2020年4月19日日曜日

児玉龍彦の洞察 無能で時代遅れの専門家 中韓を嫉妬する政府(世に倦む日々)

 中国、韓国、ドイツなどは、PCR検査を励行するというオーソドックスな方法を採ることでコロナ禍を制しつつあります。
 これまでPCR検査を抑制してきた安倍政権は、ようやくPCR検査の重要性と検査枠の拡大を口にするようになりましたが、検査抑制の実態は全く変わっていません。
 年老いた父親が示した明らかなコロナ感染の兆候を訴えても、「相談窓口」が「基準を満たしていない」と検査を拒否したため、「父が死んだら責任を取るのか」と詰問してようやく認められたという例が報じられました。日本の実態はまさに中世の異常さを思わせます。

 18日夜のNHKはすでに医療崩壊が起きていると報じていました。政府は四重五重の条件をつけて検査を抑制する一方で、医療体制の拡充には指一本動かなさないままで推移したのですから、それは起こるべくして起きたことです。
 現在はまだ実態の十分の一以下しか感染者が表面化していないと見られるなかで、現実に医療崩壊が起きているのですからこの先の悲劇は想像することも出来ません。

 政府の無能と怠慢は言うに及びませんが、「世に倦む日々」によれば医術陣の専門家委員会も、「世界は、感染症の流行に対しては遺伝子工学を元に膨大検査をして情報追跡をする手法に移っていたのに、その流れが理解できず、昔風の対策に拘った結果今回の失敗が起きてしまった(児玉龍彦・東大先端科学研教授)」というお粗末さだったのでした
 政府も委員会もそれぞれとっくにその誤りに気付いていた筈ですが、いまだに軌道の修正が出来ていません。委員会の実態は分かりませんが、政府が、中国や韓国の後塵を拝したくないと思っているのであればそれは犯罪的な幼稚さです。
 ドライブスルー方式を否定していた厚労省が、15日付でようやくその実施に踏み切ると各自治体に通知したということですが、そのあまりの遅さも犯罪的です。また一片の通達で済むような話でもありません。
 政府はPCR検査の拡充と医療体制維持の支援に必要な財源を投じて、遅ればせながらも挽回に努めるべきです。

 18日に続いてブログ「世に倦む日々」の記事を紹介します。
 安倍政権と共に、日本の医療陣トップスの寒々しい実態を知ることが出来ます。
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児玉龍彦の洞察 – 無能で時代遅れの専門家、中韓に嫉妬した愚かな政府
世に倦む日々 2020-04-18
4月3日のネット動画の中で、児玉龍彦が次のように述べている。正鵠を得た重要な着眼と指摘であり、今の日本で喝求されている科学者の分析だと思われるので要点を抜粋したい。

今回のコロナウィルスの例では、非常に早い時期から、集団感染が報告されてから一週間程度で、BGI(Beijing Genomics Institute)という世界最強のバイオ企業がシークエンス塩基配列を決めた。世界最大の検査会社であるロシュが、その一週間後にはPCR検査を立ち上げた。ウィルスの簡易検査方式であるPCR検査が最初からできるようになっていた。だから、世界中が膨大検査に走った。日本の専門家会議が最も悲劇だったのは、岡部先生とか尾身先生とか、嘗てWHOでアジアの感染症対策を指導する立場にあった立派な方々なんですが、昭和の懐メロみたいな昔風の対策に固執したところにある。世界の感染疫学というのは、遺伝子工学を元に膨大検査をして情報追跡をする手法に移っていたのに、そのトレンドが理解できず、今回の失敗が起きてしまった

専門家会議の話を聞いて心配になったのは、専門家会議の中にコロナウィルスの遺伝子解析の話をできる人が一人もいない点です。C型肝炎や抗生物質の専門家はいますが、遺伝子工学や情報科学の専門家がおらず、この専門家会議は学問的にはかなり問題だらけと言えます。(略)東大とか理研を合わせれば何万人という数のPCR検査がすぐできます。それだけの機器の台数がある。ところが、今の東大や理研の執行部の方というのは、『(構内感染で)閉鎖になったらどうする』という後ろ向きの議論ばかりして、不作為の自己防衛に徹している。医師会とか東大とか理研とか、本来、コロナに立ち向かって戦うべき組織にリーダーがいなくなっている。このことが大きな問題だろうと思います。(略)東大は年2千億円、理研は年1千億円の予算を使っていますが、そういう国家的な研究機関からの発言がゼロで、組織を守る行動ばかりしている。異常事態です

2月8日の専門家会議の議事録が出ていまして、それを読むと、PCR検査の問題点をさんざん論い批判し)、2005年くらいから感染研で取り組んでいたLAMP法(Loop-Mediated Isothermal Amplification) という検査法を開発したらどうだろうという議論が行われています。日本はBGIとロシュに出足で遅れをとったのですが、それをLAMP法で挽回しようとしたわけです。BGIやロシュに日本が出遅れるのは必然で、基礎予算の規模と開発能力が全く違う。BGIやロシュを簡単に真似することは米国のCDCもできなかった。米国の検査の遅れも日本と同じ事情からで、研究者が中国に負けたことに嫉妬して、自分たちで独自に検査キットを作ろうとして失敗した。感染症対策の学問体系がガラッと変わり、遺伝子工学と情報科学を中心とする世界に変わったということです。WHOの人たちは中国へ調査に行って、新しい流れに驚いたという報告書を出しました。

