2019年4月24日水曜日

24- 消費税を凍結・減税すべし!(6)「財政破綻」の危機を煽る手口はカルトと変わらない

 藤井聡・京大教授によるシリーズ「消費税を凍結・減税すべし!」の6回目です。
 今回は、中央銀行を持つ政府が自国通貨建ての借金で破綻することはあり得ないという論理が語られています。
 文中の太字強調個所は原文に拠っています。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~

<6>「財政破綻」の危機を煽る手口はカルトと変わらない

日刊ゲンダイ 2019年4月19日
「日本の財政危機は深刻だ。だから消費増税はもう、待ったなしなのだ!」――。

 これが、一般的な消費増税推進論者達の主張なのだが、こういうことを叫ぶ方々はいかに愚かな輩なのか―――という話を、過去2回に渡って解説した。

 過去2回では、財政が悪化しているのは消費増税を行ってきたからであって、長期安定的に財政を改善したいのなら、デフレ下での消費増税など言語道断。むしろデフレの今は積極的な財政を行い、財政赤字を短期的に拡大することの方が長期安定的に財政を改善する、という話を解説した。
 ただし今日は、消費増税推進の基本的認識である「日本の財政危機は深刻だ!」という「財政破綻論」そのものが完全な事実誤認に過ぎない、という話をしたい。

「破綻論者達」は「カルト」となんら変わらない
 これまで財政破綻論者は、政府の累積債務(借金の総額)が、GDP(国内総生産)を超えると破綻するだの、GDPの2倍を超えると破綻するだの、金融資産の1400兆円を超えるともうダメだだの、さまざまな形で危機をさんざん煽り立ててきた。

 これはちょうど、1999年だか21世紀だとかの節目がくる度に、ありもしない危機を騒ぎ立て、「世紀末に世界は亡ぶのじゃぁ!」と騒ぎ立てたカルト宗教の手口と同じだ。
 そしてそんなカルト達は、世間に無視されればされるほどに「おまえたちにはわからんのか!?ハルマゲドンはやってくるのじゃぁぁ!」と騒ぎ立てる。破綻論者たちはそれとまったく同じように、「国債暴落のXデーは、必ずやってくるのじゃぁぁ!!」と騒ぎ立てている。そして彼らは、オカルト宗教団体が最後に信者達に壺や水を法外な値段で売りさばくように、「だから、やっぱ、消費増税だよね」という姑息な営業を仕かけ続けているのだ。
 
■日本政府が日本円の借金で破綻することは現実的にあり得ない
 そもそも、彼らが煽り立てる「財政破綻」というのは「政府が借りた金を返せなくなる事態」(専門用語で、デフォルトという)を意味する。しかし、そんな事は原理的にあり得ない。かりにあり得るとしても、飛行機のパイロットが、飛行中に「逆噴射」をして意図的に墜落させることがあり得る、という程度の確率でしかない。

 なぜなら、一般的に、中央政府が(自国通貨建ての借金で)デフォルトの危機に直面した場合、どの国の中央銀行も「最後の貸し手」として、中央政府にカネを貸すのは「常識」だからだ。
 だから、中央銀行を持つ政府が自国通貨建ての借金(日本の場合なら、円による借金)でデフォルト(破綻すること)があるとすれば、(さながら、パイロットが飛行中に逆噴射してしまうように)中央銀行がデフォルトしかかった政府を見捨てて、カネを貸さなくなった場合に限られるのだ。
 こうした構図を誰もが理解しているからこそ、「政府は、国内最高の絶大な信頼」を勝ち得ているのである。結果、日本の中央銀行である日本銀行が実際に救済措置をするまでもなく、みんなが政府にカネを貸し続けるのである。

■日本は財政破綻論に怯えれば怯えるほど亡びゆく
 事実、わが国の金利は、累積債務がGDPの200%をはるかに超えてもなお、きわめて低い水準を保っている。金利が低いということは、政府にカネを貸そうとする主体が大量に存在することを意味している。

 つまり今、政府は、GDPの200パーセント以上の累積債務があってもなお、デフォルト=破綻からほど遠い状況にいるのであり、かつ、その債務が円建てである限り、現実的に破綻することがあるとはとうてい思えないのであり、しかもそのことは、市場関係者の「常識」になっているのだ。
 にもかかわらず、「もう日本経済は破綻する!」と騒ぎ立てるのは、カルト信者たちのメンタリティ(精神性)と何ら変わりはしない。
 しかし今、恐ろしいことにカルトに過ぎない財政破綻論が日本中を覆っており、ニュースや新聞のみならず、小学校の教材にすら掲載される始末だ。このままではわが国は、ありもしない財政破綻論に怯え続け、本当に対処しなければならないデフレや貧困、そして大災害といった真の危機への対策・対応がお座なりにされ、本当に滅びの道をひた走ることになるだろう。