「日刊SPA!」が、40代でも年収が400万円に届かない労働者が激増している問題を取り上げました。
日本にはかつて終身雇用制度のもとで年功序列制を基本とする賃金制度があり、当初は低賃金であっても30代を経て40代、50代になれば賃金はそこそこ上がり、普通の家庭を営めました。
そうした仕組みの中であの高度経済成長が成し遂げられました。勿論そのすべてが正しかったわけではありませんでしたが、そこにはそれなりの合理性がありました。
それを否定して、米国式の会社組織が良いとしたのが小泉・竹中政権で、そこでは能力給が正当とされ、落ちこぼれは自己責任にされました。当然 格差社会化が進みました。
その路線を基本的に踏襲したのが第一次安倍政権であり、それはそのまま第二次安倍政権に継承されました。第一次安倍政権の発足時には、安倍首相は、小泉・竹中政権によって生じた社会の亀裂を回復すべく「セーフティネットの構築」を盛んに強調しましたが、それは口先だけのもので、具体的な施策は何一つ行いませんでした。いまと全く同じです。
40代で年収が400万円に届かなければ家庭を営むのはかなり困難です。しかしこれは一過性の減少などではなく、構造的・恒常的なもので、むしろ今後激増すると見られています。
因みにこの収入レベルは橋本健二・早大教授の「新・日本の階級社会」の分類によれば、「旧中間階級」乃至「アンダークラス」に相当します。「400万円以下」という括り自体幅が広いので明確には分類できませんが、「階級」と呼ばれるように、いずれにしてもこの境遇から脱することは困難と見られます。
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40代・年収400万円未満の低所得おじさんが激増。誰もが陥る可能性が
日刊SPA! 2019年4月8日
40代になれば、生活に余裕が生まれる……そう夢を描いていたが、人々の手取り年収は下がり続けている。年収400万円未満の“低所得おじさん”は増加の一途を辿るばかりだ。70歳まで働く時代に日本社会が抱える課題と当事者の生活に迫る。
◆40代で年収400万円未満が激増、なぜ?
戦後最長の好景気と報じられて久しいが、実感が湧かない人も多いことだろう。今から15年前『年収300万円時代を生き抜く経済学』を出版した経済アナリストの森永卓郎氏は、こう説明する。「今後も物価は上がる一方だし、10月には消費税も上がります。都市部で暮らすには苦しいとされる年収400万円未満の人は、より一層ギリギリの生活を強いられることは明白です」
総務省の調査では東京都に住む40代男性の平均年収は717万円。また、東京都の統計によると、都民全世帯の一か月の消費支出は約32万7000円だ。年収400万円未満だと平均的な暮らしすら難しい“低所得”といえる。
しかしここにきて、40歳以上でも年収400万円未満の“低所得おじさん”が増えているという。いったいなぜか? 森永氏は、「平成の前半から続く非正規社員雇用の動きがある」と分析。NPO法人「ほっとプラス」代表理事の藤田孝典氏も、低所得おじさん増加の原因として雇用構造の変化を挙げる。
「現在の40代であるロスジェネ世代、就職氷河期世代は総じて賃金自体が低く、新卒一括採用で正社員になれなかった層が多分に含まれます。つまり、最初のつまずきを引きずってここまで来ている人が多い。
また、肩書は一応正社員だけど、最低賃金レベルでしか給料をもらえていない“周辺的正社員”も増えてきています。正社員のなかでもヒエラルキーが存在し、ボーナスがなく年功賃金も、福利厚生もないため年収は400万円に達しない。お金を貯めることもできず、金銭的に苦しい状況にある人が多くなってきています」
40歳超なのに日本人の平均年収(432万円)以下という新たな貧困予備軍である“低所得おじさん”に陥ったのはなぜか。SPA!が女性500人に調査を行い定義された“おじさん”年齢の42.9歳~55歳で都市部に在住し、個人年収400万円未満の男性300人にアンケートを実施。すると、低所得に陥った理由を「会社の給料が低い」(39%)、「非正規雇用だから」(28.7%)などと雇用条件を挙げる人が大半を占め、実際に非正規雇用やアルバイトとして働く人は30%にも上った。
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Q 現在の所得に至った理由は?(複数回答)
会社の給料が低い 39.0%
非正規雇用だから 28.7%
転職して条件が悪くなった 20.7%
好きな仕事だが儲からない 20.7%
出世するスキルがない 18.7%
持病・病気離職の経験がある 14.3%
働くのが面倒だから 8.0%
Q 雇用形態
正社員… 35.3%
自営・自由業… 32%
アルバイト・パート… 15.7%
契約・派遣… 14.3%
その他… 2.7%
都市部在住の43歳~55歳で年収400万円未満の男性300人にアンケートを実施
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◆年収500万円の手取りは10年間で30万円減に
19年以降も“低所得おじさん”の増加は予見される。年収500万円の人の手取り推移をみると、’11年の手取り435万円は、’11年、’12年に行われた児童手当の縮小や’04年から’17年まで14年連続で引き上げられた社会保険料の負担、消費増税などが相まって、この10年で405万円に。実質労働賃金は30万円減という状況だ。
「日本の社会保障は結局、企業任せ、家族任せです。さらに、いまだかつてないほどに労働分配率(企業において生産された付加価値のうち、労働者が賃金として受け取る比率)が下がっており、企業から労働者に払われるお金は少なくなっている。70歳まで働けと言われるなか、スキルを身につけず齢を重ねると将来は極めて厳しい」(前出・藤田氏)
このまま手取り減が続けば誰もが“低所得おじさん”になり得る。
<取材・文/週刊SPA!編集部>