先に自民党の萩生田氏が消費増税延期と衆参同時選挙に言及したのは、安倍首相の意を体した観測気球であるということがメディアの一致した見方です。
消費増税延期は、実質賃金が下がり続けている現状ではごく当然のことで、本来は廃止するか5%に戻すべきものです。
植草一秀氏がいち早く、また最近では藤井聡・京大教授が論陣を張っているように、消費税が導入されてからこの30年間、消費税で税収がアップ(14兆円)した分は全て所得税(4兆円)と法人税(9兆円)の減額分に充てられました(カッコ内は16年度の増減額。仮に30年間の平均減額/年を (9+4)/2=6・5兆円と仮定すると、減額分の累計は210兆円になります)。
消費税をアップすれば景気が再起不能の状態になること自体アベノミクスの失敗を示しています。
問題は、そのことをあいまいにしたまま増税延期と衆参同時選挙を絡ませていることで、安倍首相が党利党略の衆院解散の口実に増税延期を利用しようとしている点です。
LITERAは、萩生田氏が出演して増税延期を示唆した『真相深入り! 虎ノ門ニュース』(DHCテレビ)をフェイクデマ拡散ネトウヨ番組であるとして、そのなかでもうひとつ、
「ここまで丁寧に我慢してきた。令和になったらキャンペーンを張るしかない。~ 少し『ワイルドな憲法審査』を自民党は進めていかなければならない」
と発言した方が「看過できない大暴言」だと厳しく批判しました。「ワイルドな憲法審査」には、自民党の思いのままにならない憲法審査会をすっとばして、安倍改憲案を国会に提出し強行採決するという暴挙さえ想像してしまうと述べています。
これまでの安倍政権の暴挙を思えば、あり得ないこととは言えません。
19日、市民と野党の共闘で辺野古新基地建設や9条改憲に反対する国会議員会館前行動が行われ、2400人が参加しました。その中で、この「ワイルドに進める」の発言に怒り「憲法ではなく政治を変えよう」と声が上がったのは当然のことでした。
LITERAとしんぶん赤旗の記事を紹介します。
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“安倍最側近”萩生田光一が批判されるべきは消費税延期論でなく
「ワイルド」改憲発言と『虎ノ門ニュース』の身内化だ
LITERA 2019年4月19日
やっぱり出たか ─ 。昨日、自民党の萩生田光一幹事長代行がフェイクデマ拡散ネトウヨ番組である『真相深入り! 虎ノ門ニュース』(DHCテレビ)に出演。「消費増税の延期」に言及し、波紋を広げている。本日午後に萩生田氏は「政治家としての私個人の見解を申し上げた」と釈明したが、これはそんなレベルの話ではない。
というのも、本サイトが先週、伝えたように、5月20日に公表される四半期別のGDP速報値がマイナスになる公算が強まっていることから、安倍政権では参院選に対する危機感が大きくなり、消費増税延期と衆院解散の「衆参ダブル選挙」を検討する動きが起きていたからだ(https://lite-ra.com/2019/04/post-4660.html )。
今回、安倍首相の最側近である萩生田氏が消費増税延期の可能性を口にしたのだ。これは単なる「個人の見解」などではなく、安倍首相に代わって観測気球を上げたということではないのか。
もっとも、消費税については、そもそも実質賃金が上がらないこんな状況下で逆進性の高い増税を実施しようとしていること自体がおかしいのであって、延期は当然とも言える(消費増税を前提にした予算を強行した政権が、いまさら選挙目的で、それをひっくり返そうという無節操さには呆れるが)。
むしろ、問題なのは、萩生田氏のもうひとつの発言、憲法改正についてふれた部分のほうだろう。
まず、萩生田氏は、今国会で憲法審査会がまだ1度も開かれていないことについて、「国会の一部の人たちが国民の主権を奪っている」「誰も国民は望んでいない」と憲法審査会の開催に反対する野党を批判した。
あたかも国民が憲法改正に前向きであるかのような言い方をしているが、1月におこなわれたNHKの世論調査でも、国会での憲法改正に向けた議論について「早く進めるべき」と回答したのは23%にすぎず、「急いで進める必要はない」が50%、「憲法改正の議論をする必要はない」が14%という結果だった。つまり、国民は憲法改正の議論について喫緊の必要性をほとんど感じていないのだ。
にもかかわらず、萩生田氏はこう明言したのである。
「ここまで丁寧に我慢してきた。令和になったらキャンペーンを張るしかない」
「ご譲位が終わって新しい時代になったら、少しワイルドな憲法審査を自民党は進めていかなければならない」
