2019年4月27日土曜日

改憲・国民投票に伴うテレビCMの規制は必須事項

 25日の衆議院の憲法審査会で、改憲・国民投票の実施に伴うテレビCMの規制をめぐって来月9日に民放連から意見を聞くことを決めましたが、与党側民放連から意見を聞いたあと、直ちに国民投票法改正案の審議と採決を行いたいと提案しました。
 
 そもそも民放連永原伸専務理事は超党派の議員連盟に対して昨年11月、
CMの量的な自主規制を民放連で行うべき合理的な理由は見いだせない」「広告という表現形態でも、その意思の表明は最大限尊重されなければならない。~ 民間事業者が、表現の自由の一部制約につながる自主規制を決めることは到底無理」と伝えています(朝日新聞 18年10月13日)。
 まさに綺麗ごとの羅列ですが、要するに資金の潤沢な側が自由にテレビCMを行うべしということで、それは新聞業界が選挙になると莫大な広告収入が入るので、「選挙は大歓迎」の立場と見られていることを想起させるものです。
 
 与党側が、民放連にそんな発言をさせた後で、テレビCMの規制を盛り込まないままの投票法改正案を多数をもって決めようとしているのは明らかです。
 
 田中淳哉弁護士は、「テレビのCM枠を確保するには、概ね3ヶ月前に大手広告代理店を通じて手続きをしなければならない」ので、「多数を握る与党側は、発議のタイミングを事実上コントロールできるから、国民投票運動期間中の広告枠を独占的に確保することすら可能」になり、「資金力のある方が有利、早い者勝ちというのでは、民主的な制度とは言えない」として、そもそもテレビのスポットCMは、映像や音を駆使して視聴者の情緒に働きかけ」るもので、「冷静な思考や判断に寄与する情報の提供が求められる国民投票に本質的になじまない」ため、「イタリア、フランス、イギリス、スペインなどの欧州諸国で、国民投票に関わるテレビスポットCMが全面禁止とされている」と述べています。
 
 民放連の綺麗ごとにだまされたり、与党側にそれに乗じさせることは厳に避けなくてはなりません。
 信濃毎日新聞の社説を紹介します。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
国民投票法 CM規制の議論深めよ
信濃毎日新聞 2019年4月26日
 国民投票のテレビCMについて、衆院憲法審査会が連休明けに日本民間放送連盟(民放連)から意見を聴くことを決めた。
 資金力のある団体が集中豪雨的にCMを流し、世論を誘導して結果をゆがめる心配が指摘されている。野党の中には規制を求める声がある。
 法的規制をすべきかどうか―。放送業界の自主的な取り組みで対応できるのか ―。時間をかけた議論が欠かせない。
 国会が発議する改憲案についてイエスかノーかの判断を示すのが国民投票だ。改憲への最後の関門になる。有効投票総数の過半数の賛成で承認される。
 
 国民が自由に意見を言えるようにするため、投票法は規制を最小限にしている。運動は政党、団体、個人を問わず誰でもできる。公職選挙法で禁止されている戸別訪問もOKだ。
 テレビCMは、投票日の14日前以降は禁止するものの、それまでは規制しない。国会による改憲発議から投票までは60〜180日ある。その間、14日前までは自由にCMを流すことができる
 民放連はかねて、CMの扱いについては自主的な取り組みに任せてほしいと言ってきた。規制が最小限になった背景にも、業界のこうした姿勢がある。
 
 民放連は先日、CMのガイドラインを決めている。▽自社の番組基準に基づいて適切な考査を行う 独占的利用を認めない ▽個人のCMは取り扱わない ―などだ。
 これで大丈夫か疑問が残る。ガイドラインは賛成、反対両派のバランスなど、量的な基準には触れていない。高額の広告料を負担できる団体のCMがゴールデンタイムで幅を利かせる可能性が否定できない。放送の公共性を踏まえた、もっと具体的で実効性の期待できる基準が必要だ。
 
 国民民主党が昨年決めた国民投票法改正案は、政党のスポットCM禁止や一定額以上の資金を使う団体の届け出制、支出の上限設定などを盛り込んだ。英国では有料CMを禁止している。
 国民投票は一般に、注意深く仕組みを整えて運用しないと思わぬ結果を招く危険がある。憲法を巡る投票では、なおさら慎重であるべきだ。
 今の投票法には最低投票率の規定がないなど、問題はほかにも多い。一から議論をやり直すつもりで中身を洗い直したい。