陸上自衛隊は、宮古、石垣両島(沖縄県)と奄美大島(鹿児島県)に計約2000人規模の警備部隊とミサイル部隊の配置を計画しており、その一つの宮古島にこの3月、陸上自衛隊駐屯地が開設されました。
ところが計画を説明する際には倉庫だとして、住民がどんなに追及しても弾薬庫ではないと言い張っていたのに、実際に完成すると、それは周囲を盛土で覆った54m×53mの巨大なコンクリート製の弾薬庫でした。
駐屯地の発足式から3日後の3月29日、防衛省は東京新聞の取材に対し、「誘導弾などの弾薬を詰め、周りをコンクリートで覆い、盛り土をする弾薬庫だ」と明確に認め、「説明が不十分だった」と白々しい言い訳をしました。完全なだまし討ちです。
「ミサイル基地いらない宮古島住民連絡会」の清水早子事務局長は「事実を隠し、虚偽説明を続けたのは許せない。弾薬庫のすぐ横には給油所があり、百メートルほど離れた場所には民家がある。非常に危険だ」と憤っています。
政府は何度も「沖縄の基地負担軽減」を繰り返していますが、おこなっていることは住民を騙し基地の負担をますます強めていることです。
駐屯地周辺の野原自治会の仲里千江美さんは「政府がやってるのはいじめそのものだ」と非難しています。
なぜ防衛省は住民にウソをついて騙すという非道が出来るのでしょうか。
自衛隊は災害時などに救援活動をするという国民に信頼される存在である反面、このように住民を平然と欺き、場合によっては威圧するという強面の側面があり、状況によってそちらの振る舞いが優先的になることは大いにあり得ます。これこそ決して見落としてはならない点です。
自衛隊は災害時などに救援活動をするという国民に信頼される存在である反面、このように住民を平然と欺き、場合によっては威圧するという強面の側面があり、状況によってそちらの振る舞いが優先的になることは大いにあり得ます。これこそ決して見落としてはならない点です。
東京新聞の2本の記事を紹介します。
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防衛省、設計図と異なる説明 宮古島に弾薬庫
東京新聞 2019年4月1日
三月に開設したばかりの沖縄県・宮古島の陸上自衛隊駐屯地。島民に事前説明のなかった弾薬庫が設置されていたことが発覚した。中距離多目的誘導弾などの弾薬が配備されるのにもかかわらず、防衛省は「保管庫」と繰り返し、島民に示した「施設整備概要図」では、弾薬庫を実際よりも小さく描いていた。(望月衣塑子)
「保管庫にしてはあまりにも大きい。弾薬庫なのではないか」。島民有志が沖縄防衛局に開催を要求した那覇市でのヒアリングを翌日に控えた昨年十二月二日、「ミサイル基地いらない宮古島住民連絡会」の清水早子(はやこ)事務局長(70)は、資料を分析しながらハッと気付いた。
防衛局が住民説明会で配布した「施設整備概要図」には、「保管庫」と記された建物が二つあった。いずれも、隣接する「事務所」とほぼ同じサイズだった。
ところが、清水さんらが昨秋に独自ルートで入手した工事業者の設計図では、二つの「保管庫」の面積が異なっていた。一つは四メートル四方だったが、もう一つは五十四メートル×五十三メートルと約百八十倍もあった。
「施設整備概要図」の完成イメージ図を改めて見ると、「保管庫」の場所には四角すい状のものが確認された。韓国や沖縄本島の米軍基地で見た弾薬庫とそっくりだった。実際、工事が進むと、弾薬庫を覆ったとみられる盛り土が現れ、入り口らしき場所の外には、爆発した際に被害を食い止める土堤も築かれた。
清水さんらは那覇市でのヒアリングでも、その二日後の東京・参院議員会館での防衛省職員からのヒアリングでも「弾薬庫でないのか」と追及したが、防衛省側は「自動小銃などの小火器を入れる保管庫で弾薬庫とは違う」と言い張った。
しかし、駐屯地の発足式から三日後の三月二十九日、防衛省は取材に「小さい方は発炎筒や導火線などを入れる保管庫だが、もう一つは誘導弾などの弾薬を詰め、周りをコンクリートで覆い、盛り土をする弾薬庫だ」と明確に認めた。
