2019年4月9日火曜日

「消費増税待ったなし!」は全くのデタラメ

 かなり革新的な人からも「財政健全化のためには消費税アップはやむを得ない」という発言がよく聞かれます。所得税や法人税を忘れてしまったかのような発言で残念なことです。
 
 1989年に3%の消費税が導入されてから丁度30年になりますが、この間に消費税額は13兆円/年に増大しましたが、法人税は7兆円、所得税は8兆円、合計で15兆円/年も「減額」されました。
 消費税を課す分 法人税と所得税を安くした、逆の言い方をすれば、法人税と所得税を減らすために消費税を導入した ことは一目瞭然です。こうして30年間の累計で数百兆円が「減額」されたのですから、国家財政がおかしくなるのは当たり前のことです。
 消費税をアップするのではなく、逆に下げるか廃止して、法人税と所得税をあげることこそが正しい道です。
 
 2012年末安倍内閣の発足と共に内閣官房参与に就き、10%消費税増税に伴う深刻な問題を指摘して昨年末任した藤井聡京大学大学院教授が、「消費増税待ったなし!」のデタラメを明解に指摘しました。
 消費増税は確実に消費を縮小させ、法人の収益を縮減させ、それを通して国民の所得も確実に縮小させるが、所得税(や企業の収益に掛ける法人税)を上げても経済への悪影響は消費増税よりも格段に小さいと述べています。
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藤井聡 消費税を凍結・減税すべし!  
<4>「消費増税待ったなし!」というデタラメを叫ぶ愚か者
藤井聡  日刊ゲンダイ 2019年4月5日
「日本の財政危機は深刻だ。だから消費増税はもう、待ったなしなのだ!」――。
 これが、一般的な消費増税推進論者たちの主張だ。
 しかしこの主張は、「真実」をしっかりと認識する冷静な人びとからすれば鼻で嗤うほどに滅茶苦茶でデタラメな代物だ。
 その理由は実にさまざまにあるのだが、中でもとりわけひどいのが、「増税するにしても、なぜ消費税なんだ?」という点だ。今日はこの点について解説してみよう。
 
■消費増税は所得税と法人税増税の「補填」に使われている
 まず、わが国の主要な税金と言えば、消費税のほかは所得税と法人税だ。
 だから、増税をして税収を増やしたいと考えるなら、別に消費税にこだわる必要などなく、所得税や法人税を増税したって良いはずだ。
 しかし誠に不思議なことに、消費増税論者は、「日本の財政危機は深刻だ。だから所得増税はもう、待ったなしなのだ!」とか「日本の財政危機は深刻だ。だから法人増税はもう、待ったなしなのだ!」などとは決して言わない。彼らが口にするのは、いつも「消費税」なのだ
 
 そもそも、所得税や法人税は、かつては今よりもずっと高い水準だった。所得税について言うなら、高額所得者は今よりもずっと高い税金を払っていたし、法人税については、すべての法人において今よりも2倍近くもの税率が課せられていた。
 つまり、所得税や法人税は、激しく「減税」され続けてきたのだ。
 これによって、日本のトータル税収は大きく縮小した。
 
 たとえば、1990年から2015年にかけて、法人税は7兆円、所得税は8兆円、合計で15兆円も縮小した。
 今の日本に万が一にも財政不足なるものがあるなら、その主な原因はこの所得税と法人税の大幅な減収にあるのだ。そして、この大幅な所得税、法人税の減収の主要因は、大幅な税率の引き下げ、すなわち「減税」だ。
 一方で、増税され続けたのが「消費税」だった。
 当時3%だった税率は実に8%へと増税された。そして消費税による税収は、実に13兆円も増えた
 つまり、所得税、法人税の減税であいた「穴」が、消費税増税で「埋められた」のである。
 
 だから、「消費増税が必要だ!」と主張する論者たちは、こうした経緯を無視し、法人税や所得税の減税は当たり前のこととして受け入れ、わざわざ消費税をあげようと主張している人びとなのだ。結局そんな主張は「財政再建のため」、というよりは、「所得税を減らしたい金持ち連中や、大規模な利益をたたき出し続けている大企業達における減税を正当化するため」に活用されたに過ぎないわけだ。しかしそういう御仁たちは、自分がそうやって「利用されている」ことなどまったく気づいてはいない。もうこの時点で、愚かきわまりないと言えるわけだ。
 
■消費増税は所得税・法人税を減らす
 しかも、消費増税を繰り返せば、所得税も法人税も減るという最悪の影響がもたらされる。
 なぜなら、消費増税は確実に消費を縮小させ、法人の収益を縮減させ、それを通して国民の所得も確実に縮小する。そうなれば、低額所得者の税率は低いから平均的な所得税率はさらに下がる。結果、消費増税は所得税収と法人税収を大きく減らすのである。
 
 一方で、所得税を上げても経済への悪影響は消費増税よりも格段に小さい。そもそも所得税率が高いのは、その利益の多くを貯蓄に回す高額所得者だからだ。さらに言うなら低額所得者においても所得の一部は確実に貯蓄に回るのだから、結局、所得税の多くは「銀行で眠り続けるはずのカネを吸い上げたもの」なのであり、その分は景気への悪影響はまったくない。
 法人税については、利益にかかるものだから、経済活動の障害となる要素はさらに低い。むしろ、法人税を払いたくない法人は、給料や投資を拡大するのだから、法人税率は経済活動を活性化する効果すらある。
 ところが、消費税は経済成長のメインエンジンである消費そのものの「罰金」として機能し、消費を冷え込ませ、激しく経済を停滞させるのだ。
 つまり、過去30年にわたって繰り返された「消費増税&法人・所得税減税」は、日本の低迷を導いた張本人だったのであり、それを通して税収を大幅に縮小させてきたのだ。
 こうした真実を知る論者からすれば、「日本の財政危機は深刻だ。だから消費増税はもう、待ったなしなのだ!」なぞと叫ぶ学者や専門家の額には「私はバカです」と大きく書いてあるようにしか見えないのである。 
 
 藤井聡 京都大学大学院工学部研究科教授
1968年、奈良県生まれ。。ニューディール政策等についての安倍晋三政権内閣官房参与に2012年着任、10%消費税増税の深刻な問題を指摘しつつ2018年12月28日に辞職。著書に『経済レジリエンス宣言』(編著・日本評論社)『国民所得を80万円増やす経済政策──アベノミクスに対する5つの提案 』『「10%消費税」が日本経済を破壊する──今こそ真の「税と社会保障の一体改革」を』(いずれも晶文社)など多数。