産経新聞が、7日に投開票された41道府県議選での各党の得票率をもとに、夏の参院選(改選124)での獲得議席を試算したところ、自民党は過半数を割り、憲法改正の発議に必要な3分の2には、自公と維新の3党を合わせても届かなかったということです。
まさか直近の参院選でそこまで落ち込むとは思っていなかった安倍首相が考えることはただ一つです。この6月にも消費税アップの再々延期を打ち上げて、衆参同時選挙を行うというものです。
野党の体制が整わないうちに解散を打ち、それと増税延期で「信を問う」の名目を組み合わせれば必勝が期せることは、これまで確認されてきたことです。
安倍首相は14年4月に消費税を5%→8%に上げましたが、たちまち悪影響がでたため、その年の11月に、15年10月に決まっていた10%へのアップを延期することにして、「信を問う」の名目で衆院解散に踏み切り圧勝しました。16年6月にも「新しい判断」で増税を再延期するとして、直後の参院選で勝利を収めました。
三度目の柳の下のドジョウを求めて、今度もその路線をとることはまず確実と思われます。実に姑息で身勝手な戦術ですが安倍氏なら躊躇はしません。
日刊ゲンダイは、増税の延期は当然のことではあるものの、安倍内閣がそれを選択するのであれば、アベノミクスの失敗を謝罪して内閣総辞職するのが筋であるとしました。「増税できる経済状況ではない」と野党が予算案に反対したのを押し切って成立させたのですからなおさらです。
それをさも英雄気取りで『信を問う』とはあり得ないこと(本澤二郎氏)で、それに鉄槌をくだすこともなく、これまで3回にわたって安倍自民党を勝たせてきたことが、今日の彼の厚顔無恥を生み出しました。勿論全く批判をしないできたメディアにも責任があります。
日銀は安倍政権と連携して、これまで約470兆円もの国債買い入れに加えて、ETFで実に28兆円超もの日本株を買い入れてきました。それは海外ファンドの売りで株価が下がった分を買い戻すことに使われる結果、ファンドは下がった直後に株を買えば、すぐに元の株価に戻り大儲けができるわけです。
アベノミクスは結局、海外ファンドや輸出産業などの大企業、富裕層を大儲けさせただけで、庶民は実質賃金が下がりひたすら貧しくなっただけでした。
日本の経済を建て直すためには安倍内閣は一刻も早く退場することです。
日刊ゲンダイの記事と併せてNEWS ポストセブンの記事を紹介します。
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増税延期なら安倍退陣が筋 ドサクサW選という狂った論法
日刊ゲンダイ 2019年4月23日
阿修羅 文字起こしより転載
統一地方選が終わり、永田町には解散風が吹き始めた。最大の誘因は、大阪12区と沖縄3区の衆院補選で自民党が「ダブル敗北」を喫したことだ。夏の参院選でも議席を大幅に減らすのではないかと、与党内では警戒感が高まっている。
日本維新の会が根強い支持を得ている大阪と、基地問題で安倍政権に痛めつけられてきた沖縄は事情が「特殊」だから、「参院選への影響は限定的」という見方もあるが、第2次安倍政権の発足後、衆参の補選で負けたのは初めてだ。痛手には違いない。
統一地方選前半戦の7日に投開票された41道府県議選での各党の得票率をもとに、産経新聞が夏の参院選(改選124)での獲得議席を試算したところ、自民党は過半数を割り、憲法改正の国会発議に必要な3分の2には、自公と維新の3党を合わせても届かなかったという衝撃的なデータも出てきた。で、急浮上しているのが衆参ダブル選である。
参院選単独では負ける可能性があるが、衆参ダブル選なら政権選択選挙になる。野党がバラバラで共闘体制が整わないうちに、解散に打って出れば圧勝できるという姑息な戦略だ。
安倍首相が10月に予定されている消費税増税の延期を決め、例によって「国民に信を問う」という口実で衆院を解散するという臆測が一気に広がっているのだが、倒錯しているとしか言いようがない。
