共産党の小池晃書記局長と田村智子政策委員長は6日、国会内で記者会見し、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う党国会議員団の「緊急要望」を発表し、田村氏が同日、政府に届けました。
しんぶん赤旗の記事を「緊急要望」の全文と共に紹介します。
文中の太字強調部分は原文に拠っています。
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「新型コロナウイルス感染症対策 緊急要望」を発表
小池書記局長・田村政策委員長が会見
しんぶん赤旗 2020年4月7日
日本共産党の小池晃書記局長と田村智子政策委員長は6日、国会内で記者会見し、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う党国会議員団の「緊急要望」を発表し、田村氏が同日、政府に届けました。(全文は下に掲載)
記者会見で小池氏は、与党が検討中の緊急経済対策に言及。政府の要請による自粛などの行動制限やイベント中止などに伴う損失への補てんという考え方が完全に欠落していると指摘。「中身も抽象的で、『事業収入が前年度と比較して大幅に急減した事業者に対して給付を行う』としか書いておらず、具体的な基準が一切示されていない」と批判しました。
また、昨年10月の消費税率10%への増税が景気に与えた影響に全く言及していないなど、「消費税を連想する言葉をすべて排除したのかと思わざるをえない」と指摘しました。
さらに、1世帯30万円の給付金の支給対象も複雑怪奇だとして、「自分が該当するのかどうかもほとんどの人が直ちにわからないので、これではすぐに給付できないのではないか」と批判。新型コロナ発生前に比べて収入が住民税非課税水準に落ち込んだ場合や、収入が半分以下に激減して住民税非課税の2倍の水準以下になった場合などが条件になっており、「対象者が狭く、必要な人に給付されない。不公平な制度になってしまうのではないか」と強調しました。
田村氏は、政府が緊急事態宣言を発令しようとしているもとで、2日に政府に届けた緊急要望に改めて若干の補充を行って手渡すことになったと説明しました。
さらに、「自粛と補償はセットで」という考え方について、「私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用ひることができる」という憲法29条3項の規定に言及。「感染拡大防止は、まさに公共の福祉そのものだ。そのために自粛して営業しないということへの補償は憲法の精神に沿って求められるものだ」と主張しました。
その上で、緊急に全国民に1人あたり10万円の給付金支給を新たに求めると説明。困っている人に一刻も早く支給すべきだとして、「所得制限などさまざまな条件をつけると非常に複雑で、その手続きで遅れてしまう」と強調しました。
さらに、東京都で病床がひっ迫しているとして、一般病床と同感染症の病院を分けて設けることや、軽症者対応は宿泊・療養施設を基本とし、国の責任で確保し、費用負担することも明記したと述べました。
新型コロナウイルス感染症対策 緊急要望
2020年4月6日
日本共産党国会議員団
日本共産党の小池晃書記局長と田村智子政策委員長が6日の記者会見で発表した党国会議員団の「新型コロナウイルス感染症対策 緊急要望」の全文は次の通りです。
1、自粛要請と一体に補償を行うこと――苦境に陥っている事業者・個人に感染防止対策として思い切った補償に速やかに踏み出す
イベントや外出の自粛要請により、収入が途絶える、激減する事業者・個人が広がっている。収入減への補償に踏み出してこそ、自粛要請にこたえて安心して休業することができ、感染拡大防止の実効性を確保できる。感染防止対策として「自粛要請と一体に補償を行う」ことを、一刻も早く政府の基本方針にすえるべきである。憲法29条は「私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用ひることができる」としている。この精神にたつなら、感染拡大防止という公共のために起きた損失を国が補償することは、憲法上の要請である。
(1)緊急に、すべての国民を対象に1人10万円の給付金を支給すること。
現金給付は、「1人10万円」を求める。一刻も早く届けることを最優先にする。さまざまな条件をつけることによる事務手続きの煩雑化などを避け、すべての国民(日本に居住している外国人を含む)を対象にする給付を急いで行う。高額所得者は新型コロナ終息後に所得税の増税で実質的に返納してもらうなどを検討する。これはあくまで緊急の措置であり、一回きりの現金給付でおわりにせず、賃金・収入補償の仕組みを急いでつくる必要がある。
(2)賃金・収入の8割以上を補償する手だてをとること。
雇用保険加入者か否かにかかわらず、非正規雇用労働者、フリーランス、自営業者も含め、通常の賃金・収入の8割以上を補償し、速やかな支給ができる手だてをとること。
(3)「自粛」による倒産・廃業をさせないために、固定費などへの補償、税・社会保険料の減免を行うこと。
