2020年4月19日日曜日

「怖いけど」「生活のため」 営業せざるを得ないのが現実

 営業する側の飲食店などにしてもコロナの感染は恐怖です。それでも政府が支援しないのであれば、生きていくためには営業をするしかないのが現実です。
 見かねた地方自治体や商店街組合などが支援を講じています。
 以下の6つの記事を紹介します。

「怖いけど」「生活のため」… 閑散も半数営業、福岡の風俗店街 (西日本新聞
 家賃5割補助へ 須賀川市が独自支援 中小企業など対象 (福島民報
 支援金「助かる」「もう間に合わない」 資金繰り困難、店主ため息も (神戸新聞
 商店街の全組合員に一律20万円支給 ~ 京都の商店街振興組合 (京都新聞
「大型開発は不要不急」 IR見直し申し入れ (大阪日日新聞
 なぜ「国民」に一律現金10万円給付なのか? 外国人軽視に違和感レイバーネット日本
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「怖いけど」「生活のため」… 閑散も半数営業、福岡の風俗店街
西日本新聞 2020/4/18
 新型コロナウイルスの感染拡大を受け、福岡県が休業要請をしている中、性風俗店が集まる福岡市・中洲の南新地には今もネオンがともる。約100店舗のうち約半数は営業している。店の関係者は「その日暮らしの女の子を見捨てられない」「行政の補助じゃ全く足りない」とそれぞれの事情を訴える。風俗関係者の相談を受ける団体によると、全国で4月の相談件数は既に昨年同月の7倍超という。家庭や古里でさまざまな問題を抱えた人を受け入れてきた南新地を歩いた。
 15日午後8時、人通りがないせいかネオンが異様に明るく感じる。
 「今ならナンバーワンの子を紹介できますよ」。ある店舗型風俗店に入ると、マスクなしの男性店員が声を掛けてきた。待合室に客は2人。「限定価格」と半額をうたう看板があった。
 別の男性店員は「お客さんは10分の1。このまま続けば中洲は全滅っすよ」と吐き捨てるように言った。緊急事態宣言後に休業するか悩んだが、頭をよぎったのは女性従業員の存在。「訳あってたどり着いている子が多い。生活のため稼がないと」
 雑居ビル1棟を借り切っている別の風俗店の男性店員によると、賃料だけで月140万円。福岡市の緊急支援策は休業した風俗店も対象だが、「上限50万円の賃料補助だっけ? 到底足りないよね」。打撃は清掃業者やタオルの納入業者など取引業者にも及んでいる。ほかにも仕事がある女性は休みにして、風俗でしか稼ぎがない女性のみが働く。それでも「もって2カ月」と言い切る。
 「コロナ対策店」を掲げて営業する店は、従業員も客も体温を測り、部屋も毎回消毒する。「感染が怖いけど頑張ります」と働き続ける女性もいるという。
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 「夜の街は特に『3密』、クラスターになりやすい」。安倍晋三首相は17日夕の会見であらためてリスクを訴えた。
 「世間が右と言っているのに左には行けないよね」。休業を選んだ店の男性店員もまた頭を抱える。性風俗店というだけで融資を受けづらく、既に資金繰りに窮しているという。「命を守るための自粛。でも、まず自分が食べないと死んでしまう
 風俗で働く人たちの無料生活・法律相談を受ける「風テラス」では、3月下旬以降相談が急増した。全国で昨年4月は77件だったが、今年4月は16日時点で526件。うち福岡県は12件で、「佐賀や久留米に出稼ぎに行ったが全く稼げない。どうしたらいいでしょうか?」と泣く女性もいたという。
 運営する一般社団法人「ホワイトハンズ」(新潟市)の坂爪真吾代表理事は「風俗で働いていることを隠し、行政にも頼れない人が多い。相談すらできていない人も相当数いるはずだ」と指摘する。風俗店は後ろ盾がない人や逃れてきた人が人生をやり直す場所にもなっていたという。「社会のセーフティーネットとしての風俗が機能しなくなっている」と話す。
 県は「風俗店に限らず事情があると思うが、コロナの早期終息に向け協力をお願いしたい」としている。 (梅沢平、小川勝也)