「総理がやると言えばやる」
増税断念は、アベノミクスの失敗を認めることと一体だ。本来なら、自らの政策失敗を謝罪して、内閣総辞職が筋である。
それなのに、「ダブル選にすれば勝てそうだから、消費税を解散のネタにしてしまおう」なんて、よくもまあ、そんな恥知らずなことを考えられるものだ。
「日本の経済状況を考えれば増税凍結は当然ですが、『アベノミクスで景気が良くなったから増税する』などと威勢のいいことを言っておいて、増税断念に追い込まれれば、普通は責任を取って退陣し、次の政権に経済政策を委ねますよ。自分の失敗を棚に上げて、英雄気取りで『信を問う』なんて、普通ではあり得ない厚顔ぶりですが、安倍首相は自分が生き延びるためなら何でもやる。前言撤回も嘘も平気だから、増税延期でイケシャーシャーと衆院解散に打って出る可能性は十分あります。だからこそ、側近の萩生田幹事長代行を使って、観測気球を揚げさせたのです」(政治評論家・本澤二郎氏)
18日にネット番組「真相深入り!虎ノ門ニュース」に出演した萩生田幹事長代行は、日銀短観で景気が落ちていることを踏まえ、こう発言していた。
「この先、(景気が)危ないぞってところが見えてきたら、崖に向かって皆を連れて行くわけにはいかないので、また違う展開はあると思います。(増税を)やめるとなれば、国民の皆さんの了解を得なければならないから、『信を問う』ということになりますよね」
まったく、崖っぷちまで連れてきたのは誰なのかと言いたくなるが、衆参ダブル選の可能性について、22日の会見で聞かれた菅官房長官も「衆院解散は総理の専権事項なので、総理がやると言えばやるし、やらないと言えばやらない」と含みを持たせた。問題は、こうしたヨコシマな政府や与党幹部の言動を無批判で垂れ流すメディアの側にもある。
増税予算案に反対した野党と国民を愚弄
そもそも、3月末に成立した今年度予算は、消費税増税を前提にしたものだ。だから、増税に反対の野党は予算案にも反対した。
与党側の賛成多数で可決した予算案には、増税対策も盛り込まれている。いわゆるバラマキもある。この予算を掲げて、与党は統一地方選を戦ったのだ。
それが地方選が終わった途端、「やっぱり増税は延期」なんて話が出てくるのは、道理が通るのか。「増税できる経済状況ではない」と予算案に反対した野党の方が正しかったのではないか。
野党と国民に頭を下げ、退陣するならまだ分かるが、増税延期で選挙をやろうなどという狂った論理を許していいはずがない。税制と選挙の私物化ではないか。解散権を弄ぶ首相の態度は不謹慎極まりなく、厳しく糾弾すべきものだ。「増税延期↓衆院解散」という姑息な思惑に乗っかり、政局報道で騒いでいるだけの大メディアはいよいよイカれていると言わざるを得ない。
「増税延期はもちろん歓迎すべきことです。法人税減税の穴埋めとして、国民の富を大企業に付け替える消費税は、凍結どころか廃止した方がいい。しかし、アベノミクスに経済を上向かせる効果がなかったことは、きちんと統括する必要がある。異次元緩和で円安にして株価を上げ、内閣支持率が上がればいいという安易な発想でズルズル続けているうちに、日本経済はすっかりおかしくなってしまいました。円安も加工業や家計にとってはマイナスの効果が大きくなり、安倍政権は統計をゴマカさなければならないところまで追い詰められています。増税延期ならアベノミクスの失敗を潔く認め、選挙より先にすべきことは日銀の黒田総裁の更迭です」(経済アナリスト・菊池英博氏)
日銀は約470兆円もの国債買い入れに加え、マイナス金利まで導入。それでも当初掲げた物価上昇目標は、いつまで経っても達成できそうにない。国際社会からは、その政策効果を疑う声も出ている。
元米財務長官でハーバード大教授のローレンス・サマーズ氏とノルウェー中銀のエコノミストらは今年1月、マイナス金利は銀行の貸し渋りを招き、経済を冷やすと主張する論文を発表した。
