衆院2補選における自民党の敗北は、安倍第二次内閣発足以来初めてのことです。
特に大阪12区の「弔い選挙」まで落したショックは大きく、党内で衆参ダブル選を求める声が大きくなるだろうと見られています。
それは安倍首相の求心力の失墜にほかならないのですが、実は、外遊中の安倍首相にとってはまさに「渡りに舟」の話です。彼は衆参同時選挙に持って行きたかったがために、先般、萩生田氏に消費増税延期・衆参同時選挙の観測気球を上げさせたのでした。
消費増税を止めることは極めて当然のことですが、本来それと同時選挙とは何の関係もないことで、野党の選挙準備が整わないうちに衆院を解散すれば自民党が有利になるという党利党略から、「風が吹けば桶屋が儲かる」もどきの理屈を振りかざして強行しようとしているだけです。
残念ながら安倍首相の場合は、それがどんなに卑劣なことであっても自分たちに有利であれば実行すると思います。
日刊ゲンダイは「野党は一刻も早くまとまって、迎え撃つ態勢を整える必要がある」と述べています。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
衆院2補選惨敗で自民真っ青 … 夏の“衆参W選”へ一気に現実味
日刊ゲンダイ 2019/04/22
21日投開票の衆院2補選は、ともに自民党が敗北を喫した。国政選挙での2敗だから、政権へのダメージはデカい。党内では、夏の参院選に向けての危機感が広がり、一気に衆参ダブル選が現実味を帯びてきた。
沖縄も大阪も、午後8時に対立候補の「当確」が報じられる“秒殺”だった。第2次安倍政権が発足した2012年以降、自民党が候補を立てた補選で負けたのは初めてだ。「ついに安倍1強時代も終焉か」と、改選を控えた自民党の参院議員は真っ青になっている。
沖縄3区は、自民公認の島尻安伊子元沖縄北方相が「オール沖縄」が推す屋良朝博氏に惨敗。自民党議員の死去に伴う“弔い選挙”で楽勝だったはずの大阪12区も、自民の北川晋平氏が日本維新の会の新人に大差で敗れた。
「沖縄の敗北は当初から織り込んでいましたが、本来なら勝てるはずの大阪を落としたことが痛い。安倍総理が最終日に大阪入りし、12区だけで3カ所も応援演説をするという異例のテコ入れをはかっても、全く差が縮まらなかった。桜田前五輪担当相や塚田前国交副大臣が立て続けに失言で辞任したことも、有権者におごりや緩みと受け取られ、少なからず選挙に影響したと思う。ただでさえ、参院選は与党に“お灸を据える選挙”になりやすい。少しでも逆風が吹けば厳しい結果になる。補選の惨敗で、党内で衆参ダブル選を求める声が大きくなりそうです」(自民党関係者)
参院選単独だと、与党が負けても政権交代しないという安心感もあって、“お灸を据える”心理が強く出る。そのうえ自民党が消費増税を掲げていては、とても戦えないというのだ。そこで根強く囁かれているのが、6月に安倍首相が消費増税延期を打ち出し、信を問うと言って衆院を解散するシナリオだ。衆参ダブル選なら与党に有利というセオリーがある。
「沖縄のように、野党が一本化して自民党との対決姿勢を鮮明にすると手ごわい。野党がバラバラで共闘の態勢が整っていないうちに、衆参ダブル選挙を仕掛けたいという誘惑に安倍首相が駆られるのは当然でしょう。側近の萩生田幹事長代行に消費増税延期を言わせて、観測気球をあげたのもそのためです。来年は東京五輪もあるし、この先、衆院解散を打てるタイミングはそう多くない。今夏が絶好のチャンスなのは間違いありません」(政治ジャーナリスト・山田厚俊氏)
■連休明けに首相が判断
22日から安倍首相は欧米へ外遊。トランプ大統領との首脳会談が御用メディアで大々的に報じられる頃には、世間は10連休に突入する。
連休中には皇位継承や「令和」への改元があり、お祭りムードのまま連休が明ければトランプ来日、6月に大阪で開催されるG20で安倍がホスト役と、“安倍劇場”が続く。
「夏まで野党の出番はどこにもない。安倍首相の求心力が高まる一方です。選挙を考えたら、こんなチャンスはめったにありません。連休明けの5月中旬までに、安倍首相が衆参ダブル選の可否を判断するとみられます」(官邸関係者)
野党は一刻も早くまとまって、迎え撃つ態勢を整える必要がある。