安倍政権の新型コロナウイルス禍対応は世界の中でも最も劣等と評価されるレベルで、それが目下の医療崩壊につながりつつあります。
しかし安倍首相にはその自覚が全くないだけでなく、相変わらず従来通り「頑張っているフリ」を演じようとしています。
安倍政権は論外である検察庁法改定案に続いて「現在70歳の公的年金制度の受け取り開始時期の選択肢を75歳まで広げる」という年金制度改定案を14日に審議入りさせました。やるべきことを全くやらずに、国民から収奪する政策だけは強行するわけです。
それだけでなくこのコロナ禍を好機と見て、憲法に緊急事態条項を創設する議論を憲法審査会で進めるよう呼びかけました。他国の優れたリーダーたちがやった対策を全く怠りながら、国民には「緊急事態条項」の必要性を説くとはあまりにも的外れです。
コロナ禍で明らかになったのは安倍政権の無策と無能であって、決して強権の必要性ではありません。政府はかねてから大災害時には「緊急事態条項」が必要と強調して来ましたが、必要なのは的確に対処する英知であって「〇〇に刃物」ではありません。
まして現下のコロナ禍の中でそれを議論しようというのは火事場泥棒に他なりません。
しんぶん赤旗と神戸新聞の記事を紹介します。
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安倍政権 火事場泥棒的な暴走 改憲議論へ策動 悪法審議を強行
しんぶん赤旗 2020年4月20日
新型コロナウイルスの感染爆発や医療崩壊が懸念される中で、安倍政権は立憲主義、社会保障を破壊する暴走を強めています。「緊急事態」を口実にした改憲議論の呼びかけ、検察人事への政治介入を可能にする検察庁法改定案、国民に自助努力を求める年金法改定案の審議入りなど、まさに火事場泥棒的暴走です。
憲法審開催狙い
安倍首相は新型コロナウイルス感染拡大を受けた「緊急事態宣言」の発令に関する7日の衆院議院運営委員会での質疑の中で、「(緊急時に)国家や国民がどのような役割を果たし、国難を乗り越えていくべきか、そのことを憲法にどのように位置づけるかについては、極めて重く、大切な課題」と発言。憲法に緊急事態条項を創設する議論を憲法審査会で進めるよう呼びかけました。自民党の有力幹部は「(新型コロナウイルス感染拡大は)緊急事態の一つの例。憲法改正の大きな実験台」などと発言していました。
改憲は、緊急性がまったくないうえ、国民の間に意見の相違がある問題です。コロナ感染への対応で国民が政治的立場を超えて連帯するべき時に、国民に分断を持ち込むことはやめるべきです。
自民、公明の与党は16日、衆院憲法審査会幹事懇談会を開こうとしましたが、野党の反対で開催できませんでした。
検察庁法改定案
安倍政権は16日、検事長など検察幹部の人事を首相官邸が握る検察庁法改定案の審議入りを強行しました。
同改定案は、検察官の定年年齢を65歳に引き上げ、63歳からは役職につかない(役職定年)としつつ、内閣が認めるときに63歳を超えて検事長や次長検事などのまま勤務できるとするもの。検察人事への露骨な政治介入を認める違憲の法案です。
安倍政権は黒川弘務東京高検検事長の定年を延長する閣議決定(1月31日)を強行。「国家公務員法の定年延長は検察官に適用されない」という政府見解を投げ捨てる違法な「解釈変更」で正当化を図ってきましたが、検察内部からさえ批判が上がっていました。こうした声を、法律を変えて封じ込めるのが狙いです。
年金制度改定案
マクロ経済スライドという年金を実質削減する仕組みを放置したまま国民に自助努力を求める年金制度改定案が14日、審議入りしました。
同法案は、現在70歳の公的年金制度の受け取り開始時期の選択肢を75歳まで広げます。年金を減らしておいて「公的年金で足りない人は体力の限界まで働けと求めるに等しい」(日本共産党の宮本徹議員、14日の衆院本会議)ものです。
マクロ経済スライドの基礎年金への適用をやめ、65歳になれば働かなくても暮らせる年金制度をつくることこそ必要です。
三つの「課題」に緊急性はありません。今は、国民全体の命にかかわる新型コロナウイルス感染拡大防止に全力を集中すべき時です。どさくさまぎれの暴走を許すわけにはいきません。(若林明)
社説 コロナと改憲論/耳を疑う「国難」への便乗
神戸新聞 2020/04/20
新型コロナウイルスの感染拡大は「国難」と言われる危機的な状況だ。それに便乗する動きは「悪のり」と批判されても仕方がない。
安倍晋三首相が緊急事態宣言の対象区域を全国に拡大した。新型コロナ特別措置法に基づく感染症の封じ込めが狙いで、自民党が憲法改正草案で掲げる「緊急事態条項」と似ているが、全く別のものといえる。
ところが、当の首相が先日の国会審議で「与野党の枠を超えた活発な議論を期待したい」などと、改憲に結び付ける議論に期待感を表明した。続いて自民党も憲法改正推進本部の会合を開き、衆院憲法審査会での与野党協議に意欲を示した。
感染者が急増し、犠牲者が出ている状況下で、国民の不安をよそに党利党略を優先するような姿勢は到底理解を得られないだろう。
感染の終息にめどが立つまで改憲論議は棚上げし、政府や国会は対策に全力を挙げるべきである。
自民党が2012年に発表した改憲草案には、現行憲法にはない緊急事態条項が盛り込まれている。海外からの武力攻撃や大規模災害などの非常時に、内閣が国会に諮らずに法律と同じ効力の政令を制定できるとする内容だ。首相が閣議を経て「緊急事態宣言」を発する。
コロナ対策特措法の緊急事態宣言も首相が発令する。その点は同じだが、宣言を受けた政府や都道府県知事の対応は、外出自粛や休業要請などの呼び掛けが中心だ。
医薬品、食料品の保管命令や、臨時医療施設開設の土地建物使用など強制的な措置も可能だが、その権限も知事にある。内閣がトップダウンで超法規的措置をとれるとする自民党草案とは根本的に異なる。
コロナ対策特措法も、政府がNHKに指示ができるとされ、放送の自律を侵害しかねない懸念が指摘されている。国会の事前承認の歯止めもなく、見直すべき点は少なくない。
コロナ禍を改憲論議に結び付けようとする動きには、自民党内からも異論が聞かれる。「人命に関わる問題を悪用しようとする姿勢は許されない」(枝野幸男立憲民主党代表)などと野党が批判するのは当然だ。
明治憲法にも「緊急勅令」などの緊急事態条項があった。戦前に乱用された反省から現行憲法はこうした条項を設けず、個別の法律で対処する考え方を採用したとされる。歴史的な経緯も忘れてはならない。
発動されたコロナ特措法には休業要請に伴う補償の仕組みがなく、知事らは国に対応を求めている。医療崩壊を避ける努力も待ったなしだ。
政府、与党は国民の安心と安全の実現を最優先に、眼前の課題解決に尽力すべきである。