2019年4月20日土曜日

「先住民族」初めて明記 アイヌ支援新法が成立

 法律で初めてアイヌ民族を「先住民族」と位置付けたアイヌ民族に関する新法19日、参院本会議で成立しました。
 東京新聞は、新法のポイントを次のようにまとめています。(写真版をテキスト版に書き換えました)
 
 アイヌ民族支援法のポイント
 
  ・初めてアイヌを「先住民族」と明記
  ・文化や産業、観光の振興に向けた交付金制度を創設
  ・政府はアイヌ政策推進本部を設置
  ・2007年の国連宣言で民族の権利とされた自決権や教育権などは盛り込まず
 
 新法はアイヌ民族の誇りを尊重し共生社会を目指すことを目的とし、差別を禁ずる基本理念を盛り込みました。
 
 その一方で、国連の「先住民族の権利に関する宣言」に盛り込まれ、アイヌの人々が長年求めてきた先住権、自決権教育権などは盛り込まず、生活や教育の支援も含まれませんでした。
 
 共産党の紙智子議員は18日の参院国交委で、アイヌ民族への謝罪もなく議論が進んだと指摘し、「先住民族の権利に関する国連宣言」が認める諸権利を盛り込むよう求めました。また付則の5年後の見直し規定に触れ「5年を待たずアイヌの声を反映させ、見直すべきだ」と主張しました。
 
 菅官房長官は成立後の記者会見で、「アイヌ民族の意見を尊重しながら、実効性のあるアイヌ施策を実施できるようさらなる検討に努めていきたい」と述べていますが、そのとおり実行して欲しいものです。
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「先住民族」初めて明記 アイヌ支援新法が成立
東京新聞 2019年4月19日
 法律として初めてアイヌを「先住民族」と明記し、独自の文化の維持・振興に向けた交付金制度を創設する新法「アイヌ民族支援法」が十九日、参院本会議で可決、成立した。政府や自治体の責任で産業や観光の振興にも取り組み、アイヌ以外の国民との共生や経済格差の是正を図る。
 
 先住民族への配慮を求める国際的な要請の高まりに応えた。ただ二〇〇七年の国連宣言で民族の権利とされた自決権や教育権などは盛り込まず、付帯決議で宣言を尊重するよう政府に求めるにとどめたため、アイヌ関係者から批判も出ている。
 
 石井啓一国土交通相は同日の記者会見で「国会審議や付帯決議を踏まえ、確実な施行に努める」と述べた。
 
 新法の正式名称は「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」。
 政府はアイヌ政策推進本部を設置し、基本方針を策定。これに基づいて市町村が文化、産業、観光振興のための地域計画を作ると、関係事業に交付金が支出される。
 民族儀式に使う林産物の国有林での採取や、河川での伝統的なサケ漁の許可も簡素化する。政府は北海道白老町でアイヌ文化施設「民族共生象徴空間」の整備を進めている。
 
 
アイヌ民族への同化政策 紙氏「政府は謝罪を」
新法案は可決 参院国交委
しんぶん赤旗 2019年4月19日
 日本共産党の紙智子議員は18日の参院国土交通委員会で、アイヌ新法案について、アイヌ民族への謝罪もなく議論が進んだと指摘し、「先住民族の権利に関する国連宣言」が認める諸権利を盛り込むよう求めました
 
 紙氏は、同化政策について「厳粛に受け止める」としか言わない政府に対し、「明治以降の歴代日本政府がアイヌの権利を侵害し、土地、生活、自然を破壊したことを反省し、謝罪すべきだ」と強調。国連宣言に反対したオーストラリアやカナダの政府でも、その後謝罪しているとして、「なぜ日本政府は謝罪しないのか」と迫りました。
 石井啓一国交相は答弁に立たず、橋本元秀アイヌ総合政策室長は「意見交換では『未来志向で』との意見が強かった」と政府の姿勢を正当化しました。
 
 紙氏は、同法案の目的に「国連宣言を踏まえ」と明記すべきだと主張。研究と称してアイヌの遺骨が盗掘・保管されている問題で、「遺骨を取り戻す運動は先住民族の権利の中核をなす」との有識者の指摘を紹介し、国連宣言が認める権利だとして同法案に盛り込まなかったことを批判しました。
 さらに、付則の5年後の見直し規定に触れ「5年を待たずアイヌの声を反映させ、見直すべきだ」と求めました。同法案は、同日、日本維新の会を除く各会派の賛成多数で可決しました。