2020年4月17日金曜日

数字が独り歩き 闇雲に危機煽るテレビの大罪

 政府は、-人接触の機会を8割削減すれば2週間後には感染者の増加をピークアウトさせることができ、7割削減では2カ月かかると強調します。しかし休業補償をするとは言いません。
 目標だけを掲げ、それを要請するだけで担保する具体策を持っていないのであれば政治の役割放棄です。政策として訴える以上、国民が実行できる方策を伴っていなければ絵に描いた餅になります。
 その挙句に接触率が十分に低下しなかったため効果が出なかった、従ってさらに自粛期間をを延長するというのであればそれこそ責任転嫁です。
 メディアがいたずらに接触率の低下の不十分さを報じるのは政府の意中を行くものです。
 メディアは収入の途を絶たれた市民の苦衷をこそ報じるべきでしょう。

 医師免許を持つ米山隆一弁護士前新潟県知事,
「安倍政権のコロナ対策はスローガンだけ。接触8割削減を求めるのなら、少なくともモデルケースを示さなければダメです。 具体的なイメージが浮かび上がれば、外出自粛がなぜ必要なのかはおのずと伝わる。テレワークができない業種もありますし、そうなれば休業を迫られる。実現には一律給付や休業補償などのロジスティクス(兵站)が欠かせません。ただ家にいろと言うだけでは個人は収入を絶たれ、人手不足で会社が回らず倒産に追い込まれてしまう政府が国民生活を補償しない限り、接触8割削減は空理空論です
と述べています。

 またPCR検査を抑制しているのも根本的に間違っています。
 WHO事務局長上級顧問を務める渋谷健司医師は、クラスター理論からの「密閉・密集・密接の3条件がそろうと感染のリスクが高いというのは正しいものの、世界で「3密」と言っている国はなく、それ以外にも感染の可能性があること考える必要があると述べていますそして、感染ルートの追及に力を注ぐあまりPCR検査を軽視したのは間違いであると示唆しています。
 メディアはその誤りについても大いに追及すべきです。
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数字が独り歩き 闇雲に危機煽る“コロナ特需”テレビの大罪
 日刊ゲンダイ 2020/04/15
 コロナ禍でよく聞くようになったフレーズがある。新型コロナウイルスとの「戦い方」だ。「中国の戦い方」「韓国の戦い方」、はたまた「東京の戦い方」「大阪の戦い方」といった具合にテレビで多用されている。安倍首相が緊急事態宣言を発出し、「人との接触機会8割削減」の号令を掛けてからというもの、テレビには怪しい数字と「日本の戦い方」を賛美するコメントが溢れている。

 まず報じられるのが、世界の感染状況だ。感染者は全世界で190万人を突破、死者は12万人超。パンデミックの中心地となった米国の感染者は60万人に達し、死者は3万人に迫り、死者の4割超を占めるニューヨーク州の医療崩壊の惨状が伝えられる。翻って人口規模3分の1の日本の感染者や死者数については、感染抑止をアピールしたい政府の意向に従い、クルーズ船や空港検疫での陽性者は除外が常である。

“自粛達成率”をコメンテーターが評価
 最近新たに加わった数字が、緊急事態宣言の対象地域となった「7都府県の人口変動分析」だ。出典は内閣官房の特設HP「新型コロナウイルス感染症対策」にアップされるNTTドコモの調査データ。緊急事態宣言前(4月6~7日)などと比較した人の流れを追うもので、13日は渋谷周辺が39・4%減、横浜周辺が50・2%減、千葉周辺は45・0%減、大宮周辺が41・9%減、梅田周辺が47・0%減、三ノ宮周辺が27・6%減、天神周辺が33・3%減――などと数値化される。それをコメンテーターが「横浜のみなさんは頑張っていますね」「三ノ宮や天神は……」などと外出自粛の“達成率”を評価するのである。

 しかし、こうした論評にどれほどの意味があるのだろうか。感染者数も検査数や口との比較で報じなければ意味がないし、人混みのビッグデータも1指標でしかない。
 感染者数トップ5は米国、スペイン、イタリア、フランス、ドイツの順だが、100万人あたりの感染者数はスペイン、イタリア、米国、ドイツ、フランスに入れ替わる。100万人あたりの死者数になるとスペイン、イタリア、フランス、米国、ドイツの順だ。
 PCR検査件数は米国281万件、イタリア100万件、韓国51万件、トルコ37万件、インド19万件。いまだに8万9551件(14日正午現在)しか積み上げていない日本を圧倒する物量だ。
 都道府県の感染者トップ5は東京、大阪、神奈川、千葉、埼玉の順だが、10万人あたりの感染者数は東京(15・47人)、福井(11・95人)、石川(10・61人)、大阪(9・47人)、高知(8・70人)というデータもある。緊急事態宣言の対象地域外の3県が上位に躍り出るのだ。

