2019年4月30日火曜日

消費税を凍結・減税すべし!(7)消費税は消費の『罰金』である

 藤井聡・京大教授によるシリーズ「消費税を凍結・減税すべし!」の7回目です。
 今回は消費増税が消費を収縮させ日本経済に多大なダメージを与えることを、「消費税は消費に掛けられる罰金である」という巧みな比喩で説明しています。
 文中の太字強調個所は原文に拠っています。
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藤井聡 消費税を凍結・減税すべし!  
<7> 消費税は消費の『罰金』である
日刊ゲンダイ 2019年4月26日
 安倍晋三総理の側近、萩生田光一・自民党幹事長代行の「10月の消費増税延期」を示唆する発言が波紋を呼んでいる。
 萩生田氏は、安倍内閣で官房副長官も務めた総理の側近中の側近とも言われており、わざわざインターネットテレビというメディア上で増税延期の可能性を示唆したということは、安倍総理が「増税延期を考えている」ことを明確に示すサインに違いないと、政治家、記者など永田町の玄人筋がみな、認識したからだ。
 言うまでもなく萩生田氏(そしておそらくは安倍総理)が消費増税の延期を具体的に考えているのは、消費増税が日本経済に確実に激しいダメージをもたらすことを懸念してのことだ。
 事実、今、このタイミングでの消費増税は最悪だ。日本経済に確実に激しいダメージをもたらす。たとえば、その理由について筆者は拙著『10%消費税が日本経済を破壊する』に詳しくまとめているのだが、あらためてその基本メカニズムを紹介することとしよう。
 
1.税金は行動を「抑制」するためにかけるもの
「混雑税」という税金をご存じだろうか?これは混雑している道路に「税金」をかけ、値段を上げることで、利用者を減らし、その混雑をなくそうとする「交通政策」上の税金だ。同じく「環境税」というものは、環境対策の一環として行われるもの。クルマ利用など「環境に悪い行動」に対して税金をかけて、その行動を抑制しようとするものだ。
 つまり混雑税や環境税というものは、「減らしたい」という政策ターゲットを絞り、それを狙い撃ちするように税金をかけ、その行動を減らそうとするものなのだ。

 だから、「消費」税をかければ、当然、「消費」が抑制されることなど、至極当然のことなのである。
 しばしばメディア上で、専門家と自称する人々が「消費増税をしても大丈夫です」という口にしているが、彼らは根本的に間違えているのだ。経済学の基本を何も知らないか、あるいは、財政当局なり何なりを「忖度」して、自分の発言を歪めているにすぎない。つまり彼らは馬鹿か嘘つきか、あるいはその両方かのいずれかなのだ。

2.消費は、経済成長のメインエンジン
 ところで、「経済成長」というのは、具体的に何を意味するのかというと、「皆が使うカネの量が増えていく」ということだ。皆が使うカネの量が増えれば、必然的に皆が儲かる。皆が儲かれば、さらにカネを使うようになって皆がさらに儲かる―――という好循環が経済成長、というものだ。
 そして、日本国内で使われているカネ(一般に、GDPと言われる)の大半が何なのかと言えば―――それが「消費」だ。日本国内のすべての使われているカネの内、実に6割が消費だ。
 しかも、この消費が伸びれば必然的に、各企業が様々な投資を始める。売り上げがよくなるので、それに対応するために、工場や店を拡充していくからだ。その投資は全体のカネの量の1割5分。
 だから結局、消費が増えれば、使われるカネの量(GDP)の7割5分が拡大していくわけで、必然的に経済が成長するのだ。
 つまり、消費というものは、経済成長のメインエンジンなのだ。

3.10%消費税で、日本経済は破壊される。
 逆に言うなら、消費が冷え込めば、必然的に経済は冷え込む。ここに、消費税が経済に巨大なダメージをもたらす根本理由がある。
 実際、バブル崩壊後の97年の増税は日本に大不況をもたらし、前回の2014年増税でも激しく消費が冷え込み、5年以上が経過した今日でも、かつてのピークの水準には至っていない。
 無論、経済が元気で、年々物価が4%や5%程度拡大している時期なら、消費増税の影響をはねのけることができる。たとえばバブル真っ盛りの1989年の消費税導入時には、激しいダメージはなかった。しかし今日のようなデフレ状況下では、経済的ダメージは絶対に避けられない。

 ――だからこそ、萩生田氏が、消費増税を延期する可能性を示唆したわけだ。

 もしこんな状況で消費税が増税されれば、日本経済が大混乱になり、内閣支持率は確実に低下する。安倍総理の側近である萩生田氏が、それを懸念し、増税延期の風潮を作り出すために、あえて増税延期の可能性を示唆した―――今、多くの永田町関係者は、そう見ている。
 しかし、われわれ国民にとって、日本を守ってさえくれるなら誰が何をやろうが構わない、というのが正直なところだろう。とにかく国民にとっては、消費増税によって日本経済が破壊されるかどうかは文字通りの死活問題なのだ。

 今の消費増税が最悪なのには以上以外にもさまざまな理由があるのだが―――それについてはまた別の機会に解説することとしよう。