2019年4月19日金曜日

19- 沖縄・北谷女性殺害事件は米軍の明かな失態

 北谷町桑江のアパートで米海兵隊ガブリエル・オリベーロ兵曹(32)が住人の女性を殺害し、その後に自殺した事件で、兵隊が同容疑者に女性への接近を禁止した軍事保護処分(MPO)を出していたにもかかわらず、事件当日に外泊を許可していたことが分かりました。
 
 同兵曹が女性に繰り返し暴行を働いたことは警察も海兵隊も知っていたことです。今年1月に女性から憲兵隊へ「同容疑者に『性的暴行』を受けた」と訴えがあり、「女性側が何度もお願いして接近禁止が出た」(謝花喜一郎副知事)にもかかわらず、憲兵隊は同兵曹の外泊を許可したもので、NPO「ウーマンズプライド」のスミス美咲代表は「女性からトラブルの訴えを受けてMPOを出していたにもかかわらず、外泊許可を出すとはあり得ないこと」と述べています。
 
 憲兵隊が女性からの被害申告や事案の重要性を適正に把握しておらず、オリベーロ容疑者に外泊許可を与えたようだということですが、そんなだらしのないことでは論外で、釈明の余地はありあません。
 沖縄駐留米軍と軍属による殺人・強盗・強姦などの凶悪犯は、1972年~2016年の44年間で実に576件に上っているということです(年間13件)。
 これだけの危害を住民に与えている米軍には駐留する資格などありません。地位協定以前の問題です。
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接近禁止令出ているのに…米軍が事件当日の外泊を許可 沖縄・北谷女性殺害
琉球新報 2019年4月18日05:00
 北谷町桑江のアパートで在沖米海兵隊所属の米海軍3等兵曹ガブリエル・オリベーロ容疑者(32)が住人の女性を殺害し、その後に自殺した事件で、海兵隊が同容疑者に女性への接近を禁止した軍事保護処分「MPO(ミリタリー・プロテクティブ・オーダー)」を出していたにもかかわらず、事件当日に外泊を許可していたことが分かった。複数の関係者が明らかにした。海兵隊は、女性から複数回にわたってトラブルの相談を受けていたが、基地外での行動を把握しないまま外泊を許可しており、監督責任が問われそうだ
 
 オリベーロ容疑者は第3海兵師団第3偵察大隊所属で、同部隊が配置されている名護市辺野古のキャンプ・シュワブに居住していた。17日の衆院外務委員会で警察庁が明らかにした。赤嶺政賢氏(共産)への答弁。事件前日の12日に同基地から外へ出たとみられるが、移動方法などは明らかにされていない。
 
 17日、外務省などに抗議した謝花喜一郎副知事は「女性側が何度もお願いして(接近)禁止が出たにもかかわらず、外出許可を与えた。これがなければ防げたかもしれない」と指摘した。その上で「そういったことが放置されるなら、沖縄では米軍人と付き合えない」と語気を強めた。
 在沖海兵隊はオリベーロ容疑者に対して女性に接近しないようMPOを発令していたことは公表したものの、発令時期や期間、罰則などの詳細を明らかにしていない。外出許可についても17日現在、本紙の取材に回答していない。
 
 国際家事相談NPO「ウーマンズプライド」のスミス美咲代表は「女性からトラブルの訴えを受けてMPOを出していたにもかかわらず、外泊許可を出したことはあり得ない。何か起こってからでは遅い。米軍はMPOを厳重に適用すべきだ」と指摘した。
 
