2019年4月21日日曜日

他国地位協定調査 政府は不平等に向き合え

 安倍政権は、昨年8月、全国知事会から日米地位協定の改善に取り組むように要請されたにもかかわらず、いまだに何の働きかけもしていません。
 琉球新報が、「日米地位協定の抜本的な見直しに、政府は真剣に向き合うべきだ」とする社説を掲げました。
 日米地位協定は、被占領下の日米の力関係を文章化した日米行政協定をそのまま踏襲したものであることを、本ブログでは繰り返し指摘してきました。そんな協定1960年に締結したまま今日に至るまで一度も改正されていないというのはあり得ないことです
 
 沖縄県は、17年度と18年度に行った欧州4カ国での対米地位協定の現地調査を基に、日米地位協定他国の対米地位協定を比較した調査報告書をまとめましたその中で欧州各国では米軍基地への立ち入り権や米軍機の飛行などで、受け入れ側の国内法を米軍に適用していることを明らかにしていますいまだに在日米軍には原則として国内法が適用されないとする日本との違いは明らかです
 
 ところがこの県の調査報告に対し、河野太郎外相は「何かを取り出して比較するということに全く意味はない」と意味不明の発言をしたということです。何かを取り出して比較する以外に一体どういう比較対照法があるというのでしょうか。全く意味をなさない発言というしかありません。類は友を呼ぶといいますが、安倍内閣にはこういう閣僚がゴロゴロしています。
 
 琉球新報が指摘するように「米国に追従するだけの卑屈な態度を改め」、イタリアの気概を学ぶべきです。
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<社説> 他国地位協定調査 政府は不平等に向き合え
琉球新報 2019年4月19日
 日米地位協定の抜本的な見直しに、政府は真剣に向き合うべきだ。
 
 県は2017年度と18年度に行った現地調査を基に、日本や欧州4カ国と米国との地位協定を比較した他国地位協定調査報告書をまとめた。報告書は、欧州各国では米軍基地への立ち入り権や米軍機の飛行などで、受け入れ側の国内法を米軍に適用していることを明らかにしている。
 在日米軍には原則として国内法が適用されないとする日本政府との違いが改めて浮き彫りになった。
 
 ところが県の調査報告に河野太郎外相は「何かを取り出して比較するということに全く意味はない」と開き直りとしかいいようのない態度を取った。
 国際的な事例比較を通じて課題を国民に分かりやすく示し、交渉によって改善に導くことは本来、外務省が率先して取り組む仕事のはずだ。
 幕末に欧米列強と結んだ不平等条約の改正まで約半世紀の歳月を要した明治政府の歴史を、河野氏が知らないはずはあるまい。国民の利益を損なう不平等から目をそむけ、現状を容認し続けるのなら、外相の資格はない。
 
 県によると復帰から18年12月末までに、米軍人等による刑法犯が5998件、航空機関連の事故が786件起きている。近年も米軍ヘリ沖国大墜落事故、名護市安部沿岸へのMV22オスプレイ墜落、東村高江の米軍ヘリ不時着・炎上など、民間地域で事故が多発している。
 そのたびに県警は事故現場に立ち入ることができず、米軍は機体を持ち去った。環境調査の立ち入りも認められていない。それにもかかわらず日米地位協定は1960年の締結以来、一度も改正されていない。米軍に裁量を委ねた運用の改善では歯止めがかからず、県民の安全や人権を守れないことはもはや明白だ。
 
 イタリアでは98年に米軍機によるロープウエーのケーブル切断事故で20人の死者が出たことをきっかけに、米軍機の規制をさらに強化することとなった。本紙記者の報告による連載「駐留の実像」は、米側に低空飛行訓練の見直しを迫るイタリア側代表の言葉を紹介している。
 「これは取引や協議でもない。米軍の飛行機が飛ぶのはイタリアの空だ。私が規則を決め、あなた方は従うのみだ。さあ、署名を」
 これこそが主権国家として取るべき態度だ。
 
 日米地位協定の不条理は沖縄に限った話ではない。日本の首都東京の空でさえも、米軍横田基地が管制を握っている。全国知事会は18年7月に「米軍基地負担に関する提言」を全会一致で採択し、その中で日米地位協定の抜本的な見直しを求めた。
 県の問題提起に無視を決め込む政府の態度からは、主権国家としての気概が全く感じられない。米国に追従するだけの卑屈な態度を改め、協定の抜本改正を要求すべきだ。