金融政策も株式市場も私物化
6年経ってもアベノミクスは『道半ば』なんて通用しないと思いますが、金融政策も安倍政権に都合のいいように使われてきた面があります。マイナス金利で金融機関は青息吐息ですが、政府は国債の利払いから逃れ、赤字を日銀に付け替えることができる。マイナス金利は結果として、欠陥軍用機の爆買いなど、安倍政権の放漫財政を助けています。安倍政権は黒田日銀と結託して市場も私物化し、異次元緩和で株価を吊り上げ、好景気を装ってきた。そうやって海外のファンドを儲けさせているだけです。その分、国民は実質賃金低下などのツケを払わされているのです」(菊池英博氏=前出)
日銀は国債だけでなく、日本株のETFも年間約6兆円購入している。時価ベースの保有残高は3月末時点で28兆円超に上る。日経新聞が、日銀が公表する買い入れ基準などをもとに実質保有額を試算したところ、日東電工やファナック、オムロンなど23社で筆頭株主になったとみられるという。上位10位以内の「大株主」基準では、3月末時点で上場企業の49・7%で日銀が大株主となった。上場企業の半分だ。日本はいつの間に社会主義国家になっていたのかと驚くばかりである。
黒田総裁は16日の衆院財務金融委員会で、ETF購入は「株価安定のために実施している」と口を滑らせた。直後に「物価目標の実現のため」と訂正したが、思わずホンネが出てしまったのではないか。
安倍は14年11月に消費税増税の延期で「信を問う」と衆院解散に踏み切って圧勝。16年6月にも「新しい判断」で増税を再延期し、直後の参院選で勝利を収めた。その結果、アベノミクス失敗の責任はウヤムヤになり、好景気が偽装され、金融緩和も出口も見えないまま続いている。
二度あることは三度というが、この国はまた同じ過ちを繰り返そうとしているのか。増税延期なら、今度こそ安倍の責任を問う必要がある。黒田辞任と安倍内閣総辞職。この国を崖っぷちまで追いつめた落とし前をキッチリつけさせる。それが大メディアの役目ではないのか。
安倍政権、増税延期どころか「消費税5%に下げる」案が浮上
NEWS ポストセブン 2019年4月23日
週刊ポスト2019年5月3・10日号
補選での2敗など求心力に陰りが見えた安倍晋三首相にとって、夏に控える参院選必勝の切り札とされるのが3回目の「消費税増税延期」説だ。
安倍側近も「景況感次第で延期もあり得る」(萩生田光一・幹事長代行)と示唆しているが、有権者も同じ手には引っかからない。
そこで浮上しているのが消費税率を5%に引き下げる消費税減税というサプライズである。
麻生太郎・副総理兼財務相らは増税断行を目指してきたが、4月16日から始まった日米貿易交渉で風向きが変わった。トランプ政権は消費税の輸出戻し税を自動車などへの「輸出補助金」と批判し、10月からの消費増税を問題視したからだ。
そのうえ景気に急ブレーキがかかる雲行きがある。大和総研が3月に発表した「日本経済中期予測(改訂版)」では、
〈2019年以降、トランプ政権の迷走、中国経済や欧州経済の悪化、残業規制の強化、株価下落による個人消費の悪化など内外の様々な下振れリスクが顕在化した場合、日本の実質GDPは最大で3.6%程度減少する可能性がある〉
と見ている。リーマンショック当時のGDPマイナス3.7%に匹敵する事態だ。逆に舵を切れば、景気減速を防ぎ、選挙にも有利、米国の圧力もかわす一石三鳥になる。それが「サプライズ減税」の動機のようだ。
問題は“閣内不一致”だ。日経新聞政治部OBの政治ジャーナリスト・宮崎信行氏が語る。
「安倍首相が減税を決断すれば、今度こそ増税できると準備を進めてきた麻生財務相は完全に面子を潰され、抗議の辞任をするはずです。第二派閥の麻生派が反安倍に回る。さらに岸田派など党内の財政再建派も黙っていない」
たとえ選挙を乗り切ったとしても、安倍首相の足元に火が付く。