2019年4月4日木曜日

再審法改正めざす 冤罪被害者・弁護士らが集会

 冤罪の再発防止や被害者救済のために刑事再審法の改正を求める集会が2日、国会内で開かれ冤罪被害者や弁護士、支援者ら約85人が参加しました。
 
 日本の刑事裁判での有罪率は99.9%とされ世界でも突出しています。海外での有罪率は70%前後と言われているので、その世界平均に倣えば日本の裁判では30%ほどが冤罪ということになります。実に恐ろしいことで、司法修習所で教えられるというあの「99人の真犯人を逃すとも1人の無辜を罰してはならない」の精神はいったいどうなったのでしょうか。
 ゴーン氏の勾留で改めて日本の「人質司法」世界から批判されました。そこには無理やり自白をさせるという人権蹂躙だけがあって、「被疑者は推定無罪」の原則が実現していないからです。
 
 それなのに再審の道が開かれるのは「ラクダが針の穴をくぐるよりも難しい」と言われます。
 司法統計によると、地方裁判所に再審を求めた人は2015年で338人いました。うち181人に判断が出ましたが、再審開始を認めたのは1人だけでした。そもそも「無罪を言い渡すべき新しい、明白な証拠」をそろえないと再審の申し立てができないのですが判事が先輩や検察に遠慮して認めないという要素も大きいのではないでしょうか。
 
 検察・警察は、はじめの段階において事件にかかわるあらゆる証拠品を押収しますが、何を押収したかの開示はせず、裁判所も検察側に開示させる訴訟指揮を行いません。要するに被疑者に有利な証拠は隠されるということです。それでは公平な裁判などはあり得ないので、結局は、検察側の意に沿った判決を下すことなります。
 検察は横暴ですが、裁判所側にもそれを阻止する正義感と気迫が見られません。被疑者の人権を守るという観点は希薄です。
 
 全証拠が開示されないことが被疑者の弁護や再審請求を困難にしていることについては、 例えば伊藤和子弁護士(NGOヒューマンライツ事務局長)は、ブログ「東電OLえん罪事件が示す刑事司法改革の課題- DNA鑑定・証拠開示に関する抜本的制度改革が急務である」(12年11月13日)の中で、証拠品の開示の必要性について、
被告人に有利な証拠、または有利である可能性のある証拠について、検察側が弁護側に第一審公判前に開示することを義務付けること。
再審段階における証拠開示のルールを明確に定める。
などの改善提案を行っていますが、残念ながら何の前進もありません。
    ⇒1211月13日) 司法改革の具体案が・・・
 それどころかより悪質化が志向されているありさまです。
 
 しんぶん赤旗の記事と信濃毎日新聞の社説を紹介します。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
再審法改正めざす 冤罪被害者・弁護士ら集会
しんぶん赤旗 2019年4月3日
 冤罪(えんざい)の再発防止や被害者救済のために刑事再審法の改正を求める集会が2日、国会内で開かれました。
「再審法改正をめざす市民の会・結成プレ企画」として呼びかけられ、冤罪被害者や弁護士、支援者ら約85人が参加。検察官による不当な再審妨害(不服申し立て)の禁止や全面的な証拠開示など同法改正の必要性を指摘しました。
 
 熊本地裁の再審(3月28日)で宮田浩喜さんの無罪が確定した松橋事件弁護団の齊藤誠共同代表が報告。証拠品の開示が無罪判決を得るために重要だったとして「冤罪に苦しんでいる人々を救うための法制度の確立を」と訴えました
 大崎事件弁護団の鴨志田祐美弁護士は、検察の即時抗告により3度の再審開始決定が覆されてきたことに触れて「命をかけて無実を訴えている人が事件から40年がたっても救われていないのは、検察による再審妨害があったからだ。是正するためには法改正しかない」と強調しました。
 3月に「冤罪被害者の会」を結成した青木恵子代表(東住吉事件)は「検察は21年間も証拠品を隠し続け、即時抗告で刑の執行停止まで取り消された。怒りがわいてくる」と述べ、桜井昌司さん(布川事件)は「冤罪被害者の声で必ず道理が通る再審法に改正したい」と力を込めました。
 日本共産党の藤野保史衆院議員が「与野党を超えて再審法改正に取り組んでいきたい」と決意を述べました。
 
 
社説 松橋事件の再審 冤罪検証する仕組みを
信濃毎日新聞 2019年4月3日
 一日も早く冤罪(えんざい)被害の回復を図るため、再審の確定から半年足らずで無罪判決を出した裁判所の姿勢は評価できる。ただ、なぜ誤判に至ったかの検証がおろそかになった面は否めない。
 熊本県で1985年に起きた松橋(まつばせ)事件である。宮田浩喜(こうき)さんは、将棋仲間の男性を殺害したとして懲役13年の判決が確定し、服役を既に終えている。
 事件から34年。85歳になった宮田さんは脳梗塞の後遺症や認知症で最重度の要介護認定を受け、意思疎通も思うに任せない状態だ。弁護団や支援者は、存命中の再審無罪をと訴えていた。
「犯人であることを示す証拠はなく、殺害は認められない」。再審無罪を言い渡した熊本地裁の判決は、誤判に言及せず、宮田さんに謝罪する言葉もなかった。
 再審の決め手になったのは、検察が公判で開示していなかった証拠だ。捜査段階の自白で「犯行後に燃やした」としていた布きれを検察が弁護団に開示したのは、有罪が確定した7年後だった。
 自白のほかに犯行を裏づける物証はなかった。ないはずの布きれがあったことで自白の信用性は否定された。布きれの存在が公判時に分かっていたら、有罪判決が出たとは思えない。
 刑事裁判で最も重んじるべきは、無実の人を罰しないことだ。虚偽の自白に追い込んだ捜査手法や、検察の証拠開示のあり方とともに、自白に依拠して有罪と認定した裁判所の責任が厳しく問われなければならない。
 欠かせないのは、誤判の原因を究明し、なぜ冤罪を防げなかったかを検証することだ。松橋事件のほかにも冤罪は相次いでいる。個々の事例を徹底して調査し、刑事手続きや裁判のあり方を見直していく仕組みをつくれないか。
 日弁連は、第三者機関の設置を求める意見書を2011年に出している。捜査機関や裁判所から独立して調査がなされるべきだと指摘し、国政調査権を持つ国会に置くのが最も適当だとした。
 あらためて目を向けたい提言だ。再審無罪が確定した事件を対象に、司法権の独立を尊重した仕組みにする必要がある。英国では70年代から、独立した調査委員会が設けられているという。
 冤罪は人の一生を損なう重大な人権侵害である。被害回復の妨げになっている再審制度の不備を改めるとともに、そもそも冤罪を生まないために、刑事司法制度の問題点を具体的に洗い出し、改革を進めなければならない。