2019年4月5日金曜日

「安倍・麻生道路(下関北九州道路)」“利益誘導”にこれだけの疑惑

 1日に北九州市で行われた自民党知事選選挙演説集会で、麻生派の塚田一郎・国交副大臣が「総理とか副総理が言えないので、私が忖度した」と,それまで必ずしも明確でなかった北九州市と山口県下関市を結ぶ「下関北九州道路」を、自分がヒノキ舞台に押し出したことを明言しました。
 自分から「忖度した」と言い出すのは極めて稀なケースですが、権限を持っている当事者が「忖度に基づいて決めた」と公言したのですから、当然ただでは済みません。
 立民党の蓮舫参院幹事長は「利益誘導だ。税金は自民党のためのものと明言しているようなものだ」と批判しました。
 
 追及された塚田氏は直ぐに「ウソをいうつもりはなかったが、発言は事実でなかった」と謝罪して取り消しました。しかしその謝罪発言は矛盾していて意味が不明というしかありません。
 
 地元で「安倍・麻生道路」と呼ばれる「下関北九州道路」は本州の下関市と北九州市(小倉地区)を結ぶ海底道路で、もしも完成すれば本州と九州を結ぶ3本目の道路となります。
 しかし無駄な大型公共事業への批判が高まるなか、全国6カ所の「海峡横断プロジェクト」の一つとしてその道路も2008年、自民党福田内閣によって凍結されました。その工事費は13年の段階で2000~2700億円とされていますが、その費用対効果は算定されておらず不明です。
 本州と九州を結ぶ関門橋(上下6車線)は設計時には交通量1日7万2千台を見込みましたが、実際にはその半分の3万8千台(17年)しか通行しておらず、関門トンネルの交通量も減り続けています。費用対効果が不明で必要性も疑問視されている道路であり、不要不急の大型開発です。
 
 ところで「塚田発言」に至る経過は概略下記の通りです。
 
17年度 自治体+国の補助 調査費700万円を計上(実質始動)
18年 自治体+国の補助 調査費700万円を計上
18年10月25日 吉田自民参院幹事長大家議員安倍首相と面談。首相下関北九州道路の)早期建設に向けた活動にしっかり取り組むように」号令
18年11月2日 「整備促進を図る参院議員の会」発足
18年12月20日 塚田国交副大臣が副大臣室で吉田自民参院幹事長大家議員面談し告げられる
19年度 調査費4000万円を直轄事業として全額国費に
19年4月1日 塚田氏が北九州市で問題発言
 
 上記の経過を見ると、それは塚田氏の「忖度」などではなくて、安倍首相による「間接的な指示・命令」によるものと見るべきです。
 LITERAの記事を紹介します。
 
 追記)文中に引用されているしんぶん赤旗(3月5日)の記事には、下記のURLからアクセスできます。
 ムダ事業復活の動き 下関北九州道路「安倍・麻生道路」2000億円超 ~
 
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塚田国交副大臣「忖度」発言が嘘なわけがない! 
安倍首相、麻生財務相の下関北九州道路“利益誘導”にこれだけの疑惑
LITERA 2019年4月4日
 安倍政権の政治がいかに腐りきっているか。そのことが現役副大臣の発言によって明らかになった。1日に北九州市でおこなわれた集会で、自民党・麻生派所属の塚田一郎・国土交通副大臣が「総理とか副総理が言えないので、私が忖度した」と発言した問題だ。
 塚田国交副大臣が公の場で「暴露」したのは、北九州市と山口県下関市を結ぶ「下関北九州道路」について。下関北九州道路は2008年の福田康夫政権時に調査が中止されたが、第二次安倍政権で復活。2017年度からは自治体予算と国の補助で調査を再開させ、2019年度からは国の直轄事業として国が調査費を全額負担することになり、4000万円が計上されている。
 
