安倍首相は日本が主体的に進めたTPP11のゴールインに当たって、米国を相手とした二国間貿易交渉FTAは受け入れないと断言しました。しかしその舌の根も乾かないうちに、トランプ大統領に迫られると、米国との二国間貿易協定を結ぶことを受け入れました。想像はされましたが、ああまで他愛無く屈するとは誰も思わなかったのではないでしょうか。
本人もさすがに面目ないと思ったようで、NHKの岩田明子記者などを使って「合意したのはFTAではなくTAG(物品関税交渉)」だという、初めて聞く横文字を使って国民を誤魔化そうとしましたが、そんなことが通用する筈がありません。
その日米貿易協議の初会合が15~16日、ワシントンで開かれる予定です。日本側の要求によるといわれています。
これについて天木直人氏は、敢えて日本側から申し入れた理由は安倍首相が訪米したときにトランプ大統領から厳しい要求を出されて窮地に立たされないように、茂木経済再生相が行き、首相に難題を押しつけて恥をかかせないように頼むためだと述べています。
そして日本がそんなことを頼むからには、当然裏で「何でも取引する(要求を受け入れる)」と伝えると見ています。それこそは国を売る所業です。
しんぶん赤旗は10日、米国第一の危険なFTA交渉は止めるべきとする主張を掲げました。
トランプ大統領がTPP交渉から離脱したのは、二国間交渉でいっそう自国に都合の良い内容を相手にのませるためであるとして、「亡国の交渉」になると警告しています。
しんぶん赤旗の主張を紹介します。
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【主張】 日米のFTA 「米国第一」危険な交渉やめよ
しんぶん赤旗 2019年4月10日
安倍晋三首相とアメリカのトランプ大統領が昨年9月の首脳会談で開始を合意した、日米貿易協議の初会合が15~16日、ワシントンで開かれる予定です。
安倍政権は「日米物品貿易協定(TAG)」交渉と呼んでごまかしますが、交渉対象は物品だけでなく、サービスや金融なども含んでおり、まぎれもない「自由貿易協定(FTA)」交渉そのものです。トランプ政権は、環太平洋連携協定(TPP)や日本と欧州の経済連携協定(EPA)以上の成果を目指すと公言し、農産物や自動車に照準を当てて、日本に譲歩を迫ろうとしています。
経済外交破綻の象徴
交渉開始を前にした3月、アメリカ通商代表部(USTR)は、今年の年次報告書と、「外国貿易障壁報告書」を発表しました。
トランプ政権で3回目になる年次報告書は、「主要な競争相手国は日本との自由貿易協定(FTA)を結び、米国の輸出産業に対する価格競争力を強めている」と指摘しました。農畜産物に対し、「関税削減・撤廃で米国産農産物の包括的な市場アクセス(参入)を確保する」と明記しています。
貿易障壁報告書は日本の項で、日米交渉に言及するとともに、前年とは記述の順序を変えて、かんきつ類・乳製品・加工食品・他の農産物の“高関税”を各論の冒頭に置きました。
3月の米大統領経済報告でも、「日本とは自由貿易協定(FTA)交渉に入る」と明言しました。
安倍政権は、2017年に大統領に就任したトランプ氏が一方的にTPP離脱を表明した後も、復帰させるとしてきました。しかし、実現できず、アメリカを除く11カ国によるTPP11の発足や日欧EPAの発効とともに、日米2国間での交渉を受け入れたのです。日米交渉は文字通り、安倍経済外交破綻の象徴です。
トランプ政権は昨年末公表した「対日貿易交渉目的」という文書で、農産物や自動車、金融、通貨など22項目の交渉事項を列記し、「TPPを下回らない水準」での成果をあげると主張しました。
もともとTPPは、国際競争力の強い国や多国籍企業に利益をもたらす、貿易や投資のルールづくりです。トランプ政権がTPPを離脱したのは、「アメリカ第一」の立場から、多国間ではなく2国間交渉で、いっそう自国に都合の良い内容を相手にのませるためです。TPPと同時に離脱した北米自由貿易協定(NAFTA)では、メキシコやカナダと交渉して、アメリカに有利になる新しい協定(USMCA)を結びました。
TPPを離脱したアメリカは、農畜産物などでカナダやオ―ストラリアに日本の市場を奪われることを恐れています。そのため日本に、「TPPを下回らない水準」の合意を押し付け、市場を確保する魂胆です。
“亡国”の道は許さない
TPP11や日欧EPAに加えて、日米交渉でアメリカ言いなりになれば、日本の農業や国内産業はいよいよ立ち行きません。すでにTPP11によって、牛肉などの輸入急増が問題になっています。
“亡国”の日米FTA交渉は、直ちに中止すべきです。
日本の経済・食料主権を尊重する、公平・公正な貿易ルールを確立することがますます重要です。