国民から不信感が高まっている「忖度道路」をはじめとする問題についての予算委員会の開催を拒否しながら、国民から強い要請も緊急性もない憲法審査会を「ワイルドに」進めると明言するとは──。これは看過できない大暴言だ。
憲法審査会はその名の通り、憲法という国の基礎となる最高法規を議論する場であるため、他の委員会とは違い与野党協調を重視し、与党と野党の合意の上で開催してきた。だが、与党は憲法審査会の開催を強引に迫り、野党がこれを拒否したところ、昨年には自民党の憲法改正推進本部長であり憲法審査会の幹事に就任する予定だった下村博文・元文科相が「職場放棄だ」とテレビ番組で暴言を吐くという問題が勃発。これを受けて自民党は下村元文科相を幹事と委員から辞退させた。さらに、同じく昨年には、衆院憲法審査会の開催を野党の合意なく自民党・森英介会長の職権を濫用して強行するという掟破りに出た。今国会でも、与野党の合意がないまま森会長が職権での幹事懇談会開催を決定するなど、自民党の暴走はつづいている。
消費税延期論と「ワイルドな憲法審査」発言が物語る安倍首相と側近の思惑
よくこれで「丁寧に我慢してきた」などと言えたものだが、その上、飛び出した「ワイルドな憲法審査」なる発言。これはまさに、憲法審査会をすっとばして安倍改憲案を国会に提出し、強行採決を繰り返して国会発議にもっていくという暴挙さえ想像してしまうような乱暴な発言ではないか。
そして、気になるのは、この発言が消費増税延期論と同時に出てきたことだ。
安倍首相にとって、もっともプライオリティが高いのは、任期中に憲法改正を実現させることのほうだ。ところが、前述したように、5月20日に公表される四半期別のGDP速報値がマイナスになる可能性はかなり高く、萩生田氏が警戒する6月の日銀短観と合わせ、「アベノミクス失敗論」が出てくることは必至。もし、そのまま参院選に突入すれば、憲法改正勢力が3分の2割れし、憲法改正が不可能になるのは必至だ。
そうならないためには、消費税増税を延期するか、憲法審査会を強行して参院選前に改憲ムードを盛り上げるかしか、選択肢はないのである。
政治状況を考えると、両方とも現実味があるとは思えないが、それくらい安倍首相とその側近たちが憲法改正に執着しているということだろう。
しかも、暗澹とさせられるのは、萩生田氏が「消費増税延期論」と「ワイルド改憲」を口走った場がフェイクデマ拡散ネトウヨ番組である『真相深入り!虎ノ門ニュース』だったということだ。
ネトウヨ番組『虎ノ門ニュース』に5度出演し、今回は重大発言
(中 略)
マスコミは、安倍首相の最側近で政権与党幹部である人間が、フェイクデマを垂れ流しているネトウヨ視聴者しかいないような極右ネット番組で政局を左右するような発言をしたことを、もっと厳しく批判すべきだったのだ。
しかも、萩生田氏は同番組で、日韓関係について「常軌を逸した反日行動がつづくのであれば党としては覚悟をもって望まなければならない」などと経済的な対抗策をとる可能性にふれ、「韓国から買うもので入ってこなくて困るものってあんまりないんですよね。JINROと焼肉とキムチだから」などと発言。日本にとって韓国は第4位の輸入相手国(2017年)であり、その内訳は石油製品や鉄鋼板、半導体などなのだが、そうした事実も無視して萩生田氏はネトウヨ全開のトークを繰り広げていた。
(後 略)
自民・萩生田氏が発言 「憲法審査 ワイルドに」 一方的強行を狙う
しんぶん赤旗 2019年4月20日
自民党の萩生田光一幹事長代行は18日のインターネット番組で、今国会で衆参両院憲法審査会が開かれていない状況について「(天皇の)譲位が終わって新しい時代になったら、ワイルドな憲法審査を自民党は進めていかないといけない」と述べました。改元される5月以降に与野党の合意なく一方的に憲法審査会の開催を強行する考えを示したものです。
萩生田氏は審査会について、「委員長の判断で開催を無理にやることはできる。野党と合意しようと現場は頑張っているが、そろそろしびれちゃってる」と発言。その上で「ここまで丁寧にやってきてそれでも(野党が)聞かない。総理がたびたびスケジュール感の発信をすると責められる。発信してもだめ、静かにしてもだめだったら、もうやるしかない」と語りました。
野党側は同氏の発言を批判し、同日予定されていた衆院憲法審の筆頭幹事間協議を拒否しました。
このため萩生田氏は19日、憲法審の運営をめぐる自らの発言について「野党の皆さんに不快感を与え、結果として(18日に)協議が成立しなかった。憲法審査を前に進めていただきたいという私の本意とは違う」と述べ、発言を陳謝し、訂正しました。党本部で記者団に語りました。
萩生田氏は日本会議議連事務局長を務め、官房副長官や自民党総裁特別補佐を歴任した安倍首相の側近中の側近です。