 総事業費が2000~2700億円もかかると試算されている一方、その必要性や採算がとれないのではと疑問視されている下関北九州道路。どうしてそれが復活したのか疑問視されてきたが、塚田国交副大臣は今回、本年度から国直轄の調査へと決定された内幕を明かし、「私が忖度した」と発言したのだから、これは大事件だ。
 塚田国交副大臣は昨日の国会で「我を忘れて誤った発言をした」などと釈明したが、実際の話はディテールに富んでおり、とてもじゃないが嘘の話だとは思えない。あらためて、塚田国交副大臣の発言を紹介したい。
 
 まず、塚田国交副大臣は「麻生太郎衆院議員にお仕えして、早20年近く。最初の総裁選は大変でした。その時代から麻生太郎命、一筋でやってきた。筋金入りの麻生派です」と述べ、その後、こんな話をはじめた。
「国土交通副大臣ですから、ちょっとだけ仕事の話をさせていただきますが、大家敏志さん(福岡県選出の自民党参院議員)がですね、私のもうひとり逆らえない吉田博美さんという参議院の(自民党)幹事長と一緒に、私の副大臣室にアポを取って来られました。『地元の要望がある』。これが下関北九州道路です。
 じつはこれ、経緯がありまして、11年前に凍結されているんです。なんでかわかります? 『コンクリートから人』っていう、とんでもない内閣があったでしょ。総理は『悪夢のようだ』と言いましたが、まさにそのとおりでございます。公共事業はやらないという民主党政権ができて、こういう事業は全部フリーズ、凍結しちゃったんです」
 事業がストップしたのは11年前の2008年であることは間違いないが、前述したように、それは福田政権時のことであって民主党政権時ではない。デマによって相も変わらずしつこい民主党政権叩きをつづけるのは安倍首相や麻生副総理とまったく同じだが、問題はこのあとだ。
 
「何とかしないといけないと。下関と北九州ですよ。よく考えてください。下関は誰の地盤ですか? 安倍晋三総理です。安倍晋三総理から麻生副総理の地元でもある北九州への道路事業が止まっているわけです。
 吉田(参院)幹事長が私の顔を見たら、『塚田、わかってる? これは総理の地元と副総理の地元の事業なんだよ』と。『俺が何で来たかわかるか』と。私、すごく物わかりがいいんです(会場笑い)。すぐ忖度します(会場笑い)。『わかりました』と。
 そりゃ総理とか副総理はそんなこと言えません、地元の。そんなこと、実際ないんですよ? 森友とかいろいろ言われていますけど、私は忖度します」
 
 吉田自民党参院幹事長といえば、2015年の安保法制の審議で自民党参院国対委員長として安保法制強行の先頭に立ち、先の総裁選では石破茂議員が掲げた「正直、公正」というスローガンに対し「(首相への)個人攻撃と受け取っている国民もいる」と批判するなど、安倍首相に近い人物だ。
 その吉田自民参院幹事長は国交副大臣にわざわざアポを入れ、「総理と副総理の地元の事業だとわかっているのか」「俺が何で来たかわかるか」と明確に圧力をかけ、塚田国交副大臣から見事に「忖度」を引き出していたのである。
 
塚田発言で「お友だち優遇」と「忖度」が横行する安倍政権の実態が露呈
 しかも、塚田国交副大臣の「総理とか副総理はそんなこと言えません」という発言は重大だ。加計問題で安倍首相は「私から指示を受けたという方はひとりもいない」などと主張しているが、実態は柳瀬唯夫首相秘書官や和泉洋人首相補佐官、杉田和博官房副長官といった官邸スタッフが暗躍していた。実際、和泉首相補佐官は「総理は自分の口からは言えないから、私が代わりに言う」と、吉田自民参院幹事長とそっくりの発言をおこなったとされている。ようするに、直接指示せずとも「総理のご意向」「首相案件」だというだけでこうした利益誘導はおこなわれるという証拠ではないか。
 
