藤井聡・京大教授による「藤井聡 消費税を凍結・減税すべし!」シリーズの第5弾です。
財政の健全化を筋力の強化にたとえて分かりやすく説明しています。
文中の太字強調個所はすべて原文に拠っています。
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藤井聡 消費税を凍結・減税すべし!
<5> 財政赤字なくして、財政健全化なし!
日刊ゲンダイ 2019年4月14日
「日本の財政危機は深刻だ。だから消費増税はもう、待ったなしなのだ!」――。
これが、一般的な消費増税推進論者達の主張なのだが、こういうことを叫ぶ方々はいかに愚かな輩なのか―――というのは、先週指摘したとおりだ。
先週は、過去30年にわたって繰り返された「消費増税」(これに加えて法人・所得税減税)が、日本の低迷と、財政悪化を導いた張本人だった、ということを指摘したわけだが、今週はこの問題を別の角度からさらに解説したいと思う。
■「筋肉疲労が筋肉強化」をもたらすように、「財政赤字こそが財政強化」をもたらす。
「日本の財政危機は深刻だ!」っていう人たちは一様に、「財政赤字がダメなんだ!」という固定観念がある
だが、これが完全に間違いだ。
むしろ本来は、財政健全化のためにこそ、財政赤字が必要なのだ。
それはちょうど、「筋肉の強化」のためにこそ、「筋トレによる筋肉疲労」が必要だ、という話と同じだ。
筋肉というものは、軽く傷つけることで、その2、3日後にさらに「強靭化」される。
それが、有機体の基本的セオリーだ。つまり――、
1)「筋肉」を軽く傷つけると、
2)「成長ホルモン」が供給されて、
3)その「成長ホルモン」の力でかえって、「筋肉」が強化される。
実は、この話と「財政」の話は、全く同じものだ。
「筋肉」を「財政」、「成長ホルモン」を「資金」に読みかえると、
1)「財政」を軽く傷付けると、
2)「資金」が供給されて、
3)その「資金」の力でかえって、「財政」が強化される。
ということになるのであり、これこそが現実の財政の実態なのだ。
■財政赤字なくして、財政健全化なし!
すなわち、政府の財政が悪化すれば、その分だけ、民間に『資金』が供給される。たとえば、減税して、財政支出を拡大する、という「財政を傷つける」行為をすれば、言うまでもなく、民間に「マネー」(=資金)が流通するようになる(上記の1、2)。
そうなると、その「マネー」(=資金)によって、企業や世帯が元気になって、法人税や所得税が増えて、その結果、「財政が強化」されるのである(上記の3)。
だから、筋肉を短期的にいじめればいじめるほどに長期的な筋力が増強されるように、財政赤字を短期的に拡大すればするほどに、財政は長期的に健全化していくのである。
逆に言うなら、筋肉は甘やかせば甘やかすほどに脆弱化していくように、消費増税などを通して財政を甘やかせば甘やかすほどに財政は脆弱化していくのだ。
だからこそ、「財政赤字なくして、財政健全化無し!」なのである。
この程度のことは、筋トレに日々いそしんでいるあらゆるスポーツ選手が知っている。
有能な経営者たちも皆、新しい店を出したり新しい工場をつくったりする時に、豪気にたくさんのカネを使って、意図的に「短期的な財政を悪化させる」ことが、将来の利益を増やすことを知っている。
しかしその程度の当たり前の真実を、消費増税論者たちはいっこうに理解しようとはしない。そして彼らは、新興宗教の狂信的信者の如く、「消費増税はもう待ったなしなのだ!」と叫びたてている。
異常というほかない光景が、連日あらゆるところで展開されていることが情けなきわが国日本の実情なのだが、そんな輩たちとの不毛な論争に疲れた時には、われわれもまた時に「財政赤字なくして、財政健全化無し!」と叫ぶほかないのではないかと、思う。