2020年4月5日日曜日

05- この政権では無理だ 「医療崩壊」する前に「国が崩壊」する

 別掲の記事で紹介されているように、いまや餓死者が続出しても不思議はないというのが 収入の途を絶たれたパートなどの非正規労働者の実態です。それなのに政府は何もしようとしません。
 コロナ禍が現在はなんとか「持ちこたえている」ということと、政府が要請している「自粛」などで収入の途を絶たれた非正規労働者たちが、生死の線上を漂っていることとは別の問題です。

 日本で最初のコロナ禍感染者が出てから約3ヶ月になります。いずれ感染爆発が危ぶまれる事態になることは当初から予想されていたことですが、この間政府はどんなことをしてきたのでしょうか。
 安倍政権は、コロナ禍の拡大を抑えることでも無為無策、経済的困窮者の命を守る点でも無為無策のままでいます。
 そもそも自粛の「要請」であれば経済的救済の義務が生じないと思っているのであれば大間違いです。国民の命を守ることこそが政権に課せられている最も根源的な使命です。

 日刊ゲンダイが、「この政権では無理だ 世論が封鎖を求め政治がためらう倒錯 「医療崩壊」する前に「政治も行政も崩壊」)」とする記事を出しました。
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この政権では無理だ 世論が封鎖を求め政治がためらう倒錯
日刊ゲンダイ 2020/04/03
 新型コロナウイルスの感染拡大が止まらない。
 WHO(世界保健機関)のテドロス事務局長は1日の会見で、「数日以内に感染者が100万人、死者が5万人に達する」との見通しを示した上で、「急激な感染の増加と拡大を深く懸念している」と危機感をあらわにしていたが、米ジョンズ・ホプキンス大学システム科学工学センター(CSSE)の2日(日本時間3日)の集計によると、新型コロナウイルスの世界全体の感染者は累計100万人を突破。死者は、世界全体で5万人を超え、AFP通信によると、新たに中南米とカリブ海諸国で2万人以上の感染者が確認された。
 日本にとってもいよいよ正念場の時期を迎えているのは間違いない。とりわけ、1000万人都市の首都・東京では、日を追うごとに経路不明の感染者が増加。感染が広がる欧州などからの帰国者を起点とした感染拡大も懸念されている。
 こうした状況を受け、1日に開かれた政府の専門家会議では、東京、神奈川、愛知、大阪、兵庫の5都府県は「医療体制が切迫し、今日、明日にでも抜本的な対策を講じる必要がある」と“医療崩壊”を懸念する声が上がり、日本医師会(日医)は同日、「医療危機的状況宣言」と題する文書を発表。「一部地域では病床が不足しつつある」として、政府に対して特別措置法に基づく「緊急事態宣言」を出すよう改めて求めた。

安倍首相はコロナ対策よりも政権維持
 早い段階での「緊急事態宣言」の発令を求めているのは日医だけじゃない。国民民主党の玉木代表も1日の会見で「オーバーシュート(爆発的な感染拡大)の瀬戸際の状況にある」と指摘し、これ以上の感染拡大を防ぐためには「緊急事態宣言」を出すべき、との見方を示していた。
 こうした意見に対して慎重姿勢を崩していないのが安倍首相だ。1日の参院決算委で「緊急事態宣言」について問われた安倍は「最悪を想定し、既にさまざまな可能性などについて準備を進めている」としつつも、「現時点では全国的かつ急速な蔓延の状況にはなく、ぎりぎり持ちこたえている」「今この時点で、宣言を出す状況ではない」と即時の宣言発令を否定した。
「緊急事態宣言」が発令された場合、<臨時医療施設を整備するための土地や建物の強制使用><学校や福祉施設など人が集まる施設の使用停止要請や指示><運送事業者に緊急物資の輸送要請、指示><医療品や食品の売り渡し要請、収用、保管命令>――など、私権や行動の制限に加え、経済活動の停止も余儀なくされる
 そんな強権発動を日医や野党が政府に強く求め、本来であれば積極的に“利用”したいであろう政府がためらっているというのも何だか不思議な構図だが、こういう倒錯した状況に陥ったのも、安倍政権があまりに無為無策だからだろう。政治評論家の本澤二郎氏がこう言う。
「特措法を改正してまで手に入れた緊急事態宣言を出さないのは、今、発令しても支持率が上がらないと考えているからでしょう。安倍政権にとっては新型コロナよりも政権維持が大事なのです。大体、各国がPCR検査能力を1日数十万件レベルまで引き上げている中で、日本では検査総数がほとんど増えないのはおかしいでしょう。検査しないで治療も何もあったものではない。安倍政権は国民の生命をもてあそんでいるに等しい」

