2020年4月8日水曜日

緊急事態宣言を出すも休業の補償は拒否する安倍首相(LITERA)

 安倍首相は7日夕に「緊急事態宣言」を発し 例の調子で長々と演説しましたが、話の大部分はこれまで聞き古したことばかりでした。
 新たにホテルなどを借り切って軽症患者の隔離施設に使うことにするという話も、1ヶ月以上も前から大阪府が実施を計画(それ以前に「世に倦む日々」氏などが提案)していたもので、別にドヤ顔で語るべきものではありません。むしろその措置は完全に遅きに失していて、その遅さが現在の感染の蔓延につながったのでした。
 緊急事態に伴う生活困窮者対策としてはあの支離滅裂な「1世帯30万円」給付策を譲りませんでした。いったい何故 世帯毎(に均一)なのか  あまりにも支離滅裂です。しかも給付を受けられる条件が厳しく(収入が半減したことの証明を要するとか、住民税納付免除額以下まで落ちないと‥など)て、決して簡単には受けられません。そうでありながらその策を強行するというのは「30万円」という一見高額に聞こえる点が気に入っているからかも知れません。
 そもそも総額「108兆円」というのも「詐欺」的で、総額には、納税や社会保険料の支払い猶予分の26兆円だの昨年末に策定した経済対策分だのが算入されていて、いわゆる“真水”は395兆円です。そのなかで現金給付に使われるのが最大限で6兆円ということ過ぎません。その6兆円の使い方が前記の「30万円」云々という訳です。

「自粛と補償はセット」はいまや国民共通のなのですが、安倍首相はそれをもとして拒否しました。
 首相は一貫して「休業要請した飲食店や施設にだけ補償すると、そこと取引する納入業者などとバランスが取れなくなるから補償はしないいう言い方をするだけで、「納入業者も補償する」という正論を採ることはしません。「ナイトクラブなどでは1晩の売り上げが数百万円もある」などという浮世離れした話までしています。それは別に救済すべき額ではないし、逆に必要な額なら補償すべきだということに尽きます。要するに「休業に伴う補償」はしたくないというのが本音なのです。

 その一方で、首相はこれを好機として「自民改憲4項目中の緊急事態条項は極めて重く大切な課題だ」という趣旨のことを述べたようです。コロナ禍をこれまで無為・無策・無能で推移してきた張本人が良くも言えたものです。政府に能力と意思さえあれば全く違った展開になっていた筈です。それを「緊急事態条項」問題にすり替えるのは笑止です。
 7日夜の会見の質疑応答の最後に、イタリア人の記者から「対策に失敗したらどう責任をとるのか」と問われると、安倍首相は平然と「最悪の事態になった場合、私責任をとればいいというものではない」と言ってのけたそうです
 多数の餓死者(=自殺者)が出かねないこの期に及んでもそういう意識だということです。
 日刊ゲンダイの記事を紹介します。
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緊急事態宣言で安倍首相が“ドケチファシスト”ぶり全開!
 自粛補償を拒否する一方で警察動員の圧力と憲法改正にだけ前のめり
LITERA 2020.04.08
 この男が舵取りする泥船の上に国民が乗せられている──そう痛感するだけの1時間だった。無論、昨夜におこなわれた、緊急事態宣言を発令したことを受けての安倍首相の記者会見のことだ。
 まず、安倍首相は「医療現場はまさに危機的な状況」「もはや時間の猶予はない」「(感染拡大の)事態は切迫」などと危機を訴えたが、医療体制の整備を急げというのは1月の段階から野党が口を酸っぱくして言いつづけてきた話。安倍首相が例として挙げた東京都の感染拡大にしても、東京五輪の予定通りの開催にこだわってきたせいで、検査が抑えられ、そのために感染が広がったのではないかという見方もある。実際、2カ月以上ものあいだ検査体制・医療体制の整備は進んでおらず、いずれにしても、ここまでの状況に追い込んだのは安倍首相の後手後手対応にあるというのに、そうした自分の不手際には一切言及せず、安倍首相はこんな話をはじめたのだ。
「医療現場のため自分たちができる支援をしたいとクラウドファンディングネットを通じた募金を始めたみなさんがいます」
「看護協会は5万人を超える現在現場を離れている看護師のみなさんに協力を呼びかけています」
 医療現場のためのクラウドファンディングや離職している看護師の協力要請って、それ全部、安倍首相がやるべき仕事で、やらないから国民がやっているだけではないか。しかし、安倍首相はこうした取り組みを「これこそが希望であります」などと褒め称え、自分がやるべきことを“美しい国民の姿”として称揚することで責任転嫁してみせたのである。
 この期に及んで美談やポエムで自分の失策を覆い隠す──。いつものこととはいえ反吐が出るが、問題なのは、事ここに至っても、安倍政権が「ドケチ政権」であると同時に、 “国民の生活と命を本気で守る気などさらさらない”ということを露呈させたことだ。

