2020年4月17日金曜日

休業手当なし続出 助成金手続き煩雑「政府要請だから」と

 コロナ禍による集会の自粛、外出の自粛等により、その影響を受けない公務員や会社員(正規)などを除いたあらゆる業界の人たちが、収入が激減したりゼロになったりして困窮しています。
 こうした一人一人に政府はどう答えるのでしょうか。
 5つの記事を紹介します。

休業手当なし続出 「政府要請だから」助成金手続き煩雑  (東京新聞)
事業者相談会 悲痛な声「休業で売り上げゼロ」「見通し全く立たない」 (東京新聞)
映画守れ 署名6.7万人 ミニシアター 支援求め政府に要請 (しんぶん赤旗)
プロレス団体休業補償要請“無観客試合もできず”選手ら生活不安訴え (しんぶん赤旗)
文化芸術「今すぐ支援を」 アーティストら8割が減収 東京新聞)
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<コロナ緊急事態> 休業手当なし続出 「政府要請だから」助成金手続き煩雑
東京新聞 2020年4月16日
 新型コロナウイルスの感染拡大に伴う緊急事態宣言が発効してから一週間となり、宣言に従って休業した企業・店舗で、休業手当がもらえない社員が続出している。宣言下での休業手当の支給を一律に義務付けていない法律上の「抜け穴」や、手当を補助する雇用調整助成金の手続きの煩雑さが影響しており、救済策の強化が急務になっている。 (池尾伸一)

 「勤め先の家電量販店が長期間休むのに、休業手当がもらえず、生活が成り立たない」。労働組合「首都圏青年ユニオン」などが先週末に開いた相談ホットライン。男性派遣社員が訴えた。店側は、ショッピングモールに入居しており「政府の要請でモールごと閉まるのだから会社側の責任ではない」と主張しているという。約百五十件の相談の多くが「休業手当がない」「不十分」と訴える。
 連合の窓口にも「大学の食堂でパートをしているが、長期閉店になり賃金補償が何もない」(都内女性)などの悲鳴が相次ぐ。多くの弱い立場の人たちが手当もなく休まされている。

 要因の一つは緊急事態宣言下での休業手当を巡る法律的な不備だ。
 労働基準法は会社都合で社員を休ませる場合、非正規も含め賃金の最低六割を手当として支給するよう義務付ける。だが、知事の要請で業務を停止する場合は企業の都合とは言えず、義務付けの法的根拠があいまいになってしまう。
 この点は「特措法の欠陥」(野党)として国会で問題化し、加藤勝信厚生労働相は「一律に義務がなくなるわけではない」と述べた。ただ厚労省が先週公表した「新型コロナウイルスに関するQ&A」では、テレワークによる勤務なども検討した上での避けられない休業は、手当支払い義務はない「不可抗力による休業」だと明記。労働問題に詳しいNPO法人POSSE代表の今野晴貴氏は「この基準なら手当を支払わない企業は相当数出てくる」と懸念する。
 厚労省は、法的には支払い義務がなくても、雇用調整助成金を使って「手当を支給してほしい」と言う。だが、同助成金は企業に一定の自己負担が生じるうえ手続きも複雑で、「非正規社員については助成金を使わず、手当を支給しなかったり、雇い止めをしてしまっている企業も多い」(連合幹部)という。
 今野氏は「雇用調整助成金を使えというなら特例で手当をすべて助成金でまかない、企業負担をなくすべきだ」と提案。東日本大震災の際に実際に離職していなくても雇用保険から失業手当を出した「みなし失業」の手法なども総動員し「働く人々の収入を保障することが急務だ」と訴える。

<雇用調整助成金> 従業員を解雇せず、休業手当を支給して休ませた企業に対する助成金。通常、中小企業で休業手当の3分の2、大企業には2分の1が支給される。新型コロナ対応で、助成率は中小企業で最大10分の9、大企業で同4分の3に引き上げた。週20時間未満勤務のアルバイトやパートも対象にした。政府は手続きも通常十数種類の書類が必要なところを半減するとしている。


<新型コロナ>(群馬)事業者相談会 悲痛な声 
「休業で売り上げゼロ」「見通し全く立たない」
東京新聞 2020年4月16日
 県は新型コロナウイルス感染症の拡大で影響を受けている県内事業者を対象に、今月上旬から5月中旬にかけて県内の11カ所で無料の出張相談会を順次開いている。14日に渋川市で開かれた相談会の参加者からは悲痛な声が相次いだ。(市川勘太郎)
 「周辺の店は休業してお客さんもいないので、三月十日ごろから休業している。売り上げはゼロです」。渋川市の伊香保温泉で飲食店などを経営する女性(72)は訴える。「四十二年店をやっていて初めて。融資をお願いし、お客さんが戻ってくるのを待つしかない」と気丈に語った。
 県内の高速道路にあるサービスエリア(SA)でキッチンカーを営業する男性(50)の店では、三月までスキー客の利用があったが、売り上げは前年同月比で六割減に。四月はSA利用客が激減し、売り上げは同八~九割減になる見通し。男性は「七年間の営業で過去最低になるだろう」と打ち明け「国の融資制度は内容が定まっていない印象を受けた」と指摘した。
 夏休み中の花火大会など大規模イベントの中止が決まり、男性は「売り上げの見通しが全く立たない。ネット販売など新しい方法を試していくしかない」と困惑していた。
 相談会は八日に中之条町で始まり、沼田、富岡市では既に実施。十四日に渋川市であった相談会は参加者との間隔を二メートルほど空け、相談が終わる度にテーブルや椅子をアルコール消毒するなど対策を講じた。
 会場では、県社会保険労務士会や信用金庫などの担当者による五カ所のブースがあり、参加者が事前に予約したブースを訪れて資金繰りや融資について相談した。同日は十七社から二十九件の相談があった。
 相談会は事前の予約が必要。今後は二十一日に太田市、二十四日に伊勢崎市、二十七日に高崎市、五月は十二日に藤岡市、十三日に前橋市、十五日に桐生市で開く予定。
 場所はいずれも各市内の商工会議所。申し込みの締め切りは開催日二日前(土日祝日は除く)の正午まで。問い合わせは県経営支援課=電027(226)3339=へ。