児玉龍彦の整理と説明で、ほぼ問題全体の輪郭を掴み、急所を押さえられるように思われる。日本のPCR検査をめぐる時系列については、日経バイオテクの検証記事もあるので併せてご参考いただきたい。思い出せば、2月の早い時期にNHKのニュースで、長崎大が試作するLAMP法の検査キットが紹介され、従来のPCR検査法よりも迅速に行える利点があり、いかにも日本のコロナ対策の本番で力を発揮するかのような宣伝がされていた。保険適用で実用化という報道だった。キットは長崎大とキャノンメディカルとの共同開発で、だからなのか、テレビに出るたびにコロナを出汁にして自己宣伝の舌を回す黒岩祐治が、BSの番組で大風呂敷の口上を垂れ流していた。キャノンの工場は川崎(矢向)にある。それから2か月経ち、LAMP法キットの話題と消息がマスコミから消えたということは、製品開発に失敗して間に合わなかったということだ。厚労省の目論見は外れ、PCR検査は未だに「6時間かかる」という話になっている。

詳細は不明だが、日本政府が日本独自の検査方式に拘っている事実は否定できない。LAMP法は報道から消えたが、4月になって抗体検査(IgGとIgM)に焦点が当たって喧伝されるようになり、最近は岡田晴恵もモーニングショーでそのエバンジェリズム福音伝道に一役買っている。おそらく、古巣である感染研の方面から依頼されての情報発信だろう。こうした動きを見ても、政府・厚労省がいかにPCR検査を疎んじ、執拗に嫌忌し、PCR検査の普及と推進にネガティブで、権力を総動員してそれを妨害しているかが分かる。昨日(4月17日)の時点でも、日本感染症学会と日本感染環境学会とが共同で、「軽症者にはPCR検査は推奨しない」とする提言を発表した。この汚い策動の中心人物は、専門家会議のメンバーでもある舘田一博だ。島根県でドライブスルー検査が立ち上がり、東京都の医師会がPCRセンターの設置と運営に動き始めた現時点で、恐るべき反動と言わざるを得ない。PCR検査の意義否定に躍起になっている。

新型コロナウィルスのPCR検査の標準方式を確立したのはロシュ社であり、その基礎データとなるシークエンス(塩基配列)を解析・決定したのは中国BGIである。米国CDCも日本感染研も、1月中にウィルスの分離に成功し、検査試薬と簡易キットの開発に速攻で着手した。だが、報道を見るかぎり、現在、検査キットで世界中から引っ張りだこになっているのは韓国の製品で、品質・精度が高いと評判を得て受注が殺到している状況にある。日本のマスコミ報道はその事実に光を当てない。児玉龍彦の慧眼のとおり、日本の政府と関係者たちは中国と韓国に嫉妬し、自分たちの無能と怠慢と倨傲を顧みることなく初発の作戦方針の失敗をそのまま引きずり続けているのだ。先の戦争の昭和天皇と軍部と参謀たちと同じである。時間の経過とともに、惨憺たる事態を招き、医療崩壊を起こし、国民生活を地獄に落としているのに、自分たちの過誤と暴走を認めようとせず、巧妙にゴマカシと言い訳を言い繕って、責任から逃げ保身に奔走している。

2月末の時点で方針を転換し、韓国で成功を収めた正攻法の戦略を素直に見倣い、同じように検査と隔離を徹底する対策にシフトしていれば、今のような深刻な院内感染と医療崩壊の破局はなかった。PCR検査をめぐる状況は、現在、国民にとってますます悲惨になり、3月よりも4月の方が厳しく悪化している。保健所がようやく検査を認めた数少ない患者でさえ、実際の検査まで5日かかり、検査待ちが溜まっている。今では、埼玉県や東京都のコネのない庶民は、軽症とは呼べない中等症の者でも、病院はおろか宿泊施設にも入れてもらえなくなった。発熱して自宅で倒れ、コロナ罹患を疑われた者は、救急搬送されても40か所も入院を断られ、何時間もかけて辿り着いた先の医者に「PCR検査は受けられない」と告げられ、再び救急車で自宅に連れ戻されてしまう。重症で死ぬ間際でないとPCR検査は受けられず、医療機関で治療を受けられない。3月よりも酷くなった。だけでなく、地域の病棟閉鎖によって脳梗塞や交通事故の急患が受け付けられなくなり、癌患者の検査や手術が先送りにされるという地獄に至っている。

いったい、日本のコロナ対策の目標である「重症者を出さない」とはどういう意味なのだ。すべてはPCR検査抑制の誤謬と倒錯に由来している。癌や脳梗塞や透析治療の患者まで犠牲にして、地域医療をそこまで破綻・崩壊させて、国民を苛烈に苦しめて、そうまでして頑迷に固守しなければならない「PCR検査拒否」の「国体護持」とは何なのだ。精密検査であるCT検査よりもハードルが高く遠い簡易検査のPCR検査とは何なのだ。世界は不思議な目で日本を見ているだろう。前回、比喩のビルディング・ブロックを積み上げ、今の日本のコロナ禍が嘗ての日本の戦争と相似形である本質と構造を示し、政治学的な意味の考察と解読を試みた。無能で傲慢な参謀たちによる杜撰な作戦計画のため、そして、無責任で隣国を不当に蔑視した政府による不作為のため、武器弾薬糧秣なく無防備で前線に放り出された軍隊(医療機関)は、あっと言う間にウィルスに攻略されて壊滅した。国民に提供される医療は地上から蒸発してしまった。4月以降、国民は丸裸でウィルスの侵攻に脅えなくてはならなくなり、B29編隊による本土空襲の日々となった。

近所に病院はあっても、医師はいても、健康保険証を持っていても、病院は閉鎖されて営業していない。発熱患者は診てもらえない。恐くて歯科医や眼科医にも気楽に行けなくなり、また、恐くて普段どおり地域の患者を診ることが難しくなった。