緊急事態宣言によって企業が休業を余儀なくされた場合、「企業の自己都合」とはいえなくなるので「休業手当を払わなくても違法ではなくなる」(同省監督課)ということです。
3日の衆院厚労委員会で共産党・宮本徹衆院議員がこの問題を取り上げると、加藤厚労相は「私どもとしては雇用調整助成金という制度をもって引きつづき休業手当を払っていただくべく、これはまあ、お願いをしていくということになるんだろうという風に思う」と、他人ごとのような答弁をしました。何故「まあ、お願いをしていく」なのでしょうか。
労働基準法であれ何であれ、こんなコロナ禍を想定したものではないのだから、法解釈で済まされるようなものではありません。現実に困窮する人たち、餓死しかねない人たちが無数に生じていることに対応した救済措置を大至急講じるというのが政府に課されている義務です。
残念ながら現政権は決定的にそうした要請に適っていません。そんな政権による緊急事態宣言が出されることになりました。
LITERAの記事を紹介します。
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緊急事態宣言で従業員は逆に補償が貰えなくなる? 自粛企業の休業手当支払い義務消失、加藤厚労相は「まあお願いしていく」と曖昧回答
LITERA 2020.04.06
「事業の継続を後押しし、雇用を守り抜く」──。本日夕、安倍首相は新型コロナウイルス感染拡大を受けて明日7日に緊急事態宣言を出すと発表、同時に明日閣議決定する予定の緊急経済対策について「強大な規模となるGDPの2割にあたる事業規模108兆円の経済対策を実施することとした」と述べた。
だが、驚いたのは肝心の108兆円の中身だ。安倍首相は新たに「前例無き26兆円規模で、納税や社会保険料の支払い猶予をおこなう」と公表したのだが、言うまでもなくこれは納税や社会保険料の支払いを国が肩代わりするのでも免除するのでもなく、たんに支払いを先送りにしただけ。にもかかわらず、あたかもこれがすごい対策であるかのように「前例無き26兆円規模」などと胸を張ったのだ。
全体の細かな対策内容は現時点ではまだ判明していないが、「雇用を守り抜く」と宣言したわりには、具体性に乏しい。実際、いま、緊急事態宣言の発令に伴い、国民にとって、もっとも重要な問題が置き去りにされるのではないかという懸念が高まっている。
というのも、緊急事態宣言が発令された際の休業補償について、安倍首相も政府も、いまのところ何ひとつ口にしていないからだ。いや、それどころか、緊急事態宣言によって逆にいまは支給することが義務である休業手当が、払われなくなる可能性まであるのだ。
この問題を報じた東京新聞3日付の記事によると、通常、企業が社員らを休業させるときには、労働基準法に基づいて「会社都合による休業」として平均賃金の6割以上の休業手当を払う義務がある。現在の新型コロナの影響による営業不振や自粛により社員を休業させている場合もこれに当たる。一方、緊急事態宣言が発令されればライブハウスや映画館、劇場などといった施設に営業停止を要請・指示することが可能になるが、厚労省はこうした場合、〈施設・企業での休業は「企業の自己都合」とはいえなくなり、「休業手当を払わなくても違法ではなくなる」(同省監督課)としている〉というのだ。
これはライブハウスや映画館などだけの問題ではない。緊急事態宣言が出れば、生活必需品以外を扱う小売店や飲食店も客の減少や従業員が通勤できないなどの問題で休業を余儀なくされる可能性があるが、〈こうした場合も厚労省は、企業の自己都合とは言い切れず企業に「休業手当の支給義務を課すことは難しい」とみる〉というのである。
緊急事態宣言によって営業できない施設や、閉めざるを得ない状況に追い込まれる小売店、飲食店は数多くなるとみられるのに、逆に労働基準法に基づく休業手当が受けられなくなっても違法ではなくなる──。これはとんでもない話だが、3日の衆院厚労委員会でも日本共産党・宮本徹衆院議員がこの問題を取り上げると、加藤勝信厚労相はこんなことを述べたのだ。
「私どもとしては雇用調整助成金という制度をもって引きつづき休業手当を払っていただくべく、これはまあ、お願いをしていくということになるんだろうというふうに思う」
緊急事態宣言によって休業に追い込まれることで生活がどうなるのか、不安を募らせる国民が多くいるというのに、そんな状況でも加藤厚労相は休業手当の支給を「お願いしていく」と悠長なことを言うばかり……。だいたい、雇用調整助成金にしても、所属企業が雇用保険の適用事業主で、かつ企業が申告してはじめて企業に支給されるもので、すべての労働者が確実に受けられる状態になっていない。
つまり、緊急事態宣言に伴って必ず必要となるのは、企業の社員にパートやアルバイトを含む非正規社員、フリーランスや自営業者など幅広い人びとを対象とした休業補償と生活支援・補償策であることは言うまでもない。
しかし、安倍首相は本日、政府の対策本部において「1世帯あたり30万円の現金給付」を打ち出したが、既報でもお伝えしたように対象は「住民税非課税世帯」と「一定の所得制限を定め、収入が5割程度下がるなど急減した世帯」と、対象をかなり狭く限定。これに批判が集まると、追加で「児童手当を受給している世帯には子ども1人あたり1万円を追加給付」という案が出てきたが、これにも「あまりに少なすぎる」という声があがっている。さらに、これまでさんざん指摘されてきた中小企業や個人事業主への給付についても、ようやく中小企業に最大200万円、フリーランス・個人事業主に最大100万円の現金給付をすると公表されたが、これも今年1~3月のうちのいずれかの月収が前年比で半分以上の減収となった場合という条件付きだといわれ、すぐさま給付されるのかも現時点では不明だ。
緊急事態宣言が、生活を営むことがギリギリの状態に陥っている人びとに追い打ちをかけることになるのは必至だ。感染拡大を食い止めるためというのなら、安心して休業できる、その状況をつくり出さなくてはならないというのに、現時点での対応策では、生活補償はおろか、休業手当さえままならないとは──。
だが、これまで多くの人が政府の対応策に批判の声をあげることによって少しずつ政府の対応を改善させてきた。この休業手当の問題も、声をあげてクリアにさせなければならないだろう。 (編集部)