 <おことわり>
  在沖米海兵隊所属の海軍兵による女性殺害事件について、琉球新報は被害者の人権や遺族への配慮から被害者名を匿名にします。
 
 
事件防げた可能性 沖縄・北谷女性殺害 米軍の行動制限が形骸化
琉球新報 2019年4月18日 10:27 
 沖縄県北谷町桑江で発生した日本人女性殺人事件で、女性の殺害後に自殺した在沖米海兵隊所属の米海軍3等兵曹ガブリエル・オリベーロ容疑者(32)は名護市辺野古の米軍キャンプ・シュワブに居住していた。オリベーロ容疑者は事件発生前、米軍から被害女性に近づくことを禁止する命令「MPO(ミリタリー・プロテクティブ・オーダー)」を受けていたが、関係者によるとオリベーロ容疑者は基地司令官から外泊許可を得て、12日夜に被害者宅へ向かったという。接近禁止命令が出されていた中、米軍が外泊許可を与えていなければ事件は防げた可能性がある。
 
 2016年時点でのリバティー制度では(1)午前0~5時には基地外にある公共の場での飲酒を全面禁止 (2)「E―5(軍曹)」級以下の軍人は午前1~5時の外出を禁止 (3)基地ゲート前での抜き打ち飲酒検査―などを定めていた。
 
 これに基づくとオリベーロ容疑者の階級は午前1~5時の間で外出禁止対象となる。だが今回の事件では、米軍がオリベーロ容疑者にDVの訴えがあったにもかかわらず外泊許可を認め、基地外への外出を許した。
 米海兵隊はこれまでの取材に対し、今年1月に被害女性から憲兵隊へ「同容疑者に『性的暴行』を受けた」との相談があったと説明している。県警も憲兵隊からの情報提供を受けて人身安全関連事案の対象者として認定し、事情を聴くなどしていた。
 
 米軍は今年2月26日からリバティー制度を大幅に緩和しており、本紙は米軍に同制度の内容や、接近禁止命令が出ていたにもかかわらず被害女性と接触できた理由などについて質問したが、17日までに回答はない。米軍の憲兵隊が女性からの被害申告や事案の重要性を適正に把握しておらず、オリベーロ容疑者に外泊許可を与えた可能性があり、米兵の行動制限は形骸化しているのが現状だ。
 
 沖縄防衛局は制度について「第3海兵遠征軍司令官のスミス中将が説明している動画が海兵隊のホームページにて公開されているものと承知している」と述べた。また「米側からは公務時間外行動規則(リバティー・オーダー)は内部規定であり、(情報を)提供できないと説明があった」とした。
 
◆識者談話◆ 
接近禁止後 監督厳重に ウーマンズプライド代表・ミス美咲氏
 
 MPOは事件に発展するのを防ぐための措置で、上司が兵士に命じ、命じられた本人は書類にサインする。当事者に近寄ることを禁止するのは事件が起きないようにするためで、それが一番重要だ。それにもかかわらず、海兵隊が女性を殺害した海軍兵に外泊許可を出したのはもってのほかで、びっくりしている。
 
 今回の事件では、MPOとは別にキャンプ・シュワブ内で容疑者が行動制限されていた可能性もあるが、もしそうだったとしたら、なおさら外泊許可はあり得ない対応だ。たとえ行動制限されていなくても、DVなどの訴えがある兵士が被害者に近づく恐れがある外泊許可は問題だ。
 
 MPOは特定の当事者に近寄らないよう命じる処分で、外出を制限するものではなく、上司が24時間監視するようなことはない。DV事案は被害者がたとえ「大丈夫だ」と話しても、大丈夫ではない場合が多い。同様の事件の再発を防ぐために、米軍はMPOを出した兵士に対し、カウンセリングや監督を厳重にすべきだ。(談)
 
MPO(ミリタリー・プロテクティブ・オーダー)
 部隊指揮官が家庭内暴力や児童虐待から被害者を守るため部下の米軍人に出す命令。米軍人は保護すべき人と(直接や第三者を介しても含め)一切の接触と通信が制限される。通信は面談、電話、手紙、ファクシミリ、メールなど。被害者と保つべき距離を上官が定め、それ以上近づくことを禁じる。発令中は武器を保持できず個人所有の武器の処分も定める。外出禁止などは含まない。部隊が変わると無効。