政府は当初、休業を要請するに当たり公然と「水商売には補償しない」と述べました。それでは勿論生きて行けません。さすがにその表現は改めましたが実態はどうでしょうか。
母子家庭を支援するNPO法人が今月上旬、同法人会員を対象に実施した調査では、26%が「補償を受けられない」、56%が「受けられるか分からない」で、「休業補償を受けられた」は19%にとどまりました。
補償を受けられない人たちはどうすればいいのでしょうか。食事がとれず、光熱費がなく、家賃を払えなければ人は生きていけません。どうしろと言うのでしょうか。
昨年11月、スナックを開店した4人の子を持つシングルマザーは、3月末以降客がゼロの日が続き3日に営業をやめました。開業時の借金が残るなかで収入が途絶え、このままではにわずかな蓄えを崩し、さらに借金を重ねるしかありません。苦楽を共にする従業員の生活に心を砕くもののどうすることも出来ません。
福岡市内でバーを経営する40代男性は「あくまで要請。強制ではないので店は開けます」。客は少なく「三密」ではないので今後も営業を続けるといいます。生きるためにそうするのを非難できるでしょうか。
パチンコ店を経営する40代男性も「大手は休めるが、うちは無理」として、店内では換気や消毒を徹底し、客にもマスク着用をお願いし営業を続けるということです。
実態は「補償なき休業」です。政府が宣伝する「絵に描いた餅」では、人は生きていけません。
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<新型コロナ>シングルマザー困窮 「すぐに現金給付欲しい」78%
東京新聞 2020年4月14日
新型コロナウイルスの感染拡大による臨時休校の影響で仕事を休まざるを得なくなった保護者への休業補償を巡り、仕事を休んだシングルマザーのうち三割近い26%が「(補償を)受けられない」と回答していることが、母子家庭を支援するNPO法人「しんぐるまざあず・ふぉーらむ」(東京)の調査で分かった。政府などへの要望を複数回答で聞いたところ「すぐに現金給付が欲しい」が78%と最多で、経済的な困窮ぶりが浮き彫りになった。(編集委員・上坂修子)
調査は今月上旬、同法人会員を対象に実施し、子どもがいる約二百人から回答を得た。一斉休校により仕事を休んだ母親は16%。うち休業補償の対象となる小学生などの親に聞いたところ、休業補償を受けられるか「分からない」と答えたのは56%に上った。
政府は小学校や幼稚園などに通う子どもの世話をする必要がある保護者に特別な有給休暇を取得させた企業に対し、日額八千三百三十円を上限に助成金を支給することにしたが、企業が申請しなければ補償を受け取ることができない。今回の調査で、休業補償について「受けられた」としたのは19%にとどまった。
新型コロナの影響で、収入が「なくなる」と「減る」とした回答は合わせて53%に達し、一カ月前の調査よりも5ポイント増えた。
一方、休校で子どもの食費や光熱費など支出が増えたとの声も寄せられた。子どもが二人いる派遣・契約社員のシングルマザー(神奈川県)は「電気代、食費などの支出が大幅に増え、家賃も払えないほど困窮している」。パートで子ども三人を育てる母親(山梨県)は「小中学校の入学準備にお金がかかり、食費や光熱費、学費を払える自信がない」と不安を吐露した。
子どもについての心配事は「生活リズムが心配」「一人で勉強できない。勉強についていけるか心配」「オンライン学習支援も、パソコンや通信環境がない」が挙がった。
同法人は「シングルマザーの多くが平時でさえ生活が苦しいのに、コロナ禍で経済的負担に加え子どもに関する心配事も重くのしかかっている」とし、さらなる支援を求めた。
「生活できない」4人の子のシングルマザー、経営のスナックは営業自粛 新型コロナ、京都・祇園で悲痛な声
京都新聞 2020年4月14日
新型コロナウイルス流行を受け、営業自粛に入った祇園の飲食店経営者が京都新聞社の取材に応じてくれた。
「命を守ることは最優先。でも収入がないと私たちも生活できない。皆、悲鳴を上げている」。祇園でスナックを営む女性(39)が苦しい胸の内を語った。