 安倍首相は「日本経済がいままさに戦後最大の危機に直面している。そう言っても過言ではありません。その強い危機感のもとに、雇用と生活は断じて守り抜いていく」と言うと、「そのために、GDPの2割に当たる事業規模108兆円、世界的にも最大級の経済対策を実施することといたしました」と宣言した。
「世界的にも最大級の経済対策」と言われると「安倍さん太っ腹!」と思った国民も多いかもしれないが、これは完全に“詐欺”だ。というのも、この「108兆円」には通常、事業規模には含まれないとされる納税や社会保険料の支払い猶予分の26兆円だの、新型コロナとはまったく関係なく昨年末に策定した経済対策分だのも含めたものだからだ。現に、新型コロナ対策として国が直接財政支出する、いわゆる“真水”は108兆円のうち39.5兆円。そのなかで現金給付に使われるのは6兆円にすぎないといわれている。
自粛と補償はセット」という怒りの声はあがりつづけているのに、それに耳を貸さない安倍首相。実際、昨夜の会見でも、質疑応答で東京・中日新聞の記者が休業要請にともなう補償や損失補填について質問をおこなったのだが、安倍首相は事も無げにこう言い放った。
「ある特定の業界に(休業を)お願いしてもですね、損失はその業界にとどまるものではありません。そこと、さまざまな取引をしているみなさんにも大きな影響が出ていくということを鑑みればですね、個別に補償していくということではなくて、困難な状況にあるみなさんに現金給付をおこないたいと考えています」
 じつは、安倍首相は昨日おこなわれた衆院議院運営委員会でも「飲食店そのものだけではなく、そこに納入している人たちも当然大きな影響を受けていく。ですから自粛要請している人に限って全額を補償するというのは現実的ではない」「バランスを欠くものになる」と答弁。ようするに、休業要請した店や施設にだけ補償すると、取引する納入業者などとバランスが取れなくなる、不公平が出る、だから補償はしない、と言うのである。

警察による職務質問の強化や営業店舗への立ち入り要請の可能性を認めた安倍首相
 普通に考えて、緊急事態宣言にともなう休業要請によって店や施設が廃業に追い込まれたら、納入業者も大きな被害を受け、廃業の連鎖という最悪の事態も起こりかねない。そもそも、「バランスが」などと言うのなら、そこは納入業者も補償しようという話になるべきなのに、安倍首相は取引先の問題を“やらない言い訳”に使い、「現実的ではない」などと言うのである。
 こんな状態では、緊急事態で休業しろと大合唱が起こっても、背に腹は変えられず、営業をつづけざるを得ないと判断するところが出てくるのは当然だ。もし、本気で安倍首相が「感染拡大を止めなければ」と考えるのであれば、多くの人に行き渡る休業補償をおこなうべきなのだ。
 だが、緊急事態宣言を発令しながら、それを拒否する安倍首相。いや、それどころか、安倍首相は昨夜の会見で、とんでもないことまで言い出したのだ。
 それは、記者からの質疑応答の際、フリージャーナリストの江川紹子氏がおこなった質問の答えだ。会見に入れなかったジャーナリストの神保哲生氏が江川氏に託した質問だったようだが、江川氏は「(外出自粛の)引き締めのために警察に要請して職務質問などを活発化させるなどはあり得るのか。千葉市長は“警察に対してナイトクラブへの一斉立ち入りなどの取り締まり強化を要請しています”とTwitterに書いているが、こういうかたちで警察に要請する、取り締まりをするというようなことはあり得るか」と質問。すると、安倍首相はこう答えたのだ。
「取り締まりの対象には、罰則ありませんから、取り締まりの対象ということでは、警察が取り締まることはありません。ただ、ご協力は要請させていただくということはあるかもしれません」
 つまり、「取り締まりの対象ではない」と言いながらも、警察による職務質問の強化や営業店舗への立ち入りなどを要請する可能性があることを、安倍首相が認めたのだ。
この回答から考えれば、たとえば「生活補償しろ!」と国会前などで抗議が起こった際でも、警察が外出自粛を盾にして取り締まりを強化することも十分にあり得る。緊急事態宣言をきっかけに、国民の行動を取り締まった戦前の特高警察のような動きも出てくるのではないか。

国民を守る気のない安倍が「緊急時に国民を守るため憲法の位置付けは大切だ」
 想像しただけで背筋が凍るが、安倍首相は今回の緊急事態宣言を新型コロナ以外に利用しようと考えていることはミエミエ。実際、昨日の衆院議院運営委員会では、緊急事態条項の創設を含む憲法改正について、こう答弁したからだ。
自民党が示した改憲4項目のなかにも緊急事態対応が含まれており、大地震等の緊急時において国民の安全を守るため、国家や国民がどのような役割を果たし、国難を乗り越えていくべきか、そのことを憲法にどのように位置づけるかについては、極めて重く大切な課題だ」
「新型コロナウイルス感染症への対応も踏まえつつ、国会の憲法審査会の場において、与野党の枠を超えた活発な議論が展開されることを期待したい」
 新型コロナ対策がこんな有様なのに改憲議論を活発化しようって、「そんなこと言っている場合か」とツッコまざるを得ないが、安倍首相はきっと本気だ。というのも、コロナ禍のなか、世間では「自粛要請ではなく海外のようにもっと強い制限をかけられるようにすべき」といった声も出ている。それを利用して憲法改正を進めよう、そう安倍首相が目論んでいるのは間違いない。
 医療体制の整備や検査の拡充を怠り、国民への生活支援を出し渋る一方で、警察を動員した私権制限や憲法改正には積極的に踏み込もうとする安倍首相。その上、昨夜の会見の質疑応答の最後、イタリア人の記者から「(対策に)失敗したらどう責任をとるのか」と問われると、安倍首相は平然と「最悪の事態になった場合、責任をとればいいというものではありません」などと言ってのけた舵取りを失敗しても責任はとらないと逃げを打ち、新型コロナに乗じて改憲を果たそうとする──。この男がハンドルを握るこの国は、これから、ほんとうにどうなってしまうのだろうか。 (編集部)