 そして、この下関北九州道路は「安倍首相と麻生副総理の地元」案件として、事業化に向けて動き出した。塚田国交副大臣はこう明言している。
「それでですね、この事業を再スタートするためには、いったん国で調査を引き取らせていただくということになりまして、これを、今回の新年度の予算に国で直轄の調査計画に引き上げました!(会場拍手)
 別に知事に頼まれたからではありません。大家敏志が言ってきた、そして私が忖度したということですので」
 唖然とするほかないだろう。安倍首相に近い吉田自民参院幹事長や、北九州市を含む福岡県を選挙区とする大家議員に「総理と副総理の地元の事業だとわかっているのか」と迫られたことを明かした上、「私は忖度します」と誇り、言われたとおりに国直轄の調査計画に引き上げたことを自身の手柄として堂々と胸を張っているのである。
 
 見てのとおり、塚田国交副大臣はこれが利益誘導だという事の重大性にまったく無頓着で、悪気などなく発言している。これは、それほど安倍政権下で「お友だち優遇」と「忖度」政治が当たり前になっているということを示す発言であり、そのディテールの細かさからも「我を忘れて誤った発言をした」とは到底考えられないのだ。 
 そして、実際にこの塚田国交副大臣の下関北九州道路をめぐる「証言」は、「誤った発言」どころか、あまりにも状況とぴたりと符号するものなのだ。
 というのも、この下関北九州道路にかんしては、以前から「安倍・麻生道路」と呼ばれ、「安倍案件なのでは」と囁かれてきた問題であり、吉田自民参院幹事長や大家議員が関与していることも確認されていた。
 
塚田「忖度」を引き出した吉田参院幹事長・大家議員は官邸で安倍首相から…
 たとえば、実際に安倍政権は、凍結されていた下関北九州道路を建設に向けて検討を再開させ、2017・2018年度予算でそれぞれ調査費700万円を計上。さらに、下関北九州道路の建設を目指して昨年11月2日に「整備促進を図る参院議員の会」を発足させた。そして、その会長に就任したのは吉田自民参院幹事長であり、幹事長には大家議員が就いている。
 その上、会発足直前の昨年10月25日には、ふたりは官邸で安倍首相と面談。そこで安倍首相は、下関北九州道路について、こう号令をかけていた。
「早期建設に向けた活動にしっかり取り組むように」
 
 問題となっている塚田国交副大臣が国交省副大臣室で吉田自民参院幹事長と大家議員が面談したのは昨年12月20日であり、塚田国交副大臣も面談の事実は認めている。ようするに、安倍首相主導のもと、下関北九州道路建設に向けて吉田自民参院幹事長と大家議員が動いていたのは事実なのだ。
 そして、塚田国交副大臣の発言どおり、実際に国直轄の調査計画に引き上げられ、先月29日には今年度から調査費は国が全額負担することが公表された。
 しかも、だ。いまから約1カ月前のしんぶん赤旗紙上で、下関市の自民党関係者はこんなことを語っているのだ。
「九州経済連合会の会長は、麻生太郎副総理の弟の泰氏だ。自民党内の会議では、安倍・麻生の関係でスタートした計画だといわれている。それだけに総理・副総理の在任中に事業化させたいという思いは両県の政治家に共通している。ここで動かなかったら経済界にも顔向けできない」(しんぶん赤旗3月5日付)
 どうだろう。塚田国交副大臣の今回の発言は、こうした証言と符号、見事に裏付ける内容になっているのである。
 新たに浮上した、森友・加計学園につづく「忖度」による利益誘導問題。しかも、現役の副大臣が悪びれもせずに公の場で手柄話として披露するほど、安倍政権が腐りきっていることが白日の下に晒されたのだ。今後、安倍首相と麻生副総理は全力で事実を否定しつづけるだろうが、今度こそ、この腐敗政権に終止符を打つときだ。 (編集部)