ノウハウ示さない「接触8割削減」は空理空論
 いま問題なのは、目標だけ掲げ、ひたすら要請するのみで、それを担保する具体策なき政治の役割放棄ではないのか。安倍は「専門家の試算では、私たち全員が努力を重ね、人と人との接触機会を最低7割、極力8割削減することができれば、2週間後には感染者の増加をピークアウトさせ、減少に転じさせることができます。そうすれば、爆発的な感染者の増加を回避できるだけでなく、クラスター対策による封じ込めの可能性も出てくると考えます」と訴えたが、どうすれば接触機会8割削減を達成できるのか。具体的な指針は何ひとつ示されていない。コロナ対応を担当する西村経再相は14日、経済3団体トップとテレビ電話会談。接触機会を8割減らせれば1カ月で収束の道筋が見えるが、7割しか減らせない場合は2カ月かかると強調。平日の取り組みが不十分だとして、「産業界、国民ひとりひとりが一体となって乗り越えたい」とプレッシャーをかけたが、つまるところ企業に丸投げだ。

 前新潟県知事で医師免許を持つ米山隆一弁護士はこう言う。
安倍政権のコロナ対策はスローガンだけ。接触8割削減を求めるのなら、少なくともモデルケースを示さなければダメです。新橋周辺に勤めるサラリーマンはどう行動すべきなのか。出社には公共交通機関の利用は避けられないでしょうから、おそらく通勤だけで2割枠を使い切ってしまう。スーパーやコンビニなどへも立ち寄れず、家族とも一切言葉を交わせなくなるでしょう。具体的なイメージが浮かび上がれば、外出自粛がなぜ必要なのかはおのずと伝わる。テレワークができない業種もありますし、そうなれば休業を迫られる。実現には一律給付や休業補償などのロジスティクス(兵站)が欠かせません。ただ家にいろと言うだけでは個人は収入を絶たれ、人手不足で会社が回らず倒産に追い込まれてしまう。政府が国民生活を補償しない限り、接触8割削減は空理空論です

 外出自粛の影響で、テレビの総世帯視聴率は増加。とりわけ、報道番組やワイドショーが数字を伸ばしている。それなのに、大本営の垂れ流しでは国民不安は増幅する一方だ。法大名誉教授の須藤春夫氏(メディア論)は言う。
「極めて限定的な支援策に対する世論の不満をテレビは取り上げはするものの、政府見解をオウム返しで説明するだけ。上から目線で緊急事態宣言を発出し、外出自粛を徹底せずに感染拡大した場合の責任は国民にある。政府はそう言わんばかりなのに、正面から批判することもない。安倍政権の泥縄対策で国民の生命と健康は脅かされ、平時以上に権力を監視する役割を果たすべき局面にもかかわらず、です」
 コロナ特需で浮かれるテレビ報道の罪は大きい。

都内の急患は40病院たらい回し
 安倍は「医療への負荷を抑えるために最も重要なことは、感染者の数を拡大させないことです」とも言っていたが、医療崩壊危機も感染者が増加したからではなく、政治の無為無策ではないか。
 東京五輪に執着してPCR検査を絞り込み、クラスター潰しに拘泥して検査態勢拡充に後ろ向き。トリアージ(治療優先度の決定)を実施しないまま市中感染が拡大し、無症状感染を増大させて医療を逼迫させたのは明らかだ。票田の日本医師会の顔色をうかがい、感染防止のため現場が求めるオンライン診療にも及び腰だった。都内では発熱や体調不良を訴える患者が、新型コロナウイルスに感染した疑いがあるとして救急病院から受け入れを断られるケースが続発。約40の病院から受け入れを断られ、搬送先が決まるまで1時間半ほどかかった事案があったという。

医療体制崩壊にしても、政府は問題の本質と向き合っていません。PCR検査に消極的な理由として特効薬がない、偽陰性が生じる可能性が挙げられていますが、特効薬のない病気は山ほどある。無症状感染者は無自覚だからこそ出歩き、感染を広げてしまうリスクがある。医師側としては初期段階から感染を疑って検査を実施し、陽性が判明すれば酸素吸入や人工呼吸器の使用を想定するなど、次の一手を準備する余裕が生まれます」(米山隆一氏=前出)

 ドイツの低死亡率は初動の早さと大規模検査によるものだという。独政府の感染症対策専門機関は1月6日に内部で作業グループを設置し、感染1例目が確認された1月末には2交代制に移行し、検査態勢の拡充を急いだ
 ドライブスルー検査や医師による自宅訪問検査、検査キットを使って自宅で採取した検体を施設に送る郵送検査も取り入れ、1日あたりの検査件数は約5万件。感染の実態をできるだけ正確に把握し、軽症者は自宅隔離するトリアージの実施で医療現場の逼迫を回避し、周辺国から重症者を受け入れている
 人々のパニックをあおり、経済を破壊し尽くす安倍PR機関はこの際、自粛したらどうだ。張本人の安倍が政治活動を自粛し、総理の座を辞する必要があるのは言うまでもない。