「医療崩壊」する前に「政治も行政も崩壊」
 第一生命経済研究所の試算によると、仮に「緊急事態宣言」が発令され、東京都が1カ月間のロックダウン(都市封鎖)となった場合、物価変動を除く実質の国内総生産(GDP)は約51兆円下押しされるという。封鎖が南関東全域に広がれば、損失は8・9兆円まで拡大だ。
 いくら新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐためとはいえ、そんな経済崩壊を招きかねないような“劇薬”を世論が求めている理由は2つあるだろう。
 1つは、もはや、今の安倍政権には新型コロナウイルスを封じ込められないだろうという絶望感だ。
 新型コロナウイルス対策で、安倍政権がこの1カ月間に取った対応といえば、小中高の一斉休校要請や大規模イベントの開催自粛を促すだけ。危機感を煽るばかりで具体策は何も講じてこなかった
 そもそも、誰が見ても初動対応の遅れと水際対策の失敗が原因で感染者が急増しているにもかかわらず、安倍はずっと「踏みとどまっている」などと言い続けていたから唖然呆然。さらに、ここにきて「日本が戦後経験したことのない国難ともいえる状況」とか言い出し、唐突に打ち出してきたのが、5000万余りある全世帯に「布マスクを2枚ずつ配る」というトンチンカン策だから呆れてしまう。

欧米は検査拡充、病床増設を進める
 ネット上では「戦時下の竹やり」と皮肉る声も飛び交っているが、そりゃあそうだろう。今ごろマスクを2枚配って、どれだけの効果があるというのか。菅官房長官は2日の会見で、配布マスクの値段を「1枚200円程度」と説明していたが、そうすると、マスクだけでざっと約200億円だ。梱包、配送料を含めれば、それ以上のコストになるのは間違いないから、これほどの無駄遣いはない。
 新型コロナウイルス対策をめぐって日本と対照的なのが他の国だ。中国はわずか1週間で1000床の仮設病院を建設し、3月中旬に医療機関の収容能力の増強を発表したドイツはその後、ホテルなどを新型コロナウイルスの集中治療施設に転用。呼吸器系の治療体制を倍増させた。
 感染者が急増している米ニューヨークも今、セントラルパークに仮設病院をどんどん建設中だ。世界各国が最悪の「医療崩壊」を避けるために知恵を絞り、PCR検査の拡充や人工呼吸器の大量整備などを懸命に進めている中で、日本は「マスク2枚配布」というのだから、何をか言わんやだ。
 日医が「緊急事態宣言」の発令を再三、求めているのも、あまりの無策に呆れた医療現場の悲鳴を代弁しているワケで、現実味を帯びる「医療崩壊」の前に、「政治も行政も崩壊」という状況に国民が冷静さを失いつつあることが“劇薬”を求めているもう1つの理由ではないのか。コラムニストの小田嶋隆氏がこう言う。
「安倍政権が緊急事態宣言の発令に二の足を踏んでいるのは、おそらく休業補償などカネの関係があるからではないか。今の自粛要請というのは、ただ黙って国民に我慢していろということであり、これでは飲食業などは生活が成り立ちません。緊急事態宣言を求める声が今、強まっているのは、自粛要請ではなく、宣言を出してきちんと補償してほしいという国民の切実な思いの表れだと思います」

 米国からは言い値で大量の武器を購入するクセに自国民の生活を守るための支出には二の足を踏む。もはや誰からも信じられていない「悪夢の安倍政権」を一刻も早く退場させるべきだ。