自粛要請によって直接・間接に影響をうけているすべての中小・小規模事業者に対して、家賃・地代・水光熱費・リース代などの固定費への直接助成をはじめ、自粛要請による損失を補償する。また、国保料(税)の緊急減免をはじめ税・社会保険料の減免や消費税納税の猶予を行う。
(4)イベント中止などにともなうキャンセル料・必要経費の補償を行うこと。
(5)無担保・無利子融資を当面20兆円以上の規模にするとともに、速やかに受けられるようにすること。
中小・小規模事業者が資金繰りのために、無担保・無利子融資を速やかに受けられるようにすること。そのためにリーマン・ショック時の20兆円を上回る規模を確保し、受付窓口の体制を強化するとともに審査の迅速化をはかる。
(6)リストラ解雇を起こさないよう、経済界・大企業に雇用責任を求めるとともに、万全の体制を講じること。
リーマン・ショック時に、大企業で、特別の融資を受けながら解雇リストラを行うことが横行した。経済界・大企業に雇用責任を果たすよう求めるとともに、特別融資の要件として、雇用の維持を明記する。
リーマン・ショック時のような「派遣切り」を二度と繰り返さないために、万全の対策を講じる。
(7)各自治体が取り組む地域経済対策を支援するために、「地方臨時交付金」制度を創設すること。
2、医療・介護・障害者等の社会保障の体制を崩壊させないための予算措置を行うこと
“医療崩壊”への危機感が専門家会議をはじめ、関係者から相次いで表明されているにもかかわらず、現場の体制確保、ベッドや軽症者のための療養・宿泊施設の確保をはじめ、医療のための本格的な財政措置が、いまだにとられていない。
また、感染拡大への不安から、受診抑制、介護の訪問サービスやデイサービスの利用を控えるなどにより、医療・介護などの事業所も大幅な減収となっている。このままでは次々と事業所がつぶれる危険性がある。社会保障の体制崩壊を起こさないための予算措置は急務である。
(1)新型コロナウイルス感染症への対応として、病床確保が急がれる。空き病床を準備する場合の減収分をはじめ、感染症対応で必要となる経費は、全額国が補償すること。
政府は「ベッドの確保」を要請しながら、それに伴う必要な財政措置を行っていない。医療体制確保に必要な経費は全額国が負担をすることを明確にする必要がある。
(2)軽症者への対応のために、宿泊・療養施設の確保と運営など必要経費は国の責任で確保すること。
軽症者対応は宿泊・療養施設を基本にすべきである。政府は、ホテルなどを借り上げた宿泊・療養施設を確保することを自治体に要請しているが、ここでも財政措置をとっていない。確保と運営に必要な経費は国の責任で確保する。
(3)医療機関を、新型コロナ対応の病院と、一般患者対応の病院に役割分担を行い、それぞれについて手厚い支援を行うこと。
役割分担をはかることは、医療崩壊を阻止するうえでも急務となっている。
(4)医療機関に、必要な装備・備品を速やかに供給すること。
医療関係者を感染から防護するために、医療用マスク、ゴーグル、防護服などを速やかかつ十分に供給すること。人工呼吸器の供給の抜本的強化をはかること。
(5)医療を最前線で担っている医療機関への補償を適切に行うこと。
患者発生にともなう減収および、外来患者の減少にともなう損失など、医療機関への補償を行う。
(6)急性期病床の大幅削減となる公立・公的医療機関の再編・統合を直ちに凍結し、撤回すること。
(7)介護事業所の感染症対策の必要経費、デイケア中止などによる減収分を全額補償すること。
(8)障害者施設に対する報酬を月額方式にすること。就労支援施設での自粛の影響による減収、利用者の工賃について全額補償すること。
3、PCR検査の問題点を明らかにし、ただちに改善策をとること
感染確認から短期間で重症化する事例が報告されている。重症者・死亡者をできる限り抑えるためには、迅速なPCR検査が必要なことは明らかである。また、医師が必要と判断しても、PCR検査にたどりつかない、検査までに相当な時間を要しているなどの指摘は後を絶たない。PCR検査の現状の問題点を明らかにするとともに、早急に以下の改善を行うこと。
(1)医師が必要だと判断したら、帰国者・接触者相談センターを介さずとも、速やかに検査が受けられる体制をつくること。
(2)相談センター、行政検査、クラスター対策など、対策の中核となる保健所体制の抜本的な強化に予算措置をふくめ国が全力で支援すること。
(3)抗体検査を早期に導入すること。
(4)帰国者に対して、公共交通機関の利用をしないよう求めるだけでなく、ホテル等の待機場所の確保や必要経費の補償をすること。
4、消費税5%への減税に踏み切ること
消費税10%への増税の影響で、経済指標がマイナス傾向を強めていたところに、新型コロナウイルス感染症の巨大な打撃が加わった。
政府は、消費税率引き上げについて「リーマン・ショック級の出来事がないかぎり、予定通り引き上げを行う」と説明していたことを見ても、消費税率の引き下げに踏み切ることは当然である。
消費税減税は、食料はじめ生活必需品はどんな時期にも購入するのであり、所得の少ない人ほど手厚くなる重要な生活支援策となる。さらに、新型コロナ感染が終息に向かう時期には消費喚起、需要拡大効果となる。
ただちに消費税率5%への引き下げを行い、一時的ではない経済対策として、応能負担を原則とした税制の見直しを迅速にすすめること。