家賃5割補助へ 須賀川市が独自支援 中小企業など対象
福島民報 2020/04/18
 須賀川市は新型コロナウイルス感染拡大を受け、飲食業などを手掛ける中小企業・小規模事業者を対象に家賃の五割補助をはじめとした独自支援策を展開する。市によると、感染拡大の影響を受けた事業者への補助金交付を打ち出したのは県内で初めて。
 市内の飲食店などは来店者の減少により売り上げが減っている。雇用の維持と事業継続につなげるため支援を決めた。事業費約六千万円を専決処分して予算化した。今月下旬から申請を受け付け、五月に補助を始める予定。
 市内の飲食、旅館、旅行の三業種向けに「店舗等維持補助金」「雇用維持補助金」「感染拡大防止経費補助金」の三制度を設けた。店舗等維持補助金は売り上げが前年同月比20%以上減った事業者が対象。店舗を賃借している事業者に賃料の半額を三カ月分補助する。月五万円を上限とする。市内には三業種で約三百事業者が存在し、このうち七割程度が賃借で店を構えているという。自己所有店舗などで営業する事業者にも光熱水費相当分として、月三万円を上限に三カ月分を補助する。
 雇用維持補助金は国の雇用調整助成金申請事業者が対象で、従業員数に応じた一定割合の定額補助を市が上乗せする。事業主の都合で休暇や解雇となり、雇用調整助成金の支給対象とならなかった非正規従業員らへの定額補助なども定めた。
 感染拡大防止経費補助金は、感染防止用品の購入費用として一事業所五万円を上限に支給する。
 業種を問わず市内の中小企業・小規模事業者には信用保証料補助を行う。返済期間の変更などに伴い増額となる信用保証料を補助する。上限は二十万円。
 須賀川商工会議所、各商工会には支援制度の相談体制の強化のための経費を補助する。
 橋本克也市長は十七日、市役所で関係団体代表に支援内容を説明した。渡辺達雄須賀川商工会議所会頭は「支援策は事業者の後押しにつながる。今後も事業を継続できるように市と連携しながら取り組む」と述べた。


支援金「助かる」「もう間に合わない」 資金繰り困難、店主ため息も
神戸新聞NEXT 2020/4/18
 新型コロナウイルスの感染拡大で、兵庫県も休業要請に応じた事業主らに最大100万円の支援金を給付することを決めた。先の見通せない状況が続く飲食店や遊興施設。店主らからは歓迎の声が聞かれる一方、「もういまさら間に合わない…」とのため息も漏れる。(谷川直生、中村有沙、森 信弘)

 「支援金をもらえるのはありがたい。助かる」と喜ぶのは、神戸市中央区のバー「ローゲンジッツ」店主、難波宏行さん(41)。休業要請が出される前の7日から営業を休止している。
 「休んでも店の維持費はかかる。支援金は家賃や人件費などの固定費に充てたい」と難波さん。一方で、支援金だけだと資金繰りは1カ月程度しかもたないとも。「支援金の給付が決まったのを機会に、足並みをそろえて休業し、少しでも早く終息につながれば」と話す。
 神戸・三宮にある明石焼き店「司」の店主、市原克司さん(78)は「支援金をもらっても間に合わないところまできている」とあきらめ顔だ。新型コロナの影響で客足が遠のいた。通常は深夜2時までの営業時間を、県の要請前から午後6~8時に短縮。4月の売り上げは例年の1割に届くかどうかといい、「テレビをつけてもコロナの話ばかり。精神的にも参りそう」と漏らす。
 「ありがたいが、1カ月の家賃と光熱費の基本料金だけで50万円くらいかかる」。音楽ライブなどが行われるライブハウス「Wメリケン波止場」(神戸市中央区)を営む西垣光広さん(73)はため息をつく。予約のキャンセルが2月半ばから始まり、休業に入る前も含め4月の利用はゼロ。夏場のキャンセルまで入ってきているという。「心置きなく営業できるまで、家賃の補助など一定の支援はほしい」と話す。
 神戸・元町の喫茶店「はた珈琲(コーヒー)店」は、休業や営業時間の短縮は要請されていないが、18日から月末までの臨時休業を決めた。マスターの畑芳弘さん(63)は「従業員の安全、安心のために決断した。営業しても売り上げは普段の半分以下。何らかの補償を考えてほしい」と訴えた。


商店街の全組合員に一律20万円支給 
   イベント費などから捻出、京都の商店街振興組合
京都新聞 2020年4月18日
 修学旅行生や外国人観光客が京都土産を買い求めることで知られる新京極の商店主らでつくる新京極商店街振興組合(京都市中京区)は、新型コロナウイルスの感染拡大で、業績が悪化している全組合員に、一律20万円の支援金を支給することを決めた。協賛会員にも10万円を支給する。外出自粛要請を受けてすでに半数が休業しており、当座の家賃の支払いや生活費などに充ててもらう。同組合は「事業形態や規模が違うため一律の金額でいいのか議論もあったが、スピード感を重視した」としている。