映画守れ 署名6.7万人 ミニシアター 支援求め政府に要請
しんぶん赤旗 2020年4月16日
 新型コロナウイルスによる影響で深刻な危機に置かれている小規模映画館(ミニシアター)を守ろうと15日、映画関係者の有志らが外出の自粛要請にともなう損失の緊急支援などを政府に求める約6万7000人の署名を提出・要請しました。
 署名は、映画監督の是枝裕和さん、俳優の柄本明さんら多彩な映画関係者が呼びかけ、「#Save The Cinema」が取り組んでいます。
 要望書では、「夏を待たずに閉館する映画館が続出する」と指摘。日本の映画文化の中核を担うミニシアターは重要な文化拠点であり、「民主主義社会に欠くことのできない存在です」として、緊急支援を求めています。
 要請後にインターネット上で開いた緊急会見で、呼びかけ人らが訴えました。
 映画監督の諏訪敦彦さんは、日本国憲法25条がうたう生存権を引用し、「健康と文化はどちらも生きるために必要なものです」と訴え、東京都渋谷区にあるミニシアター「ユーロスペース」支配人の北條誠人さんは、「従業員の雇用継続や家賃の支払いを考えると絶望しています。未来の映画人と、私たちの仕事を守りたい」。
 映画監督の西原孝至さんは、損失を補償しないということは、「国と国民との関係として成り立っていない。これからも声を上げていきたい」と語りました。
 要請には、日本共産党、立憲民主党、社民党の国会議員が同席。共産党からは、畑野君枝衆院議員、吉良よし子、山添拓両参院議員が参加しました。


プロレス団体 休業補償要請 “無観客試合もできず” 選手ら生活不安訴え
しんぶん赤旗 2020年4月16日
 新型コロナウイルス感染症拡大で休業を余儀なくされているプロレスリングの興業会社や全日本プロレス、新日本プロレスリングなど各団体のレスラーらが15日、国会内で、休業への補償などを政府に要請しました。
 興業会社「ブシロード」の木谷高明取締役は、同感染症拡大のもとで練習もままならず無観客試合さえ開催できない実態を語り、簡易検査キットの早期普及を要望。プロレス業界が政府の大規模イベント中止要請に当初から応じてきたことを強調し、各団体が年間契約している選手は正社員と同様の休業補償の対象とするよう早急な対応を求めました。
 ワールド女子プロレス・ディアナの井上京子選手は「予定の試合はすべて延期・中止している」「今月予定していた新道場の道場開きもできずにいる」と発言。他の選手も生活への不安などを口々に訴えて支援を要請しました。
 経済産業省の担当者は「スポーツ庁と一体でしっかりとしかるべきことを支援していきたい」と応じました。


<新型コロナ>文化芸術「今すぐ支援を」 アーティストら8割が減収
東京新聞 2020年4月16日
 感染拡大で、文化芸術活動への影響も深刻になっている。東京都内のコンサルティング会社ケイスリーが今月上旬に文化芸術活動の関係者らに実施した緊急調査では、84%が「活動ができない」、82%が「収入が低下している」と回答。さらに96%が「行政からの金銭的支援が足りない」と答えた。同社の落合千華取締役は「中長期的には日本の文化の存続が危ぶまれる事態。外出自粛で精神面の健康悪化が懸念される中、文化の力が必要。官民が提携した支援策につなげたい」と話す。
 調査では俳優、演奏家、美術家や、制作スタッフらを中心に三千三百五十七件の回答があった。七割近くがフリーランスで「感染よりも食べていけず死んでしまう不安の方が大きい」(文化団体の非正規職員)、「五月まで全予定がキャンセルされ、無職・無収入。家賃も払えない」(音楽家)などの声が寄せられた。
 アンケート公表とあわせ、十五日にオンライン上で記者会見が開催された。コンサルタント梅沢高明さんは「文化が生まれるのは演劇なら小劇場、映画はミニシアター、音楽だと小さなライブハウス。若い世代や実験性の高い内容を発表できる場になっているが、いまや大半が廃業の危機を迎えている」と指摘。DJのナズクリスさんは「緊急事態宣言が出る前から九割のライブが中止になった。DJやアーティストは転職せざるを得ず、今後は文化を発信できなくなる」と危機感をあらわにした。
 ドイツでは「芸術家や文化施設は生命維持に必要」と文化相が表明し、連邦政府が個人で最大九千ユーロ(約百五万円)を迅速に受け取れる制度や減税策などを発表した。一方、日本では緊急経済対策に盛り込まれた文化芸術分野の支援も、「文化施設再開に向けた感染症対策」などが主で、収入減や休業への損失補償はない。政府は今月七日、小規模・自営業者への給付金制度を発表したが「とても足りない」との声が上がっている。 (出田阿生)