女性は7年前から祇園のラウンジなどで働き、昨年11月に独立した。開店後数カ月でコロナ禍に見舞われた。3月に入ると団体客が激減。それでも1、2人の客は来てくれたが、3月末以降は客ゼロの日が続き、3日から営業をやめた。
「人命がかかっており外出自粛要請は当然。店としても客や従業員がうつるのはなんとしてでも避けないと」。祇園で一斉自粛ができないかと考え、先輩ママに相談したりもした。
歓楽街で懸命に生きる人々の生活は日増しに逼迫(ひっぱく)している。女性は4人の子を育てるシングルマザー。開業時の借金が残るが、収入は途絶えた。今の状況が長引けば家計を維持するのにわずかな蓄えを崩し、さらに借金を重ねるしかない。自分のこと以上に心を砕くのが、苦楽を共にする従業員の生活。感染拡大の影響で昼の勤務先が店を畳む恐れがあるスタッフもいる。
家で過ごさざるを得ない客に少しでも楽しい時間をと、ビデオ通話を使う営業も検討し始めた。だが、感染終息が見えない中で先の見通しは全く立たない。
祇園で30年来、バーを経営する男性(54)は「これほどの落ち込みは経験がない」と落胆する。5月上旬までの休業を決めたが、家賃は払い続けなければならない。苦境を案じた家主が減額を申し出てくれた。
客は祇園で働く人が多い。「もう閉店する」。クラブや料理屋を営む知人たちから諦めの声が漏れ始めた。「来月には再開できると分かっていれば何とか踏ん張れる。でも、さらにひと月、ふた月と休業を余儀なくされるなら持ちこたえられない店が相次ぐかもしれない」
「生活できない」営業続ける姿も 福岡の休業要請、補償なく
西日本新聞 2020/4/14
新型コロナウイルスの感染者数が増加の一途をたどる福岡県は13日、特定業種の休業要請に踏み切った。名指しされた店舗や施設の多くが、政府の緊急事態宣言を受けて既に自主休業している中、補償がないままの要請にどれほど実効性があるのか。今も営業を続ける経営者からは「生活ができなくなる」と批判が相次いだ。
「あくまで要請。強制ではないので店は開けます」。福岡市内でバーを経営する40代男性は今後も営業を続けるという。3月末から客は常連のみ。店内は感染リスクが高いといわれる「3密」状態にはなりようがない。「すぐに補償金をくれるなら休業を考えてもいいが、生きていくには感染リスクがあっても営業するしかない」と言い切る。
県内でパチンコ店を経営する40代男性も「大手は休めるが、うちは無理」。店内では換気や消毒を徹底し、客にもマスク着用をお願いする。「パチンコ店に感染リスクがあるように言われるが、対策は万全。クレームは覚悟しているが、家族や従業員の生活があることも理解してほしい」
全国でネットカフェを展開する「快活フロンティア」(横浜市)は14日から県内全12店舗を臨時休業する。広報担当者は「県からの要請を重く受け止めたい」としている。
休業対象からは外れたが、午後8時までの営業時間短縮が求められる飲食店。県内で大手飲食チェーンのフランチャイズ店を経営する50代男性は「なんで東京は協力金が出て、福岡はないんだ。不公平だ」と怒りをあらわにした。4月の売り上げは約3割減。本部から指示は出ていないが、営業時間短縮でさらなる収入減は避けられない。「感染が怖いので今すぐにでも休みたいが、生活を考えると無理。生殺しの状態です」
北九州市の菓子店も4月に入り売り上げが激減し、家賃と人件費が重くのしかかる。男性経営者(40)は「国や県はしっかりと補償してほしい」と訴える。
同県飯塚市で小料理屋を営む松田幸子さん(81)は「休業するしかない」。開店時間は午後5時。要請に従えば3時間しか営業できない。「赤字になるなら休んだ方がまし」と話した。
一方、休業対象から外れた理美容店。北九州市小倉北区の都心部では既に休業した店が目立つ。同区で美容室を経営する男性(32)は「予想どおり。万全の対策をして、ほそぼそとしのぎたい」。
ただ従業員からは違った反応も。全国チェーン店勤務の30代男性は「生まれたばかりの長男がいるので、接客で感染するのが怖い。正直、休業要請してほしかった」と本音を漏らした。
同じく対象から外れた同県久留米市の温泉施設「湯の坂久留米温泉」。担当者は「安心はしていない。施設で集団感染などが発生すれば営業が継続できない」と不安をのぞかせた。