 同振興組合は、組合員が128事業者、協賛会員が40事業者。同商店街では、外国人観光客が激減した2月から客が減り、大阪など7都府県に緊急事態宣言が出た今月7日以降、約半数が休業している。
 組合によると、組合員は個人事業主が多く、休業は生活に直結する。国の方向性が定まらなかった中、組合として早く対策を採るべきだとして、支援金の支給を決めた。
 支援金支給には総額約3千万円かかるが、本年度のイベント費と2022年の新京極商店街誕生150年に向けて、アーケード改修のために積み立ててきた資金から捻出する。今月末までに支給する予定。
 岡本喜雅理事長は「明治5年に商店街が始まって以来の苦境。組合員とともに踏ん張り、街を守りたい」としている。


「大型開発は不要不急」 IR見直し申し入れ
大阪日日新聞 2020年4月18日
 大阪府・市が同市湾岸部の人工島「夢洲(ゆめしま)」に誘致を目指すカジノを含む統合型リゾート施設(IR)に反対を訴える三つの市民団体が17日、府庁を訪れ、新型コロナウイルスの感染拡大防止策に予算や人員を集中して投入すべきだとして、カジノ誘致などについて「大型の開発こそ不要不急」と計画の見直しを申し入れた。

府の担当者(右)にIR誘致の計画見直しなどを申し入れる市民団体の代表ら=17日、府庁 
 申し入れした市民団体は、「どないする大阪の未来ネット」▽「STOPカジノ!大阪」▽「夢洲の都市計画変更を考える市民懇談会」-の3団体。
 緊急事態宣言に伴う外出自粛や民間施設への休業要請によって、人々の雇用や収入が失われ、経営や資金繰りなどへの対応が喫緊の課題だと強調。IRや2025年の関西・大阪万博、大阪都構想について見直し、市民生活を守る対策を最優先すべきだと主張している。
 「STOPカジノ!大阪」の共同代表、服部良一さんは「今こそ府民の暮らしを守るために、行政が何ができるかが重要。施策を見直し、お金やマンパワーを集中してほしい」と語った。市へは郵送で申し入れをしたという。


なぜ「国民」に一律現金10万円給付なのか?  外国人軽視に違和感
弁護士 指宿 昭一 レイバーネット日本 2020-04-18
 安倍晋三首相は16日夜、新型コロナの政府対策本部で、1世帯当たり30万円の支給策を撤回し、「すべての国民を対象に一律10万円の給付を行う方向で与党に再度検討してもらう」と公表した。メディアは、「全国民に現金10万円給付」と報道した。
 私は、首相の方針表明にもメディアの報道にも強い違和感を感じる。なぜ、「国民」への給付なのか? 日本に在住する外国人は対象にしないのか? 2009年に1万2000円の定額給付金支給の時は、住民基本台帳に基づき、日本に滞在する外国人の多くには支給がなされている。ただし、旅行中の外国人(短期滞在の在留資格)と在留資格のない非正規滞在者には支給がなされていない。
 その後の報道によると、総務省では、今回も住民基本台帳によって支給する方向で検討しているという。つまり、住民票を有する外国人には支給がされる方向だということである。
 第一の疑問は、なぜ、安易に「国民」「全国民」という言葉を使うのかということである。実際に、多くの外国人は、「自分たちはもらえないのか」という不安を感じたという。安倍首相もメディアも、「国民」という言葉を使ったときに、そこから排除されてしまう外国人たちのことを考えていなかったのであろう。多文化共生を目指す国としては、あまりにもお粗末だ。
 第二の疑問は、住民票を有しない外国人には支給しないでよいのかということである。各国の入国制限のため帰国できない旅行者には支給しなくていいのか。在留資格のない外国人には支給しなくていいのか。在留資格がないとないといっても、難民申請をしていたり、日本に家族がいるため在留特別許可を求めていて帰国できない事情の外国人は多くいる。しかも、今は、各国の入国制限のため、帰国しようと思ってもできない場合もあるのである。新型コロナウイルス感染症に伴う経済対策としての支給であれば、在留資格の有無で区別する必要はないはずである。また、入管から仮放免許可を受けている外国人については、本人の同意の下で、各自治体にそれぞれの居所が届け出られているのであるから、支給手続きを取ることは可能である。
 現金10万円の支給対象をどうするかによって、日本がどういう国であるかが試されている。