清水さんは「事実を隠し、虚偽説明を続けたのは許せない。弾薬庫のすぐ横には給油所があり、百メートルほど離れた場所には民家がある。非常に危険だ」と憤る。
地元の市民グループ「てぃだぬふぁ 島の子の平和な未来をつくる会」共同代表の石嶺香織さん(38)は「防衛省は、住民に事実を明らかにして説明する義務がある。『住民を守る』と言いながら、実際は安心できない生活環境を押し付けている。沖縄戦の記憶から、弾薬庫が真っ先に攻撃されるのは明らか。再び島が標的にされる」と訴える。
駐屯地周辺の野原(のばる)自治会が配備反対から事実上の容認に転じた際の会長だった平良信男さん(57)は「防衛局は発射装置だけで弾薬は一切置かないと説明し、自治会も容認に転じたが、話が全然違う。防衛局は島民にうそをつき続けた」と悔しがる。
同自治会の仲里千江美さん(68)は「政府は何度も『沖縄の基地負担軽減』を繰り返すが、宮古島では、島民の基地負担はますます重くなっている。政府がやってるのはいじめそのものだ」と非難した。
陸自駐屯地 「保管庫」実は弾薬庫 宮古島民「だまし討ちだ」
東京新聞 2019年4月1日
南西諸島防衛強化の一環で宮古島(沖縄県宮古島市)に新設された陸上自衛隊(陸自)駐屯地に弾薬庫が設けられ、同駐屯地の警備部隊が使用する中距離多目的誘導弾と迫撃砲が配備されることが分かった。防衛省は「弾薬庫ではなく、小銃などの保管庫」と地元に説明していたが、本紙の取材に「説明が不十分だった」と認めた。島民からは「完全なだまし討ちだ」と批判が噴き出している。(望月衣塑子)
宮古島駐屯地は三月二十六日に開設した。敷地面積は約二十二ヘクタールで、警備部隊三百八十人が配置された。
同省整備計画局は取材に対し、弾薬庫の設置を認めた上で「中距離多目的誘導弾や迫撃砲は具体的に名前を出して説明しておらず、不十分だった。住民から要望があれば説明し、理解を促していきたい」とした。
同省によると、弾薬庫の面積は約二千五百平方メートル。配備される中距離多目的誘導弾は、同省技術研究本部(現防衛装備庁)と川崎重工業が開発した対舟艇・対戦車ミサイルで、全長一・四メートル、胴体直径〇・一四メートル、重さ二十六キロ。高機動車の荷台に六発の誘導弾を収めた発射器とレーダーなどの誘導システムが搭載され、同時多目的交戦や夜間交戦能力を持つ。
宮古島駐屯地を巡っては二〇一五年五月、左藤章防衛副大臣(当時)が下地敏彦市長を訪問し、陸自の警備部隊とミサイル部隊の配備を打診。候補地のゴルフ場「千代田カントリークラブ」周辺の野原(のばる)自治会(五十六世帯)は一六年三月、千代田自治会(二十九世帯)は同八月に配備反対を決議した。
同九月に若宮健嗣防衛副大臣(当時)が「ヘリパッドや地対艦・地対空誘導弾を保管する火薬庫を整備する計画はない」と伝えると、下地市長は「弾薬庫が一切ないと説明を受けて一安心している」と応じた。沖縄防衛局はその後、地元自治会への三回の説明会で「弾薬庫とヘリパッドは造らない。小銃などの小火器を入れる保管庫を置くだけだ」などと繰り返した。
一七年十一月の駐屯地着工後、一八年二月には、千代田自治会が自衛隊員の自治会への加入や公民館の建て替えなどを求める陳情書を防衛局と市に提出し、事実上の容認に転じた。野原自治会も同三月に反対決議を撤回した。
地元の市民グループ「ミサイル基地いらない宮古島住民連絡会」の仲里成繁(せいはん)さん(65)は「『小火器』『小銃』『保管庫』と聞こえのいい言葉を並べて島民に基地建設を容認させた。しかし実態は、迫撃砲や中距離多目的誘導弾を入れる弾薬庫そのものだった。政府はミサイル基地を造るためにうそをつき、住民をだました」と話している。
<南西諸島防衛の強化> 沖縄・尖閣諸島周辺の東シナ海などへの海洋進出を活発化させる中国などを念頭に、2013年12月の防衛計画大綱と中期防衛力整備計画(中期防)で打ち出された。陸上自衛隊は16年3月、日本最西端の与那国島(沖縄県)に160人規模の沿岸監視隊を新設。宮古、石垣両島(同)、奄美大島(鹿児島県)に計約2000人規模の警備部隊とミサイル部隊の配置を計画している。