界の人々に真実によって力を与えることだ。
 
 アサンジの衝撃的な逮捕は、オスカー・ワイルドが書いたように、「[それがなければ]文明に向かう前進がないであろう 不満の種を蒔く」全員にとっての警告なのだ。この警告はジャーナリストに対して明らかだ。ウィキリークス創設者・編集者に起きたことは、新聞やラジオやTVスタジオやポッドキャストで活動している人にも起こり得る
    (中 略)
 だが今 雰囲気は変化した。「アサンジの事件は道徳的にもつれたクモの巣だ」と新聞は述べた。「彼(アサンジ)は出版されるべきでないことを出版する正しさを信じていた。だが彼は常に決して隠されるべきではなかったことに光をあてた。」
 これらの「こと」とは、アメリカが植民地戦争を行う際の殺人癖や、チャゴス島民のような弱い人々の権利を否認するイギリス外務省の嘘や、中東での聖戦主義の後援者・受益者としてのヒラリー・クリントンの暴露や、シリアやベネズエラの政府をどうすれば打倒できるかというアメリカ大使による詳細な記述、その他多くのものに関する真実だ。そうした全てがウィキリークス・サイトで入手可能なのだ。
 
 ガーディアンが神経質になるのはもっともだ。秘密警官がすでに同紙を訪れ、ハードドライブの儀式的破壊を要求し破壊させた。これに関し、同紙には前歴がある。1983年、外務省の事務員、サラ・ティズダルがアメリカの巡航核兵器がいつヨーロッパに到着するかを示す英国政府文書を漏らした。ガーディアンは称賛を浴びた。
 法廷命令で情報源を要求した際、情報源を守る基本原則で、編集者が刑務所に入る代わりに、ティズダルは裏切られ、告訴され、6カ月投獄された。
 
 もしガーディアンが真実の「もの」と呼ぶものを公表したかどで、アサンジがアメリカに引き渡されるなら、現在の編集者キャサリン・バイナーや前編集者アラ・ラスブリッジや多作の宣伝屋ルーク・ハーディングが彼の後に続くのを何者も止められない。
 ウィキリークスやスペインのエル・パイスやドイツのデア・スピーゲルやオーストラリアのシドニー・モーニング・ヘラルドの編集者から始まった一片の真実を、ニューヨーク・タイムズやワシントン・ポストの編集者が掲載するのを一体何が止めるのだろう。このリストは延々長い。
 
 ニューヨーク・タイムズの弁護団長デイビッド・マクローがこう書いた。「私は[アサンジの]起訴は、発行人たちにとり極めて良くない先例だと思う。私が知っていること全てをもって、彼は言わば典型的発行人の立場にあり、ニューヨーク・タイムズとWilLeaksを区別する上で、法律は非常な困難を味わうだろう。」
 たとえウィキリークスの漏えいを発表したジャーナリストがアメリカ大陪審に召喚されないにせよ、ジュリアン・アサンジとチェルシー・マニングへの脅迫は十分だ。本物のジャーナリズムが悪漢に違法とされているのが丸見えだ。反体制は放縦になったのだ。
    (中 略)
 これら悪漢連中にとって、本物のジャーナリズムは敵だ。10年前、ロンドンの国防省が社会秩序に対する三者で構成される「主な脅威」を記述した秘密文書を作成した。テロリストとロシア・スパイと調査ジャーナリストだ。後者は重大な脅迫に指定された
 
 文書類は適法にウィキリークスに漏らされて、ウィキリークスそれを出版したのだ。
「我々は他に選択肢はありませんでした」とアサンジは私に言った。「実に単純です。人々には知る権利や、質問し権力に異議を申し立てる権利があります。それが本当の民主主義です。」
 もしアサンジとマニングや、彼らの後で他の人々が沈黙させられたら、「知り、質問し、異論をさしはさむ権利」は剥奪されるのだろうか?
 
 1970年代、その映画で、ナチがドイツを魅了するのを助けたアドルフ・ヒットラーの親友、レニ・リーフェンシュタールに会った。
 彼女は私に、彼女の映画のメッセージ、宣伝は「上からの命令」にてはなく、大衆の「従順な空虚さ」と彼女が呼ぶものに依拠していたと言った。
 「この従順な空虚さはリベラルな知的ブルジョアジーも含んでいたのですか?」と私は彼女に尋ねた。
 「もちろん」と彼女は言った、「特に知識人。人々がもはや真面目な質問をしない時には、彼らは従順で影響されやすいのです。何でも起き得ます。」
 事実そうだった。
 その続きは言うまでもありません、と彼女は付け加えたかもしれない。